正月のＮＨＫの海外事情紹介番組を見ていたら、イタリアで飲食店など建物内での全面禁煙法が成立して施行された、という報道が流れていた。この馬鹿な法律を破ると罰金を取られるのだそうだ。女の司会者が「ますます愛煙家は肩身が狭くなりそうです」とか、何やら賢しら顔で鬼の首でもとったかのような言い方をしていたので、愛煙家たる私は正月早々から気分がムカムカする。

そこで八つ当たりで、もう、ＮＨＫには当分の間、放送受信料を払わないことに決めた。ＮＨＫの口車に乗って「便利な自動引き落とし」なんかにはしていないから、いつでも支払いを拒否できるのだよ。

そういう詰まらぬ私憤はともあれ、イタ公は馬鹿な法律を作るものだと、唖然としたが、半面、流石にファシズムの本家本元、発祥の地だけあって、イタリア国民の血には光輝あるファシズムの伝統が脈々と受け継がれているものだな、と妙に感心もしたね。

いずれ我が日本国でも「先進国では既に云々」とか言って、猿真似をしようと言い出す阿呆どもが出てくるのは確実だろう。

作家の阿川弘之氏の最近のベストセラー「大人の見識」を書店で見て、腰帯に「軽躁なる日本人…」と書いてあったが、そのものズバリの至言だな。「アメリカでは云々」「英国では…」「フランスでは…」「ドイツでは…」とか言って、「バスに乗り遅れるな」とばかり言い囃して、恬として恥じない連中が我が日本国には多すぎる。

何でもこのＮＨＫ番組によると、欧州諸国ではイタリアにとどまらず、ドイツやフランスでも同じような法律が出来ていて､喫煙者はレストランや喫茶店の建物の中では、タバコを吸えないのだそうだ。

まさに喫煙者に対する迫害行為そのもの。キリスト教異端派の根こそぎ抹殺、中世の魔女狩りと欧州人は、異質な者への迫害がお家芸だから、先祖返りしつつあるのかも。

いずれ喫煙者は「悪辣な喫煙人」「劣等人種」「人民の敵」「右派分子」などのレッテルを貼られて、強制収容所か絶滅収容所に送られるのかもしれないな。今の「喫煙マナーを守れ」とかいう世迷い言は、恐らくその序奏だろうな。

怖い時代がすぐそこまで来ている、と思うよ。

ドイツは言うまでも無くナチズムの発祥の地。彼らドイツ人が、いくら「ナチズムによるホロコーストはアドルフ・ヒトラー一派の私的犯罪行為で、ドイツ人はナチズムの被害者なのだ」とか尤もらしく言っても、この建物内禁煙法を見ていると、「本当にそうですかねぇ？　ご冗談でしょう」と首を傾げざるを得なくなる。

フランスはドゴール将軍の奮闘で、何とか第二次世界大戦の戦勝国に滑り込み、今では「ファシズムと闘った自由を愛するフランス人」のようなことを言って口を拭っている。しかし、ドイツ軍政下のフランスでは大方の国民はドイツ占領軍に協力的で、またビシー政府はファシスト政権そのもので、ナチス・ドイツに協力してユダヤ人狩りを推進したとノンフィクションの本に真実をちゃんと書いてある。

映画によく登場する占領ドイツ軍に対する命懸けのレジスタンス運動など、本当に勇気のあるごく一部の人々が例外的に行っていただけなのよ。真相は。右翼のルペンさんという人種差別主義者が、いつも選挙でいいところまでいっているじゃないか。

ただ、ドイツ、フランス、イタリアの喫煙者いじめは、ちゃんと抜け道が用意してあるそうな。飲食店の外では喫煙自由なのだそうだ。事実、レストランの外側で大勢の人たちが不愉快そうにタバコを吸っている姿が映し出されていた。

我が国のお調子者の自治体首長と議員どもが、憲法違反の疑いが濃厚な「路上喫煙禁止」条例をお手盛りでつくって、路上でもタバコを吸えない地域を勝手につくってしまうのと比べると、欧州諸国の方が、まだましだろう。だから地方分権には賛成できないのじゃよ。馬鹿が身の程を忘れて、のさばるだろう？

ともあれ、どうせ、イタリアでは、こんな悪法はいずれ形骸化して抜け殻のようになるに決まっている。マフィアの親分がレストランでタバコを堂々と吸っているのを、店の従業員が「店内での喫煙は禁止です。店の外で吸ってください」と言えるはずがないだろう。子分どもに半殺しにされるか、下手をすれば鼻を削がれたり、本当に殺されてしまう。マフィア取締りの判事や検事が、次々に殺されてしまうお国柄なのですよ。もともとイタ公は自分たちの政府を全然信用していないしね。

フランス人もズル賢いから、この馬鹿な法律は、いずれ単なる建前になってしまって、誰も守らなくなると思うね。アラン・ドロン、ジャン・ポール・ベルモンドのような格好いい暗黒街のギャングがタバコをいつも口に咥えている姿は惚れ惚れするよね。フランス暗黒街映画で、ギャングどもがたむろするレストランが、店内禁煙じゃあ、様にならんだろうが。

結局、馬鹿な法律でも条例でも律儀に守るのは、頭が固いドイツ人と日本人ですかね。お上を信じるお目出度い民族だということが共通しているからね。

愛煙家と言うことで､いやらしい嫌煙者の密告で秘密警察に逮捕されて強制禁煙収容所に送りこまれる前に、そろそろ国外に逃げ出したいよね。