禁煙ファシズムにもの申す
映画 赤い闇 スターリンの冷たい大地で |
Q
久しぶりに見応えのある映画を観た。 ホロドモールを描いた事実に基づくストーリーである。映像描写が迫真である。 世界恐慌で主要国が呻吟している最中に、共産主義を掲げるソ連が計画経済の下で繁栄しているという巧妙な対外宣伝に疑問を持ったフリーの英国人ジャーナリストが、様々なコネクションを生かし智略を尽くしてソ連入国に成功し、そして計画経済の裏に隠されているおぞましいソ連の実態を知るという話である。 ソ連の対外宣伝の手先、尖兵となったのは、米国や英国など当時の西側の新聞のモスクワ特派員達。ソ連政府の発表が怪しいと薄々知りながら、自己保身のために嘘の報道を続けた。真実を報道しようとした記者はソ連の秘密警察の手により「事故」で死亡し、嘘を承知で報道したニューヨークタイムズのモスクワ支局長はソ連当局に抱きこまれて安逸堕落した生活を満喫し、そして米国でピュリツァー賞を受賞した。 そしてこのニューヨークタイムズのモスクワ支局長は、彼の報道が嘘であることがその後、すべて露見したにも拘らず、ピュリツァー賞を取り消されていない。 嘘の西側の新聞報道を鵜呑みにした当時のナイーブな大勢の若者達が、共産主義に惹かれて左翼思想に傾いた。あるいは「進歩派」として共産主義や社会主義に共感するシンパサイザーになっていった。 未熟な若者ばかりではない。社会経験を積んだ知識人も共産主義、社会主義に傾いた。サルトルを始めとした左翼知識人は自由な資本主義に絶望して共産主義のシンパとなった。 遠い外国の話ではない。日本も同じである。 この映画は、今から80年ほど前の事実を描いている。 しかし、問いかけているのは現在のジャーナリズムのあり方である。 共産主義独裁国家が発表する統計数字が、すべて嘘であることは、賢明な常識のある人には自明のことである。 しかし、今の中国共産党の発表を、そのまま報道する新聞、テレビなどのマスメディアが何と多いことか。日本のマスメディアの中には臆面も無く、中国共産党の片棒を担ぐ輩が大勢いる。 さらに嘘の統計数字を基に中国を描く学者や評論家達も何と多いことか。 目立たないが映画で重要な小道具の役割をするのは、煙草である。主人公の記者が、ソ連秘密警察の報道担当官を欺いてウクライナに何とか潜入しようとする。秘密警察員を騙す、息詰まるようなやり取りの中で、主人公が煙草に火を着ける一瞬の間。これは観てのお楽しみ。 監督のアグニェシュカ・ホラントはポーランドの女流映画監督・脚本家。本物の骨太の映画人である。1948年生まれで、彼女は左翼全体主義の恐怖の中で生きてきた。 日本の左翼がかった映画監督の連中どもの薄っぺらさが恥ずかしい。 |
2020.09.10 |