紫煙を楽しむ

紫煙を楽しむ

川原遊酔(かわはらゆうすい)の「紫煙を楽しむ」
平均寿命のお話

「平均寿命」は、ゼロ歳の人の平均余命のことです。つまり、人が生まれて平均的に何歳まで生きるかの統計値です。これに関連して公表されている厚生労働省の調査結果は、二種類あり、一つは完全生命表であり、もう一つは簡易生命表です。完全生命表は、国勢調査の年の人口動態統計(確定数)と国勢調査人口に基づいて5年ごとに作成されるものです。簡易生命表は、人口動態統計(概数)と推計人口を用いて毎年作成されるものです。

<図1> 日本人の平均寿命の変化

日本人の平均寿命は、この100年間で男女とも確実に伸び続けてきました。これを具体的な数字でみると、図1に示すとおり、1891-1898年(明治24-31年)の男42.8歳、女44.3歳以来、男女とも確実に平均寿命が延び続け、2005年(平成17年)には男78.56歳、女85.52歳というようになっており、男女とも世界一の長寿国を誇るようになりましたが、女の方が常に長生き(直近の2005年で6.96歳の差)の傾向にあります。このような平均寿命の伸長の理由としては、感染症対策等の医療技術の向上、環境条件の改善、栄養摂取を含む生活システムの改善等、多くの要因が関与しているものと推察されます。

ところで、本年5月9日読売新聞朝刊に、「40歳の喫煙男性、寿命3.5年縮まる」との報道がありました。この元になったのは、1980年から1999年までの厚生労働省研究班による追跡調査結果です。本年3月の疫学専門誌にもほぼ同じ内容の調査結果が発表されています。この調査結果では、飲酒等の他要因の影響、高齢者群での逆転現象等、問題点もあります。ここで、各国における喫煙率と平均寿命の関係を比較した図2を示しますが、喫煙率の高い日本人男性が、喫煙率の低い欧米先進国男性に比べて平均寿命がはるかに高く、世界一(2004年で78.4歳)となっており、喫煙によって寿命短縮が起こっているとは単純には考えにくい状況です。

<図2> 各国の喫煙率と平均寿命の関係

また、最近では、「健康寿命」という概念が提唱されています。これは、平均寿命が元気で自立できていることを必ずしも意味しないことから、心身ともに健康で自立できている寿命として健康寿命がより適切な指標ではないかという考え方によるものです。すなわち、平均寿命は、健康寿命と不健康寿命の和として表されることになります。ちなみに、WHOの2003年の統計値でも、日本人の健康寿命は75歳で世界一でした。

川原遊酔(かわはらゆうすい)