紫煙を楽しむ
喫煙による社会コスト(その2) |
前回、喫煙による社会コスト試算の基本的問題点としては、仮定に次ぐ仮定を重ねて結果を算出しており、過大推計になっている可能性があることを述べました 今回は、前回に引き続き、喫煙による社会コスト試算の問題点を述べていきたいと思っています。 喫煙による超過医療費が1兆3,086億円にもなるとの油谷の報告は問題があることを既に指摘しましたが、健康保険組合等が、喫煙者の医療費と非喫煙者の医療費を直接的に比較した調査結果が10報ありますので、以下に御紹介します(表参照)。 喫煙者と非喫煙者の医療費の比較に当たっては、喫煙経験者(現在喫煙者と過去喫煙者の加重平均値)と非喫煙者の医療費を比較しています。この理由は、現在喫煙者と非喫煙者を比較したのでは、喫煙者だった群から疾病経験者が脱落して(ドクター・ストップなどによって)現在喫煙者が残り、結果的に疾病の少ない喫煙者群(又はあまり病院に行かない喫煙者群)になっている可能性があるため、喫煙経験者として、現在喫煙者と過去喫煙者の加重平均値によって非喫煙者と比較する必要があるためです。 表に示したとおり、3番、4番、5番、7番、9番及び10番の調査において、喫煙経験者の方が非喫煙者と比較して医療費が少ないことを示しており、10報中、6報(過半数)が喫煙経験者の方が医療費が少なかったことになります(逆にみれば、10報中、4報において非喫煙者の方が医療費が少なかったことになります)。 以上のことから、喫煙によって医療費が過剰に支出されているとは一概にはいえない状況です。また、前回述べたとおり、喫煙により、社会コストが発生しているのか、発生しているとしてその金額はいくらになるのかは、結論づけは困難な状況といえます。 |
川原遊酔(かわはらゆうすい) |