禁煙ファシズムにもの申す

禁煙ファシズムにもの申す

禁煙ファシズムが大麻ビジネスを太らせる(後編)

前編では、昨年7月に首都圏でタスポが導入された後、関東のある大麻売買グループの販売量が倍増したことに触れました。内情に詳しいA氏の証言から、暴力団筋の大麻ビジネスの構造が少し垣間見えたのではないかと思います。この後編では、引き続きA氏にタバコ規制と大麻ビジネスの相関性について説明してもらいます。

──そもそも、なぜタスポのせいで大麻の販売量が伸びたのか?

ごく普通の喫煙者がタスポのせいで大麻に転向したという例は多くはない。タバコも大麻も両方吸っているという人間が、「タスポで不便な思いをしてタバコを買うくらいなら大麻でいい」という発想になった。大麻はタバコと違って、売人が24時間デリバリーしてくれるからね。でも一番多いのは、大麻をやめたはずの元常習者が、タスポの不便さを自分への言い訳にして大麻に再び手を出すパターン。つまり、大麻を吸うことが後ろめたくてやめたものの、言い訳ができればすぐ大麻に戻ってしまう、弱い人間だ。

──すると、タバコ増税も同様に大麻使用者の増加につながるということか?

関係者はそうなるのを楽しみにしていたのに、増税が先送りされて残念がっている。実際、大麻使用者たちは「タバコが値上がりするなら、もう大麻だけあればいいや」とも言っている。タバコが1箱1000円にでもなってくれれば、ヤクザは笑いが止まらないのではないか。

──大麻がいいものとは思わないが、たとえば大麻で「幻覚が見える」等々のイメージには、実際以上の誇張があるようだ。タバコ規制がいま以上に強まれば、これまでタブー視されてきた大麻規制問題がかえって大っぴらに議論されるようになるかもしれない(事実、週刊誌でそういった記事がすでに出ている)。大麻規制論者のメンツも潰れるのではないか。

大麻は、一般的に語られているほど有害ではないと思う。オレは大麻を吸ってもダウントリップ(気分が昂揚するのではなく落ち込むこと)するだけだったから、あまり好きではなかったが、大麻をやってた頃の方が体調は良かったよ。でも一般論として大麻が覚醒剤への入り口になっている面も実際あるから、「いいもの」と言えないのは当然だろう。

──大麻が覚醒剤の入り口になっているのは、大麻が違法だからでは? 
「大麻によって法の境界を越えた以上、覚醒剤に手を出しても大差はない」といった感覚があるようにも思える。

確かに、それはある。

もし本当に「規制」が大麻から覚醒剤へと手を伸ばす引き金になるのなら、タバコへの規制が強まれば強まるほど、タバコが「大麻への入り口」になるのではないでしょうか。しかも、暴力団側にしてみれば、タスポ導入よりも今後のタバコ増税への期待の方が大きいようです。タスポ導入によって喫煙者は確かに不便を強いられていますが、コンビニで買いだめするなどして対処できないことはありません。そんなタスポごときで大麻の売上が2倍になってしまうのですから、
喫煙者がどうにも対処しようがないタバコ増税は、おそらくタスポ以上に大麻市場の活性化に寄与するでしょう。

もちろん、ここで大麻解禁を主張するつもりはありません。それどころか私は、タバコ規制に反対する上で「人々を大麻に走らせないために」などという後ろ向きな根拠を持ち出す気も、さらさらありません。大麻問題を引き合いに出すまでもなく、そもそもタバコがここまで規制されていること自体がおかしいわけですから。

ただ、違法な大麻を流行させてまで合法なタバコを規制するという、現在の世情の滑稽さを、みなさんに知っていただきたいと思います。これを滑稽だと思う感覚は本来、タバコを好きな人でも嫌いな人でも、冷静で自主的な判断力を持つ人であれば誰でも共有できるものではないかと思います。

この滑稽さを知った上でなお「違法な大麻を流行させてでも合法なタバコを規制すべき」という立場をとりつづける人がいるとしたら、「いったい、どんなドラッグをやったら、そこまで支離滅裂になれるのか?」と尋ねてみたくなります。もっとも、ファシズムに身をゆだねる快感というものは、どんなドラッグにも増して甘美なものなのかもしれませんが。

フリーライター 藤倉善郎
2009/02/05