パイプの愉しみ方
禁忌あるいはタブーについて
学校に通っていたころ、“来週の地理は近畿をやる”と告げられて胸がときめいた経験はないだろうか。成人してから居酒屋で、“おやじーっ、キンキ一丁”という声の出所を振り返ることは。筆者はキーボードのTABキーも禍々しく見えて、データの連続入力時に件のキーならワンタッチなのに、わざわざマウス移動とクリックの手間をかけることがある。
近年、パイプ喫煙しながらのコンピュータ使用の機会も増えてきたようである。喫煙イベント前のメールの往来は膨大で、筆者の喫煙関連フォルダーの容量も、往時の大型計算機の記憶装置では収納しきれないほどである。しかしPC操作時のパイプ喫煙には絶対の禁忌がある。余り知られていないようなので此処に警鐘を鳴らしたい。
それはキーボードの上でタバコをパイプに詰めてはいけない、この一事である。充填時に細かいタバコの断片がキーの隙間に入り、それが何かの拍子にキースイッチの機構部に挟まると、押したはずのキー入力が認識されない事態が出来する。しかもタバコの葉は柔軟性を持つので、キータッチでこの原因を感知するのは常人には困難である。キートップをはずして機構部を詳査すれば良いのだが、頻発するミスタッチという現象だけを見て、PCの寿命かなどと誤解されることが多い。よく言われるコーヒーをキーボードに溢してPCを駄目にするケースは、事故が目の当たりに顕れるからまだ良性である。タバコ片の侵入は、事態が認識されないままいつか症状が頻発するようになり、まさにパイプスモーカーPCの生活習慣病ともいえる。パイプ関連のメールに誤字脱字が多いような気がするのも、あるいはこの悪習が蔓延しているせいかもしれない。
最近ミスタッチが多くなったと思っている貴方、自身あるいは機械の高齢化ばかりではなく、不適切な生活習慣を疑ってみては如何。もっとも喫煙歴ウン十年、タンパーで押しただけでパイプ内の燃焼点の位置から葉っぱの組成まで判る達人であれば、”おっ、Tのキーにシリア産のラタキアの断片が”と明察する筈ではあるのだが。