素行の悪い愚息と愚娘が通っている小学校での、昨年秋の授業参観の時の騒動話です。

土曜日の昼前、居間で、のんびりパイプを吹かしていたら、愚妻が「たまには授業参観に父親が参加してよ」と言うので、「五月蝿いな。お前が産んだ餓鬼だから、もともと出来が悪いに決まっているじゃないか。莫迦は死ぬまで所詮、莫迦。下らぬ授業参観なんか馬鹿馬鹿しくて行けるか」と返答して、「あんたの種が悪い」「お前の畑が悪い」の険悪な口論に発展。犬も食わぬ夫婦喧嘩になったのはさておき、仏頂面の愚妻の顔を見たくもないので「まあ、運動不足だし、たまには休日に外出するか」と思って、パイプを燻らしながらてくてく歩いて、小学校の正門に着きました。

すると大きな目立つ看板が正門横の金網に貼り付けてありました。 曰く「子供たちの健全育成のために、学校敷地内は禁煙としております。ご理解とご協力をお願いします」とのこと。おまけに校門近くの金網にはこの小学校の小利口な児童が書いたと思しき下手な標語がプラスチック製の短冊にありました。
「○○区　タバコの煙が無い　健康な町」
五七五の変調で、まるで標語になっていません。

「またまた、オツムの足りない連中が禁煙、禁煙とわめいているな」と、ぐぐっと不快感がこみ上げて参りましたが、なんとか我慢。この手の阿呆の言いがかりは完全に無視するのが一番です。そこで、掲示を無視して、パイプを燻らしながら正門を入ろうとしました。

なにやら大きな叫び声が聞こえます。

どうやらこの小学校の教員らしき運動服姿の茶髪の若い女が私を見とがめたようで「そこの保護者の方！　学校は禁煙ですよ。そこの掲示が見えませんか。タバコの火を消してください」と金切り声で叫びながら走り寄って来ました。

この公立小学校では、左翼系の教員組合の力が強く、校長をないがしろにして、運動服が教員連中の［標準制服］となっているという評判です。校区内に住む、出来の良い子供をお持ちの保護者各位は、この公立小学校を忌避して優秀なお子さんを近隣の私立小学校に通わせたがるとか、愚妻から聞いております。

拙者は、世間の不条理や莫迦さ加減を早くから身を以って学んだ方が宜しかろうと考え、またわざわざ私立小学校へ通わせる金も惜しいことだし、特に何も考えずにこの学校に通わせております。いわばこの小学校の「理解者」という形になるのでしょうか。

閑話休題。この金切り声の女、どうやら慢性的に喰い過ぎのようで丸々と太っており、ド迫力があります。痩せて貧弱な拙者は、気圧されそうな気配です。

拙者が丁重に「校舎に入る時には火を消しますが、グラウンドを通る際に別に火を着けていても構わないでしょうが」と言い返しますと、この茶髪巨大女は「困ります。ルールですから」と言います。

（やれやれ、また薄ら莫迦が一匹。相手にするのも暑苦しくて鬱陶しいな）と心中思いながらも、

拙者は「別にルールじゃないでしょう。論理が飛躍しておりますな。勝手にルールをでっち上げないでください。この掲示は、あんた方教員は学校敷地内で禁煙とするとしていますが、保護者父兄などの外来者には理解と協力を求めているだけのものでしょう。看板に、理解と協力をお願いします、と書いてあるじゃありませんか」

「あんた方教職員が禁煙するのは、あんた方の勝手です。どうぞ、ご自由に禁煙しなさい。しかし、児童の父兄にまで禁煙を強制するのは思い上がりそのものです。教室や職員室などの校舎内なら分からないでもないが、校舎の外の道路やグラウンドでもタバコを吸うなと、あんた方から強制される覚えはありません。余計なお世話です」と物事の筋道を教え諭しました。

すると、この茶髪女教師、どうやら逆上したらしく瞳孔が開きました。日頃、いい加減なことをベラベラ喋っても適当に誤魔化せる餓鬼しか相手にしていないから、おかしな意見を大人から正面からパシッと反論されると、すぐ興奮して逆上なさるようです。

「学校内でタバコを吸ってはいけません。これは学校で決めたルールです。保護者の方も従って貰います」とうわずった声で言い募ります。

こんな埒も無い女教師を相手にしたくはありませんが、巨体で通せんぼして立塞がるので、突き飛ばすわけにもいきません。突き飛ばそうとしても、逆に拙者が突き倒されて、巨体で押し潰されかねません。

「あんたは理解力がお粗末で、物事の筋道がわからないようですから、分かるまで繰り返します。私は校舎内では煙草を吸うつもりはありませんが、別に学校敷地内の道路やグラウンドでは構わないではありませんか。道路やグラウンドで煙草を吸ってはいけないという理由を明示していただきたい」と笑顔を無理に浮かべて穏やかに話しました。

（この騒動話の続きは次回に、乞うご期待）