禁煙ファシズムにもの申す

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ダ・ヴィンチは誰に微笑む

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オークション史上最高価格の510億円で落札された1枚の絵「サルバトール・ムンディ」。イエス・キリストをなぞらえた世界の救世主を意味し、“男性版モナ・リザ”と呼ばれる。
レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたとも、弟子の作品とも言われる。この絵を巡って強欲な魑魅魍魎どもが蠢く美術界の裏面を丹念に追ったフランスのドキュメンタリー映画の秀作である。
原題が「The Savior For Sale」(救世主売ります)と洒落ている。


ダ・ヴィンチの最後の作品に救世主を描いた作品があり、長く行方不明になっているとの伝承がある。ニューヨークの美術商が、無名のオークション会社のカタログで見つけた絵に「もしや、これでは」と勘が働き、わずか13万円で購入した。傷みが激しいので、一流の修復家に復元を依頼して、ロンドンのナショナル・ギャラリーに接触。ギャラリーがケンブリッジ大の専門家に鑑定を依頼したところダ・ヴィンチの真作であるとのお墨付きが出て、ナショナル・ギャラリーはダ・ヴィンチの作品として堂々と展示した。

そこからこの絵を巡って欲にまみれた連中が次々に登場する。
法外な手数料を騙し取るスイスの強欲画商、脇が甘いロシアの成金億万長者、利用されたハリウッド映画スター、巧みなプレゼンテーションの手法を駆使してナイーヴな素人を欺いて価格を釣り上げる狡猾なオークション会社経営者。
実話映画に本物の人物を登場させる閨秀監督アントワーヌ・ヴィトキーヌの凄腕に敬服する。


その一方で、「サルバトール・ムンディはダ・ヴィンチの作品ではなく、ダ・ヴィンチ工房の弟子の作品」と鑑定する別の専門家も登場してくる。その中で510億円をポンと出して購入したのは、中東の某石油大国の王子だと判明する。そしてルーブル美術館、フランスのマクロン大統領と文化大臣も巻き込む騒動が展開される。


美術界の裏面を描いた映画だが、学校や書物の中で捨象された綺麗事の国際政治や国際経済を学び、世界を「清く、正しく、美しく」と少女漫画風に理解している大勢のナイーヴな日本の方々にぜひ観てもらいたい映画だ。
ドロドロした利害と欲望が絡み合う現実の国際政治と国際経済は、実際にこんな風に動いているのだと肌で実感してもらうために。


ついでに言えば、日本の画壇にも似たような話はたくさんある。絵描きの女房に描かせて、署名だけ自分で入れて自作としている某大家の例など。
素人は御用心、御用心。


「サルバトール・ムンディ」の真贋を深く知りたい方は、Artpedia で検索して一読されたい。実に面白いから。


不満を言えば、愛煙家が登場する場面が少なく、残念でした。


映画「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」公式サイト

https://gaga.ne.jp/last-davinci/

Aartpedia 関連

https://www.artpedia.asia/salvator-mundi/

2022.01.11