禁煙ファシズムにもの申す

禁煙ファシズムにもの申す

雲造院杢杢愛煙信士のつぶやき34
雲造院杢杢愛煙信士

某月某日

もっと噛み付け、嫌煙団体

しばらく前のことだ。「おいでたかね、ちっとばか聞いてくんろ」と、元禁煙運動推進者の歯医者サンが我が家の紫煙たなびく遊び部屋に久しぶりに顔を出された。

かつては他人にやたらに禁煙を強要するお節介で迷惑な歯科医サンだったが、嫌煙運動が世間に撒き散らすウソに、ホトホト嫌気が差して、自身も長年メンバーとして活躍していた嫌煙団体ときっぱり絶縁なさった立派なお方だ。

ところが、長年の嫌煙運動が認められ、当市の歯科医師会の禁煙推進委員会の代表に祭り上げられた不幸な人物でもある。

今日、嫌々ながら知人に誘われて行った嫌煙団体のある集まりで、ある嫌煙団体の偉いお方が、馬鹿馬鹿しいことを主張したので、どの様に対処すれば良いか、私に助言を求めに来たというのが、ご訪問の趣旨だった。

その馬鹿馬鹿しい主張とは、宮ア 駿監督、スタジオジブリによりアニメーション映画化された「風立ちぬ」が、「喫煙を奨励するかのごとき内容で、まことにけしからん。喫煙シーンの全面カットを求める」と言うものだそうだ。

この映画は、実在の人物である堀越二郎をモデルに、その半生を描いた作品だが、堀辰雄の小説『風立ちぬ』からの着想も盛り込まれている。実際のエピソードを下敷きにしつつも、ヒロインとの恋愛シーンなどにオリジナル要素を盛り込んだストーリーが展開される。観終わった後、心に残る良い作品だと私は思った。

嫌煙教の偉いお方が、目を三角にして咎めるのは、主人公の堀越が愛煙家であることだそうだ。しかも大変美味しそうに吸うことがけしからんそうだ。極めつけは結核を患う妻のそばでためらいつつも喫煙するのは、絶対に許せんと頭から湯気を出して息巻いておられるそうだ。

映画で、堀越の妻は、結核が悪化して結局は帰らぬ人となるが、その偉い嫌煙教徒サンによると、「これは夫からの副流煙が死を早めた一因だ」と決めつけておられるそうな。

他にも高級リゾートホテル、職場、教室など、様々な場面でタバコが出ているのが気にくわないそうだ。

子どもも観るこのようなアニメ映画にタバコを頻繁に登場させるのは甚だ問題があるというのが、その偉い嫌煙サンのご主張である。

「風立ちぬ」は7月から全国で公開されているが、興行ランキング1位が毎週続いているので、間違いなくDVDが発売されるだろう。その際には、嫌煙団体として、映画にクレームをつけてタバコを吸う場面の全面削除を求める運動をしようと提案なさったそうだ。

その嫌煙の偉い方は、映画という文化作品を、嫌煙という立場から「検閲」して内容を改変すべしという、矯激な原理主義思想の持ち主のようだ。

こういう幼稚な考えがそのまま通ると、例えば「殺人」はいけないことだから、映画や小説に「殺人」が登場するのはけしからんという発想になる。だから作中に殺人事件がある探偵小説は、「道徳的に好ましくない」という理由で、全て発禁になってしまう。映画やテレビドラマの暴力シーンも同じ理由で、すべてカットされてしまう。まるで北朝鮮のテレビ番組ではないか。

その道徳的潔癖症のお方にとっては、非道徳的なるものがカットされて、めでたしめでたしということになるのだろう。しかし文化も芸術も死滅する。私には、知的頽廃による幼児化そのものとしか思えない。長年、ウソをつき続けるとこうなるんだな。やれやれである。

私が元禁煙運動推進歯医者サンに「それで、あなたはどの様に思いましたか?」と尋ねたら、「何言ってるんでえ、こん人。嫌煙運動をやっている奴ってこんなおかしなんしかいねえの、と思いました」との返事だった。

元禁煙運動推進歯科医サンも、まともな考えに立ち戻られたわけだ。

ヘビースモーカーとして知られ、NHKのインタビュー中にもタバコを喫っていた宮崎監督のこと。タバコのシーンをカットしろなどと言われても、「ふざけるな! 俺の作品を台無しにする気か」と一喝して終わりだろう。いやいや、宮崎駿監督は、そもそも、馬鹿は相手にしないだろう。

嫌煙教団の皆様。ますますこうした馬鹿げたご主張をなさって、色んなところに噛み付いて下さいませ。あなた方の運動が一体どういうものか、世間でよく認知されることになるでしょう。

私が、元禁煙運動推進歯科医サンに「その偉い嫌煙のお方の主張を、ぜひ団体として採択し、宮崎駿監督とスタジオジブリに激しく噛み付くべきですよ」と助言したら、元禁煙運動推進歯科医サン、にんまりとお笑いになった。

2013.08.22