パイプの愉しみ方
パイプの煙 番外編 高雄再訪記
3月13日から16日まで、春休みを利用して4ヶ月ぶりに台湾・高雄を再訪した。総統選挙直前とあって、さすがにあちこちに選挙ポスターや旗が目立つ。
今回は若い友人、28歳の政治学者・丹羽文生氏も同行し、まず台中にある東海大学(日本の東海大学とは提携関係にあるとか)での講演、さらに高雄に戻ってのシンポジウムと盛りだくさんの日程が詰まっていた。
が、それを吹き飛ばすくらい温暖な気候と親日的な雰囲気は、日本の寒さと採点疲れでバテバテの私を見事に蘇らせてくれた。
成田から中華航空に乗ったとたん、気分は台湾である。
高雄空港で迎えてくれたのは前回同様、高雄第一科学技術大学の邱栄金博士。
高雄から台中までは快適なハイウェイを走っても2時間はかかる。
近頃、台湾の文化人に人気のある台中だが、人口が106万と聞いて驚いた。そんな大都市になったんだ。宿泊先の東海大は大学の警備、24時間営業のコンビニ、ゲストハウスなどの管理はすべて学生がやっている。経営学の実践だそうで、このゲストハウスは一流ホテル並の快適さだったことも付言しておく。
翌日の講演は、先述したが22日の台湾総統選直前でもあり、政治意識も高く、日台関係の将来について、次々と質問が浴びせられた。
しかも、若い学生の丹羽さんに対する人気はすさまじく「日本から教育界の馬英九が来た」と新総統に当選した馬氏に例えられ、さながら丹羽フィーバーとなったのは愉快だった。
仕事後の台中散策は、古きよき日本を思い出すような、穏やかな旅になった。とりわけ近郊の港町、鹿港は昔の街並みが残っており、レンガ造りの壁と壁の狭い隙間が通路となっている。人間が2人すれ違うのが精一杯で、地元の名所「摸乳巷」の由来はすれ違うと胸と胸が触れてしまうほど狭いという意味だが、観光客がいくら期待して来ても、地元の女性とすれ違うことは決してない。しかたなく、丹羽氏とのポーズ写真となった。
そして、いよいよ高雄に戻ってのシンポジウムの熱気は省略して、一気に街に出た話でまとめたい。
今回は湾を横切るフェリーに乗った。これは市民の足だが、徒歩でも、バイクでも、車ごとでも載せてくれる。われわれ一行は車ごと載った。
台湾は日本並に禁煙意識が徹底しているが、船上でタバコを吸っている人がいた。「小枝さん、ここなら大丈夫ですよ」と愛煙家の丹羽氏とともに、私も車から降りて、心地よい海風にあおられながらパイプの煙をくゆらせたが、いやあ、気持がいい。
スケジュールが全部終わったあとなので、解放感も加わり、あるのは爽快感のみである。
中華料理の晩餐会も終わり、最後の夜訪れたのはお馴染み中山大学近くの元英国領事館のレンガ館。あのグアテマラ人の経営するカフェである。なんでも、つい最近、日本のテレビ局も番組で紹介したらしく、オーナーが有名タレントと映っている写真を見せてくれたが、こっちは去年11月にきているから、先見の明では勝っている。
台湾海峡にチラチラ浮かぶ船の明かりを見ながら、グアテマラカフェをすする幸せなひととき。テーブルに置かれたローソクランプの炎がゆらゆら揺れる。
椅子に寄りかかりながら、くゆらすパイプは、やはりダンヒルのベント型。極楽である。