禁煙ファシズムにもの申す
中東・セルビア喫煙事情 上 |
伊達 国重
この七月、旧友の招きで、セルビアの首都ベオグラードを一週間余り訪問した。急な招きだったので、ベオグラード行きの飛行機はビジネスクラス、エコノミークラスともに空席なし。ぶらぶら遊びに行くのにファーストクラスに乗るようなご身分でもないので、断念しようかと思ったら、中東のアラブ首長国連邦国営のエティハド航空にエコノミークラスのキャンセル席が出たという連絡が旅行会社からあり、急遽、南回りのアブダビ経由で、ベオグラードに入ることにした。南周りで欧州に行くのは、私は四十年ぶりだろうか。 エティハド航空という航空会社の名前を、耳慣れない方も多いと思うが、最近、潤沢なオイルマネーを背景に国営で設立された航空会社で、数年前から日本に乗り入れたと言う。航空業界の事情を知悉している友人に聞いたら、「お金がある会社なので、飛行機は新しい機材ばかりで、老朽機は飛ばせていない。パイロットも欧米の一流航空会社や空軍から腕の良いベテランを引き抜いているから、安心だよ。僕は乗ったことがないからサービスの程度は、知らないが、確かアメリカ人かカナダ人のやり手ビジネスマンを社長に据えて、アラブ流の心のこもったサービスに努めていると聞いている。少なくとも看板は立派だけどサービスは最低の“欧米系の一流航空会社”よりも、はるかに良いと思うよ」と太鼓判を押された。“欧米系の一流航空会社”の箇所は、本当は実名。数社の実名を挙げてくれた。ここではA、B、C、D社とだけ言っておく。 成田出発は夜9時20分。早朝からバタバタしなくて良いから助かる。空港でゆっくりお土産を買っていこうと思ったので、早々と5時過ぎに成田に着いた。搭乗手続きはまだだろうなと思ってエティハド航空の受付カウンターを覗いたら、もう搭乗手続きを受け付けている。ANAが業務提携しているそうだ。ほとんど並ばずに済むから助かる。スムースにチェックインして、お土産を免税店で買って、しばらく一服しようと出発ロビーの喫煙室へ直行した。 私はJALもANAも、専用ラウンジを利用できる馴染み客向けのカードを持っているが、異様に攻撃的な嫌煙者団体の陰湿で執拗な圧力に根負けした両社は、数年前から専用ラウンジでは喫煙できなくした。以来、JALもANAも国際線の専用ラウンジは使わず、JTが設けてくれた一般向けの喫煙室で、ゆっくりと寛ぐことにしている。JTさん、ありがとう。 それにしても嫌煙者とは、一体どういう精神構造なのだろう。何人か知っているが、他人に対して異常に攻撃的な人が多い。平気で嘘をつくし、執拗に嫌がらせをする。こういう人たちが日本にいることを、私は日本人として本当に情けないと思っている。 腹立ちのあまり、筆が横に滑った。さて、初めて乗ったエティハド航空だったが、機内食は日本食が出てきて、味もまあまあ。日本人スチュワーデスによる案内もあり、機内映画も日本語字幕版が揃っており、全体にサービス水準は高かった。美人スチュワーデスが笑顔でおもてなしという訳にはいかなかったが、全体としては友人の言うとおり、及第点だった。 アブダビには、現地時間の午前3時過ぎに到着。予定よりも1時間以上早かった。産油国の航空会社なので、パイロットが経済的な巡航速度など無視して、最大速度で飛ばしたのだろう。JAL、ANAは概ね定時運行だが、海外の航空会社の国際便は遅れるのが普通だ。定刻に出発して1時間以上も早く着いたのは、これが初めてだった。 乗り換えに6時間以上も時間が出来たので、アブダビ空港内をぶらぶら見て回ろうかと思ったが、未明の到着なのであいにく免税店も閉まっている。ということで、喫煙室を探したら、飲食店が軒を連ねる先に豪華な喫煙室があった。 私は世界中の空港を知っている訳ではないが、想像するに誰でも利用できる一般客向けの喫煙室としては、恐らく世界一の水準ではないかと思う。ゆったりとした長椅子が置かれ、観葉植物も並べてあった。 不思議なことに、喫煙室の入口の扉は開放されている。平たく言えば開けっ放しである。いかにも大らかなアラブの人々らしい。 長椅子にゆったりと座って、朝のパイプを一服。旅の疲れが飛んでいく。西洋人とアラブ人が何人かのんびりたばこを吹かしている。 <続く> |
2013.09.02 |