紫煙を楽しむ

紫煙を楽しむ

川原遊酔(かわはらゆうすい)の「紫煙を楽しむ」
QOLって何? (その1)

一般に、QOL(Quality of Life)は、「生活の質」と訳され、最近、医学界を中心に様々な分野で多用されている用語です。「生きがい」と訳す人もいるようですが、どうもピンとこないのです。社会医学や公衆衛生学の教科書においても、QOLについての基本的考え方についての的確な解説は少ない状況にありますが、比較的まともな解説として、『社会医学事典(高野健人ほか、朝倉書店、2002年6月) 』では、QOLを、「生活の質」または「生命の質」としつつ、医学医療の分野、生活の分野及び高齢者の三つの領域に分けて、その概念や測定尺度を紹介しています。筆者としては、QOLは、「個人生活全般にわたる満足感」とした方が、はるかにわかりやすいと考えています。

QOLが使われている例としては、生命倫理の観点から終末期がん患者のQOLはどうあるべきかとか、寝たきり老人のQOL向上にはどうしたらよいかとか、前立腺肥大症患者のQOLはどんな状態かとか、初めて入れ歯を入れた患者のQOLはどのように変化するかとか、健康寿命とQOLの関係をどのように考えるべきかなど、非常に多岐にわたる医学分野で使用されています。一般的には、QOLは、なんらかの患者の個人生活全般にわたる満足感を意味していることが多いのですが、健康人のQOLを考える場合でも適用されうる概念だと思います。

禁酒 イメージ

実は、先日、筆者が某大学病院に一週間ほど入院し、内視鏡手術を受けた際にも、担当医から質問票が配られ、手術前後でQOLがどのように変化するかについて回答させられる場面がありました。その時に感じたことですが、入院すると、禁酒、禁煙、禁ケータイそして午後9時消灯の上に、手術すれば、点滴等でベッドに繋がれた状態で、麻酔が切れれば痛みも伴うことになるので、当然のことながら、短期的QOLは、入院中は一旦低下するのです。にもかかわらず手術を甘受するのは、術後あるいは生涯のQOLが向上すると医師も患者も想定するからです。ちなみに、筆者にとって、一週間の禁煙は、最初から覚悟していたこととはいえ、苦もなく実行することができ、「喫煙者は依存症患者ではない」ことについて身をもって実証することができました。

高齢化社会を迎え、高齢者のQOL向上はどうあるべきかについて、筆者としてもいろいろ考えつつありますが、「年相応の老化は平然と受け入れた方が良い」というような自然体のQOLが理想的だと思っているところです。

なお、次回は、たばこを含む嗜好品の摂取とQOLについて考察したいと思っています。

川原遊酔(かわはらゆうすい)