禁煙ファシズムにもの申す

禁煙ファシズムにもの申す

中東・セルビア喫煙事情 中

伊達 国重

アブダビ空港では、トランジットの際に食事券を貰った。未明に到着するトランジット客に簡単な食事を提供しようという趣旨だろうが、いかにもアラブ流のおもてなしの心が現れている。私はエティハド航空の提供かと思っていたが、どうもアブダビ空港当局の提供のようだ。いずれにせよ、助かる。

現地時間で6時になると、空港内の軽食レストランが開店し始めた。豪華な喫煙室でパイプを燻らしながら寛いでいた私も空腹感を覚え、食事券を手にレストランを覗いた。食事券1枚で飲み物とピザなどの食べ物を貰える。早速、貰って喫煙室で頂いたが、なかなかの味だった。食べ終わった後は、葉巻を取り出して一服。

陽が昇ってくると気温もどんどん昇っているのが感じられる。未明の午前3時過ぎに空港外の気温は摂氏35度。朝7時頃には40度近くなっている。この日の最高気温の予想は45度とか。窓から外を眺めると東の方向の砂漠地帯に靄がかかっている。どうも砂嵐のようだ。空港内の建物内は冷房がよく効いていて快適だが、外は暑くて大変だろう。

空港内の店が次々に開店したので、見て回った。もちろん、お目当ては煙草。中東の空港は品揃えが豊富で、完全に免税なので価格も安いと聞いていたが、実際、その通りだった。葉巻のコーナーは3坪程度の部屋全体がヒュミドールになっていて、フィリピン人の売り子さんが鄭重に接客してくれる。最高級の葉巻から、お手頃価格のものまで品揃えが素晴らしい。早速、自分用にコイーバ・ロブスト一箱、セルビアの友人へのお土産にロミオ・イ・ジュリエッタ一箱を購入した。免税の有難味がわかるお値段に機嫌が良くなったところで、そろそろ出発の時刻が迫ってきた。

ベオグラード行きの飛行機は小型機なので、待合室から搭乗口まではバスで移動。建物を出ると摂氏40度を超える外気に晒されたが、短時間でもあり、湿度が低いせいか、それほどのことはなかった。

5時間の飛行時間で、ベオグラードのニコラ・テスラ空港に到着した。空港とは言ってもコンクリートの滑走路以外の敷地は雑草が生えていて、広大な牧草地に降り立ったような雰囲気だった。たまたま熱波が襲来しているとのことで、ベオグラードも40度を超えていて猛烈に暑かった。出迎えには友人の秘書のセルビア美人が来てくれていた。市内のホテルまで車で30分程度。途中、見渡す限りのとうもろこし畑が延々と続き、セルビアは農業国なのだなと実感した。

ホテルはベオグラード市の中心にある4星のMホテル。第二次世界大戦前にできた由緒あるホテルだ。宿泊手続きをしている際、このセルビア美女が勘違いか、無頓着なのか分からないが、何と忌まわしき禁煙客室を間違って予約していたことが判明した。私は喫煙客室に振り替えてもらうよう頼んだが、受付の担当者が「喫煙ルームは人気が高い。生憎、今は満室で空室は無し」とのこと。「それでは宿泊はキャンセルして他のホテルを探すことにする」と言ったら、後ろでやり取りを聞いていたホテルのマネージャー氏がすかさず受付を交代して「少しなら喫煙しても良い禁煙客室があります」と言って、私ににっこりした。私は「???」

何だかよく判らないものの、「それなら、まあ良かろう」と答え、目出度く「喫煙OKの禁煙客室」にチェックインした。このマネージャー氏とは顔馴染みになったので後で聞いたらホテルの客室の2階部分全体を喫煙にして、残りを禁煙にしたところ、喫煙客室希望の宿泊客が多いので3階の一部の客室は「喫煙OKの禁煙客室」にしているとのことだった。こうゆう融通無碍のところがなかなか良い。「クソ真面目」を絵に描いたような四角四面の対応しかできない某国のホテルも、接客サービスの基本をこのセルビアのホテルに学んだ方が良かろうと思った。

日中は猛暑で外出したくないので、「喫煙OKの禁煙客室」で、アブダビで購入したコイーバのロブストを一本嗜んだ。見るとちゃんと灰皿も用意してあるではないか。

<続く>
2013.10.08