紫煙を楽しむ
分煙への取組 |
「分煙」とは、喫煙と禁煙についての場所や時間を区分けすることによって、たばこを吸う人と吸わない人が快適にすごせるようにすることです。 分煙には、喫煙場所を分ける空間的分煙と喫煙時間を設ける時間的分煙があります。初期には、空間的分煙と時間的分煙の両方が取り入れられていましたが、最近では、空間的分煙が多くなりました。 分煙の導入理由として、受動喫煙による悪影響を上げる人がいますが、受動喫煙や環境中たばこ煙(ETS)の悪影響は必ずしも明らかになっていないことから、たばこを吸う人と吸わない人が共存するために、ETSによる迷惑感を緩和するための方策として、分煙を導入するのが正論だと思います。ここで注意を要するのは、ETSは、たばこの先端から立ち昇る副流煙と、主流煙を吸い込んだ喫煙者の吐き出した煙とが、空気中で希釈拡散されるという点です。つまり、主流煙に比べて成分量が多いと言われる副流煙を、直接、非喫煙者が吸い込むことは少ないということです。 いろいろな分煙方法が確立されつつあります。例えば、建築物内に喫煙スペースを設けてその中に煙除去装置や空気清浄装置を設置する場合から、単に防壁によって喫煙スペースを設ける場合などがあります。いずれの場合においても、天井の高さ、壁の材質や色使い、周囲の景観、装置の性能等によって、喫煙スペースの快適性が異なりますので、快適性の観点からそれらに配慮することが望ましいと言えます。分煙に対する社会的ニーズの高まりに対応して、分煙コンサルタントも出現しています。一般的には、たばこ煙は、上方へ拡散する性質がありますので、上方で煙成分を捕集する方式の煙除去装置が効率的だと思います。 最近、公共の場の喫煙規制が、「健康増進法」(別紙参照)を理由として、分煙を飛び越えて全面禁煙化の傾向にあるのは、憂慮せざるをえません。2002年に制定され、2003年5月に施行された「健康増進法」では、同法25条で受動喫煙防止に関する対策が、学校、体育館、病院、飲食店その他多数の者が利用する施設を管理する者に対する努力義務規定として明記されていたにもかかわらず、同法施行を理由として公共の場における分煙化を通り越して禁煙化が加速しつつあります また、一部の地方自治体において条例によって、一律の禁煙を企図する動きも出てきていますが、選択の余地のない一律規制ではなく、分煙や喫煙マナー順守の方が、しなやかで現実的な解決策ではないでしょうか。選択の余地のない一律規制は、不寛容な社会、思いやりのない社会に繋がります。これに関連して、本年4月27日付の神奈川新聞の社説「一律規制は望ましいのか」は傾聴に値する論説です。 少しだけ明るい兆しとして、タクシーの全面禁煙化が加速する中、一部喫煙可能タクシーの配車がOKになる場合が見られているようです。しかしながら、全体的な喫煙規制は、相変わらずの全面禁煙が多い状況ですので、機会を捉えて分煙の要請を行っていく必要があると考えます。 要は、分煙と喫煙マナーによって、たばこを吸う人と吸わない人が共存できる快適な社会環境の創造へ向かいたいものです。 別紙 健康増進法(平成14年8月2日法律第103号) 第一章 総則 (目的) 第一条 この法律は、我が国における急速な高齢化の進展及び疾病構造の変化に伴い、国民の健康の増進の重要性が著しく増大していることにかんがみ、国民の健康の増進の総合的な推進に関し基本的な事項を定めるとともに、国民の栄養の改善その他の国民の健康の増進を図るための措置を講じ、もって国民保健の向上を図ることを目的とする。 第五章 特定給食施設等 第二節 受動喫煙の防止 第二十五条 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。 |
川原遊酔(かわはらゆうすい) |