喫煙情報紹介

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乗ったら吸うな 禁煙包囲網 首都圏タクシー 値上げとダブルパンチ
平成19年12月3日 産経新聞

首都圏でタクシーの禁煙化が進み、肩身の狭い喫煙者。そうした中、東京や横浜などで3日から、タクシーの初乗り上限料金が現行の660円から710円に値上げされる。東京と埼玉では、来年1月7日から「車内全面禁煙」に。愛煙家にとっては値上げと禁煙のダブルパンチだが、「つらい気持ちはよくわかる」と「喫煙OK」の運転手も出てきた。(市川雄二)


「タクシーは、商談の進め方を練ったり反省したりとものを考えるのに適した空間。リラックスして考えるには、たばこは欠かせない」と東京・JR新橋駅前で一服する教育関連企業の営業担当の男性(44)。


禁煙化の目的として、東京乗用旅客自動車協会(東旅協)は「喫煙にかかわる健康被害を防ぎ、快適性の一層の向上を図る」とする。


東京・北千住駅前で客待ちをしていた中央無線グループの男性運転手(69)は「たばこ歴半世紀近く」で、両切りピースが手放せない。しかし、1月の全面禁煙に備え、会社が運転席の灰皿を10月に撤去した。


「ストレスたまるよ。吸っておいしいと感じれば健康な証拠なのに。喫煙できなくするより、むやみに税金を上げるなと言いたい」


喫煙OKで差別化

全国乗用自動車連合会によると、首都圏で全面禁煙化を実施したのは、神奈川、静岡、千葉の3県。7月に先陣を切った神奈川県だが、県タクシー協会(加盟192社)の一員ではない横浜中央交通は、喫煙できることで差別化を図る。


「関内など駅前からワンメーターの範囲で一服したがる女性が目立つ。歩きたばこもできずつらい気持ちはよくわかるので、喫煙者の気持ちを尊重した。あんどん(屋根の会社マーク)を見てわざわざ選んでくれる客も出てきた」と同社。


東京では、法人タクシー約3万4000台を抱える東旅協に同調する形で、都個人タクシー協会も11月に禁煙化を決定した。同協会の前田昭吉専務理事は「首都圏で禁煙包囲網ができてしまった」という。時勢に逆らえない状況だが、乗務員の心境は複雑だ。


個人タクシーの男性運転手(64)は30歳でたばこをやめており、禁煙を歓迎するが、「個タク仲間の1割は『吸いたい客には吸わせる』と言っている」と明かす。


東旅協が全面禁煙を8月に発表した直前、日本たばこ産業(JT)から「決定を思いとどまれないか」と連絡があったという。JTは取材に「たばこを楽しめる空間が減るのは残念」としながらも、「どうすればにおいが残らないか内装の改良を研究中」としている。


「空間探し」は切実

たばこを吸える「空間探し」は切実だ。東京都千代田区の小さな公園の一角に、灰皿スタンドが5つ。平日の昼下がり、10人近い男女がたばこをくゆらせていた。JTと区が共同で設置した屋外分煙スペースだ。


「外で吸える場所がなかなかなくて。もっと確保してほしい」と漏らすワイシャツ姿の男性会社員(47)は、製造業の会社から近いため、1日に4、5回は来るという。


千代田区は屋外全域で歩きたばこが禁止され、6割が路上禁煙区域で携帯灰皿を持っていても吸えない。違反すると2000円の徴収。全国で初めて過料を規定した区生活環境条例が14年に施行されて以来、徴収は約3万8000件に上る。


喫煙人口は2700万人

禁煙補助剤「ニコレット」の製造販売元のジョンソン・エンド・ジョンソンは、禁煙化の流れを歓迎する。マーケティング担当の坂本尚也さんは「昨年7月のたばこ税増税に比べてタクシー禁煙化の影響は小さいが、神奈川で実施された今年7月、関東は前年同月比の5%増と売り上げを伸ばした」と説明する。


東京都渋谷区の「たばこと塩の博物館」では“古き良きころ”を味わえる。耳にたばこをはさんだ鉢巻きおじさんの写真とキャッチコピー「今日も元気だ たばこがうまい!」。JTの前身、日本専売公社が昭和32年に作った「いこい」のポスターだ。喫煙率は年々下がっているとはいえ、昨年の喫煙人口は、推計約2700万人(JT調べ)。