たった5分間の喫煙のために3000キロも旅するとは、どこかおかしいのではと思われるかもしれません。しかし、国際パイプクラブ委員会(CIPC)後援の下に各国のパイプクラブが毎年催している大会に出ないと寂しいと感じ、ほとんど優勝する可能性はないにもかかわらず、そうした旅をする方々が、実際におられるのです。
毎年、400名以上の方々が親しく競い合い、親睦を深めるために一堂に会します。参加者は欧州の数カ国にとどまらず、メキシコ、米国、さらに日本からも馳せ参じます。こうした参加者の団体がパイプ喫煙愛好家の国際組織です。
もともと、こうしたパイプの大会はパイプ仲間と再会する場であり、旅行をする機会でもあり、インターネットで見つけたパイプ作家達の作品に感心する場であり、またパイプ喫煙の楽しみ方やこの一風変わった目的についての知識を深める方法を熱心に論じ合う場でもあります。
しかし、今やこうしたパイプの大会は、我々のパイプ喫煙の方法について何も知らないくせに、至る所で難癖をつけて嫌がらせをする健康至上主義の教条主義者達に対し、パイプ喫煙愛好家達を励ます示威運動の場にますますなっております。こうした大会で、パイプ喫煙愛好家達は我々の小さなパイプの世界の連帯の絆を感じ、また喜びを分かち合います。パイプ喫煙愛好家達はパイプによって齎される本当のささやかな愉しみを生きがいにしながら、溌剌としていることを見せ付けるのです。
しかし、各国の連盟が主催するパイプ大会の頂点にある世界選手権大会は特別な時であります。私は1984年のコペンハーゲン世界選手権大会でのピエール・ミューラーの姿をいつも思い出します。ピエールは競技の最後のスモーカーであり、大きな会場の真ん中で一人で吸い続けていました。彼の周囲には400名が完全な静寂を保ち、まさに息を止めて時計を見守っていました。見守る全員が、ピエールは世界記録をやぶり、初めて3時間の壁を突破するのではないか、ということに注目していました。そして彼は成し遂げました!極めて格別な雰囲気が場内を支配していました。
私はCIPCの責任者として、こうした事情を承知しているからこそ、来る2010年の大会が、ポルトガルという地のイメージにぴったりの、素晴らしい瞬間になるだろうことを確信しています。
国際パイプクラブ委員会(CIPC)会長
アラン・ルトリエ
フランス・パイプ・クラブ連盟会長
(日本パイプクラブ連盟事務局 仮訳) |