禁煙ファシズムにもの申す
雲造院杢杢愛煙信士のつぶやき4 |
雲造院杢杢愛煙信士
某月某日 嫌煙でなく「禁煙推進運動家?」なのだとか 「ちょっくらごめんよ」と近所の嫌煙イノチの歯医者サンが我が家を訪ねてきた。 愛煙家と嫌煙運動屋。文字通りの不倶戴天。絶対に相容れない存在同士だ。 嫌煙運動屋サンは個人的な煙草嫌いが嵩じて愛煙家をひどく憎むようになり、喫煙という他人の趣味にいらぬおせっかいをする攻撃的で狭量な人たちだ。これまで実際にお会いする機会が何度もあったが、全身から何やら嫌な雰囲気を漂わせているお方や、見るからに独善的で思い込みの激しいというタイプのお方が多かった。友達になりたいタイプでは決してない。 愛煙家は降りかかる火の粉は払わねばならないから、嫌煙運動屋サンを忌み嫌うが、要するにたばこが好きなだけで特に主義主張もない。もちろん愚劣な人、詰まらない人、マナーが悪い人も大勢いるが、総じて平和的な人が多い。身贔屓かもしれないが、パイプ党や葉巻党、キセル党の方々は個性豊かで趣味が多方面にわたる愉快な人が多い。 この歯医者サンは嫌煙運動屋サンにしては珍しく好人物。こんな善良な人を誰もが忌み嫌う嫌煙運動屋のままにしておくのは惜しい。なんとか更正させて、オトナの良識を取り戻させたいと思う。 我が家には、ビールは数種類、加えて日本酒、焼酎、ウイスキー、ブランデー、ラム酒、ウオッカ、テキーラ、ジン、紹興酒と酒だけは豊富にある。たばこは言うだけ野暮。 いつのまにか、近所の飲兵衛とたばこ好きの溜まり場となっている。おつまみを持ってきてくれる人は嫌煙運動屋サンでも一応は歓迎する。懐が深いのだ。 さて、私が今まで「嫌煙運動屋サン」と呼んでいたその歯科医サンより文句が出た。 何と呼ぼうが、同じことだと思うが、ご本人に言わせるとニュアンスが違うらしい。 よし! これからは、ご希望通り、この歯科医サンに限っては、禁煙運動推進家サンと呼ぼうじゃないか。おつまみに免じて。 この禁煙運動推進家サンが教えてくれた話では、学者の勉強会みたいな名称を名乗って何やらとてつもない権威をつけたおつもりらしい「日本禁○学会」サンでは、我ら日本パイプクラブ連盟のこのHPを日々入念にチェックしておられ、彼らの癇に触る記事があったら会員間でメールで連絡する仕組みがあるのだそうだ。 嫌煙の皆サマ方、本当にお暇なんですね。 羨ましいです。 このささやかな「つぶやき」についても、早速、注意喚起の緊急メール連絡があったのだそうだ。 わざわざお仲間サンにご紹介していただき、ありがとうございます。 改めて満腔の謝意を表明致します。 嫌煙ならぬ禁煙運動推進歯医者サンはいつもにこやかなお方だが、今日に限っては何やら異様な雰囲気だ。珍しく沈黙なさっていると思ったら、突然、興奮して「これ私の事なんすよね、すうなるとあんたが雲造院杢杢愛煙信士でんね?」と血相を変えて詰め寄られた。 私のプライバシーにズカズカと踏み込む厚かましい質問には、答える義理も無いし必要も無い。我が家から即座にお引取り願おうかとも思ったが、お人好しなので「パイプ仲間は皆、忙しいので、なかなか原稿を書く時間がない。だから親しい仲間数人で合作していると漏れ聞きました。あなたのご質問は当らずとも遠からじかもしれませんな。ハハハ」と答えておいた。 するとこの禁煙運動推進家サマは、何やら憤然として帰っていかれた。 私は彼に何か悪いことしたかな? 某月某日 禁煙運動推進家サンにお賽銭を供えよう! ご近所のたばこ好き、ノンベエ、ヒマ人連が、いつでも自由に入り浸って談笑している我が家の遊び部屋には5台のパソコンがある。ネットにつなげていて、自由に使ってもらっている。 近所のおばさん達(と言っても私よりはかなり若いが)を集め、ボランティアでパソコン教室を開いたり、ご主人達とは酒を飲みながら、たばこを吸い、たまにはお色気サイトを見たりしている。 ご近所の方々の家では女房族がうるさいそうで、亭主は自分の家なのに室内でたばこが吸えず外で吸う破目になっているそうだ。いわゆるホタル族が増えているわけだ。そうした女房連中は、亭主に次第に愛想をつかされ、疎ましく思われていることをトントご存じない。 だから、結局、みんなが我が家の遊び部屋へ集まることとなる。 鍵もかけてないし、酒もたばこも、ご希望ならば寝泊りも自由だからだ。 それを知って禁煙イノチの歯医者センセイも、招かれもしないのに我が家へわざわざやって来る。我が家に集まる愛煙家諸氏は皆、センセイのことを嫌って、うんざりしているんだけどなあ。 とはいえ、私がこの家の主人だ。 私が渋々ながらも迎え入れれば、センセイは我が家の客人となる。私以外の誰も「出て行け。もう、来るな」とは言えない。 というのも、私はこの禁煙啓発運動推進の歯医者センセイは大したものだと、ひそかに感心しているからだ。 日曜や祭日をつぶして雨の日も風の日も禁煙啓発活動をなされ、夜は我が家の紫煙もうもうの部屋に毎日のようにいらっしゃる。 そして、私ら迷える凡愚のたばこ喫いを救済するために、皆の嫌がる顔も無視して「たばこはあなた方に悪影響を与える」と延々と飽きずにモノローグそのもののお説教をなさる。誰も無視して聞いていないのに、話を続けられるひたむきな情熱には頭が下がる。 「もしも副流煙が本当に悪いなら、センセイ、あなたも早死にしますよ」と質問したら、「皆さんが、たばこを止めて長生きをしてくれる事が私の使命です」と生真面目な顔でおっしゃった。 まさに鰯の頭も信心から! センセイの神々しいばかりの見事な自己犠牲の精神に、私はビリビリと電気ショックのような感銘を受けた。 こんなに立派な方が、この世に本当にいらっしゃるんだ!!! 今度、また我が家にいらっしゃったら、お賽銭でも供えようっと。 某月某日 たばこはスケープゴート 遊び部屋で禁煙運動屋の歯医者サンと世間話をしていると、「今晩は」と古武道の後輩が来た。 私は、この後輩を子供の時分から手ほどきして可愛がっていた。ところがこの後輩、世の馬鹿げた風潮に惑わされて、数年前に師範代として教えていた道場の敷地全体を禁煙にしてしまった。腹を立てた私は縁を切って見放したのだ。 「先輩お久しぶりです」 「よう来たな。だけんど、このド阿呆!」とまず大音声で一喝。 「何、とぼけ〜た事をほざくんや。おめえは、道場の敷地全部を禁煙にしたんやね〜か。練習後の一服がうんめえかったのに、敷地外まで一キロ近くもあったら気楽にいけねぇ」と激しく叱りつけた。 後輩は「先輩、申し訳ございません」と平伏して謝ったので、私の怒りもなんとかおさまった。 その後輩が拙宅に来た理由が、私にパイプスモーキングを指南して欲しいとのことだった。 黙ってやり取りを聞いていた禁煙運動屋の歯医者サンは、例によって「たばこを吸うと肺ガンになりますよ!」と横から余計なお世話。 後輩は、知らない男から偉そうに口出しされたことに向かっ腹を立てたようで「何だお前は」と睨み付けた。 「先輩、こいつは何ですか?」と聞くので、「禁煙運動推進家を名乗る近くの歯医者サン。余計なお世話が得意なセンセイだよ。まぁ、人柄の良い人で悪気は無いから、いちいちそう腹立てんな」と、とりなした。 後輩は、歯医者センセイに向かって「オイ、他人に要らぬ世話しねぇで引っ込んでろ。教えてやるが、俺はもう肺ガンになっているんだ!」 後輩曰く「俺だけでなく、おやじや爺様もタバコを喫わなかったのに、肺ガンになってしまった。俺は今まで、古武道一筋に精進し、酒もタバコも女も控えてきたのに・・・」 昨年の検診では見つからなかったが、先月の検診で影が見つかったそうだ、30代と若い上に古武道で鍛えあげて血の巡りも良かった為か、最も悪性のガンだそうで、専門医から「余命は長くても……」と宣告されたそうだ。 後輩は、残された日々を悔いなく生きるため、今まで味わえなかった酒、たばこ、女の道楽をする決心をしたという。 しかし紙巻きたばこは、肺に負担がかかるのでパイプに挑戦したいとの事だった。 当然ながら私は、可愛い後輩にパイプ、たばこ、コンパニオンやたばこポーチ等々一式をプレゼントした。 生一本の真面目な性格の後輩は高校を出ると、警察に入り、交番勤務が長かった。 彼曰く、「自分の肺ガンは車の排気ガスが原因です。自分が所属する警察署管内に問題交番が2ヵ所あった。その2ヵ所は国道と県道が交わる三叉路と駅前のバスターミナル近くにあり、どちらも、排気ガスで燻されていた」そうだ。 そもそも、警察官で交番勤務した人達は、毎日よく歩く上に剣道や柔道等で鍛えているので退職しても元気な人が多い。 私らの古武道の道場の副館長も御年82歳にして週3回の稽古を続けてくれているが、この方もお巡りさんあがりだ。 ところが、上記の交番に5年以上勤務した多くの方々が体を壊して定年前に辞めているという。そこに後輩は5年づつ勤務したそうだ。 警察本部も気付いて今は交番を移転し、空気清浄器、エアコン、二重ドアでそこそこ快適な環境になっているので、これからは大丈夫でしょうとも言っていた。 後輩にどやされて、シュンとなっておとなしく横で話を聞いていた禁煙運動イノチの歯医者サンも、さすがに 「たばこだけが肺ガンの原因ではねえのかもしれんね」とぽつり。 車の排気ガスの被害を隠すために、喫煙マナーの悪い奴が大勢いるたばこが格好のスケープゴートにされていること。禁煙運動はそのために利用されているということが、この禁煙運動イノチの純朴な歯医者センセイ、今頃になってようやくおわかりになられたようだ。 センセイ、あなたは真面目で視野が狭く、考えが単純だから、世の中のカラクリが見えなかったんですよ。 |
2011.12.14 |