紫煙を楽しむ

紫煙を楽しむ

川原遊酔(かわはらゆうすい)の「紫煙を楽しむ」
未成年者喫煙問題

20歳未満の未成年者の喫煙を禁止する「未成年者喫煙禁止法」は、今から108年も前の、明治33年(1900)の4月1日から施行されました。未成年者は、心身の発達過程にあり、当然のことながら、未成年者の喫煙は、関係者の協力の下に防止されるべきものです。

現在、我が国政府において、「未成年」の定義や関連法規のあり方などについて見直しが行われていますが、国によって、「未成年」の定義がばらばらになっており、16歳―18歳未満を「未成年」としている国が多い状況です。

未成年者喫煙防止の切り札とも言われる成人識別機能付自動販売機と「タスポカード」が導入されつつありますが、今回は、「未成年者喫煙禁止法」制定当時の国際社会においても極めて魁(さきがけ)的な法律であった「未成年者喫煙禁止法」の制定経過について、以下にご紹介したいと思います。ちなみに、当時は、小学生や児童が、流行し始めた紙巻たばこを街角で喫煙する光景が散見されていたとのことです。

「未成年者喫煙禁止法」は、1899年(明治32年)12月、衆議院で根本正ほか4名提出の「十八歳未満ノ幼者ハ煙草ヲ喫スルコトヲ得ス」を主内容とする「幼者喫煙禁止法案」として提案されました。根本議員の衆議院での提案説明は、表面上の理由としては喫煙の健康影響でした。すなわち、その理由として、第一にアメリカで健康上の理由から兵役を免除された者の90%は幼少よりの喫煙者であるという話、第二に非喫煙者が喫煙者より身長が2割4分高く、胸囲が2割6分7厘広いという、信じられない話が理由となっていました。同法案に賛成する当時の雑誌の解説などには健康上の理由が述べられていましたが、議会での審議の中では健康上の議論はほとんどありませんでした。

その後の審議の過程では、衆議院で18歳未満が20歳未満に、「幼者喫煙禁止法案」が「未成年者喫煙禁止法案」に改められました。更に、貴族院では特別委員会で、法律がきちんと守られるかどうか、あるいは学校教育や家庭でのしつけの問題を法律に委ねることが是か非かについて議論された結果、法案は否決されたにもかかわらず、本会議で、家庭などのしつけが崩れていることを理由に、1900年(明治33年)2月19日に可決され、同年3月7日に公布、同年4月1日より施行されることとなりました。参考までに、以下に制定当時の「未成年者喫煙禁止法」を掲げます。

未成年者喫煙禁止法(明治33年3月7日 法律第33号)
{未成年者の喫煙禁止}
第1条 満20年ニ至ラサル者ハ煙草ヲ喫スルコトヲ得ス
{没収}
第2条 前条ニ違反シタル者アルトキハ行政ノ処分ヲ以テ喫煙ノ為二所持スル煙草及器具ヲ没収ス

{親権を行う者及び監督者に対する罰則}
第3条 未成年者ニ対シテ親権ヲ行フ者情ヲ知リテ其ノ喫煙ヲ制止セサルトキハ1円以下の科料ニ処ス

(2) 親権ヲ行フ者ニ代リテ未成年者ヲ監督スル者亦前項ニ依リテ処断ス
{販売者に対する罰則}
第4条 満20年ニ至ラサル者ニ其ノ自用ニ供スルモノナルコトヲ知リテ煙草又ハ器具ヲ販売シタル者ハ10円以下ノ罰金ニ処ス

川原遊酔(かわはらゆうすい)