禁煙ファシズムにもの申す

禁煙ファシズムにもの申す

政治コラムニストの岩見隆夫氏が厚生労働省の異常なたばこ政策を厳しく非難しておられます

愛煙家各位

政治コラムニストの岩見隆夫氏が、昨今の厚生労働省の常軌を逸したとしか言いようがないたばこ政策を厳しく非難しておなれますので、ご参考までにご案内いたします。

岩見氏は毎日新聞に定期コラム「近聞遠見」をお持ちの著名なジャーナリストです。

週刊誌のサンデー毎日にも「サンデー時評」を執筆しておられ、平成24年3月4日号では「厚労省のたばこ対策はおかしい」と言う記事を書いておられます。


岩見氏ご出演の番組をご覧なりたい方は、インターネット放送局シアター・テレビジョンでどうぞ。

「日本の政治.jp」youtube→http://youtu.be/pSnAW_r7hXE


記事でご覧になりたい方は、こちらでどうぞ。

毎日新聞web「毎日jp」岩見隆夫サンデー時評http://mainichi.jp/select/seiji/iwami/


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厚労省のたばこ対策はおかしい
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岩見 隆夫

厚生労働省の喫煙者いじめは度が過ぎるのではないか。たばこのことは書かないに越したことはない、書けば禁煙論者の神経にさわるらしいから、と思い定めてきたが、書かざるをえないようにしているのは厚労省のほうである。

昨年、小宮山洋子厚労相が新任の第一声で、「一箱700円台まで上げても税収は減らない」と述べた時はびっくりもしたが、この大臣、政治のイロハを知らないな、と思った。私はマイルドセブン・スーパーライト6を常用しているが、昨年300円から410円に上がり、今度は一気に700円という。

いま喫煙人口は減っているとはいえ、男女合わせてざっと2200万人、東京都の約2倍である。この人たちにとってたばこは日用生活品に近い。 その値段をどんな目的があろうとも一度に7割も引き上げるのは尋常ではない。

政策を執行する場合は、対象者の利害、反応を十分に分析するのがイロハのイであることは言うまでもない。小宮山さんはどう分析したのだろうか。

喫煙者が怒ろうが、たばこ耕作農家、販売業者が打撃を受けようが、喫煙者率が下がればそれでよい、と考えたのかもしれない。社会はクリーンになり、医療費も削減できると。

しかし、そんなバランスを欠いた政策が通用するはずがない。案の定、700円案は消えた。第一、厚労相が税金の話をすること自体、越権である。

では次の手をということなのか、厚労省は国民健康づくりプラン(健康日本21)の中心にたばこ対策を据え、まずこの2月、がん対策推進協議会で、

〈2022年までに喫煙者率を12・2%以下にする〉

という目標を盛り込んだ素案が了承された。これまで喫煙者率削減目標の設定は検討されたことはあったが見送られている。現に厚労省調べによると、喫煙者率は2003年の27・7%が7年後の2010年には19・5%(男32・2%、女8・4%)に急減した。

日本より上位はロシアの43・4%を筆頭にフランス、ドイツ、イタリア、イギリスと続いており、すでに日本は先進国のなかでも低い部類だ。

日本のあとに、アメリカ16・7%、カナダ16・1%がくる。それを10年後までにさらに7%余削るというのだ。いずれ日本を〈無煙国〉にしたいらしい。

そこまで執拗に追い詰めてくると、私のように約60年間、たばこと親しみながら仕事をしてきた人間(文章を書く時、手放せない)としては喫煙権を強く主張したくなる。それを無視するような強権発動的な政治は、過去の例をみても必ず失敗する。

仏教の理念に〈いい加減〉という言葉がある。ルーズの意味ではなく、風呂の熱さや酒のおかんが適温な時に使う。すべて極端は害が多く、いい加減のほどほどがいいのである。ところが、一連のたばこ対策はほどが悪い。


◇次第に強化される受動 喫煙防止の狙いは何か

いま、厚労省が進めているいくつかの施策のうち、病院対策は強権発動的である。1月31日付の『毎日新聞』に次の記事が載った。

〈厚生労働省は30日、子どもや生活習慣病患者が通院、入院している医療機関(糖尿病、ぜんそくなどで、大半の医療機関が該当する)について、規模にかかわらず屋内を原則全面禁煙とする方針を決めた。対応しなければ診療報酬を減額する。

同日の厚労相の諮問機関「中央社会保険医療協議会」(中医協)に示した。4月から実施する12年度の診療報酬改定に合わせて導入するが、影響が大きいため、一定の経過措置を設ける〉

「病院禁煙、厚労省が『荒療治』」−−の見出しがついている。これを読んで、私は700円引き上げ発言を聞いた時と同じ不快感を覚えた。病院禁煙はともあれ、それを〈金縛り〉で進めようとする。いじめというより行政権力による強制だ。

同省の調査によると、建物内の全面禁煙を実施している医療機関は64%で、あとの35%は喫煙室などを設ける分煙で対応している。たばこ政策の基本は分煙主義のはずで、私たち喫煙者も控えめに分煙を受け入れることで折り合ってきた。病院は別、という理屈もわからないではない。

だが、たばこを手放せない医師もいるだろう。機械的に全面禁煙はいかがなものか。いわんや、指導するならともかく、報酬減額のムチはよろしくない。

その分煙についても、厚労省は労働安全衛生法の改正案を用意している。

〈受動喫煙を防止するための措置として、職場の全面禁煙、空間分煙(喫煙室)を事業者に義務付ける。ただし、当分の間、飲食店その他の当該措置が困難な職場については、受動喫煙の程度を低減させるため、一定の濃度または換気の基準を守ることを義務付ける〉

というもので、この国会に提出、早ければ来年1月施行の予定だ。

対象となる飲食、旅館業者は約65万、第一次産業系が565万にのぼる。義務付けは特に外食産業への影響が大きく、全国で初めて2010年4月〈受動喫煙防止条例〉を施行した神奈川県では、中小の外食が恐慌をきたした。

神奈川条例を全国で実施した場合、3年間で約4900億円、なかでも外食産業は2300億円の経済損失が見込まれる、とマーケティング会社の富士経済(東京・日本橋)が昨年試算、公表している。

兵庫県も同様の条例をつくっているが、厚労省の改正案はまさしく神奈川・兵庫条例の全国版とみていい。

要するに、病院でも外食産業でも、次第に強化される受動喫煙防止の狙いは何か、ということだ。国民の健康増進はよくわかっている。一方で喫煙者は減ってもなくなることはない。どこかで住み分けするしかないのである。ところが、厚労省による最近の性急な対応は、分煙もなくしたいみたいに映る。

ほかにもっと優先してやることがあるのじゃないか。



<今週のひと言>

なにかこっけい、石原親子の口げんか。

(サンデー時評:サンデー毎日2012年3月4日号)

2012.03.03