紫煙を楽しむ
煙の物性など |
前回に引き続き、煙の物理化学的特性の一部として、煙の物性などについて今回は取り上げてみたいと思います。 具体的には、たばこの燃焼温度や煙の粒子径について、データは少々古いですが、多くの報告例があり、以下に解説したいと思います。
紙巻たばこの吸煙条件下における最高燃焼温度は、約820℃(770℃-870℃)であり、また、自然燃焼下における最高燃焼温度は、約750℃(720℃-780℃)となっています。 一方、パイプたばこの最高燃焼温度は、約600℃(550℃-660℃)であり、また、葉巻では、約790℃(760℃-820℃)となっています。 したがって、燃焼温度は、紙巻たばこ»葉巻»パイプたばこの傾向にあります。ただし、パイプたばこや葉巻は、標準測定条件が定められていないなどもあり、測定例はあまり多くはありません。 水分の影響も調べられており、結果としては、最高燃焼温度に水分の多寡は、ほとんど影響していません。 以下の図に、主流煙と副流煙についての粒子径の測定結果(Keithら(1960))を示します。 これによれば、主流煙(mainstream)の平均粒子径は、0.2−0.3μであり、副流煙(sidestream)の平均粒子径は、0.15μとなっています。すなわち、主流煙の粒子は、副流煙に比べて大きい傾向にあります。 また、フィルターを通過させた主流煙は、大きい粒子だけでなく、小さい粒子も捕捉されることから、結果的には、フィルター通過後の平均粒子径は、あまり変化していないことになります。 なお、主流煙を吸い込んでから吐き出した煙(吐出煙)は、口中で水蒸気により飽和されるため、粒子径が大きくなります。副流煙が紫色に見え、主流煙の吐出煙が白色に見えるのは、これらの煙粒子による光の吸収・散乱の違いによるためとされています。 以上のとおり、代表的な煙の物性などのデータを紹介してきましたが、測定法、測定者、測定条件などによってデータは微妙に異なります。 |
川原遊酔(かわはらゆうすい) |