パイプの愉しみ方

パイプの愉しみ方

多摩川河川敷でバーベキュー

5月のGW連休中、ふと、思い立って、恐らくどこにも行かずに家で無聊を囲っていそうなパイプ仲間に、「バーベキューにでも行かないか」と声をかけたら、すぐに数人から「良いね。行くよ」と返事が来た。パイプ愛煙家は、生活感が希薄な暇人、昔風の言葉でいえば高等遊民が多いから、お誘いすれば、すぐに乗ってくるから、話が早くて良い。

インターネットで手ごろな場所はないかと調べてみると、東京都内や埼玉県は公園内に設けられた大方のバーベキュー会場が「直火禁止」とか「喫煙は所定の場所で」とか、愚劣な規則を勝手に作っている。煙がもうもうと出るバーベキューを楽しむのに「直火禁止」とか「禁煙」は一種の自己矛盾だと思うが、小役人の愚か者が無用の規則を作るのが世の習い。そんなところは相手にせずに、土地勘のある多摩川のとある河川敷が良いだろうと当たりをつけて、集合時刻と場所を決めて皆で繰り出した。

昼前に目指す河川敷に到着。早速、シートを広げ、手ごろな石で即席の竈をつくる。鉄板を置いて、準備完了。燃料はそのへんの流木だが、心がけの良い仲間が、百円ショップで中国産の炭を買ってきていた。中国産の食材は、勘弁願いたいが、炭ならばさすがに偽物もないだろう。

着火は、まずはパイプから。新緑に囲まれた河川敷で味わうパイプ煙草の味は格別だ。新緑の中に藤の花が咲いていて、風情がある。一同、パイプをゆったりと堪能したところで、火熾し班が新聞紙を丸めて着火。炭や流木に燃え移って火勢が強くなったあたりで、鉄板に油をひいてソーセージや野菜、貝、魚などを焼き始める。

料理自慢の凝り性の仲間がテンプラ鍋と油を持参していて、揚げ物も作り始めた。ちなみにこの方は、煙草は一切喫わないが、パイプ仲間の愉快な雰囲気が楽しいから、パイプ関係の行事にはいつも顔を出す楽しい方で、「パイプクラブ周辺居住者」と呼ばれている。

料理が出揃った頃合いを見て、冷えたビールやワイン、日本酒をグラスに注いで皆で乾杯!!!
薫風そよぐ中のバーベキュー、まさに快適そのものだ。

酔いが回ってシートの上で熟睡モードに入った人もいるが、大方は清清しい新緑を眺めながら歓談。下世話な話や尾籠な話もあるが、高尚な話も出る。政治、経済、哲学、数学、物理学などの話もあれば、芸能界、病気、抱腹絶倒の経験談などもあって会話と食事を楽しみながら昼下がりの時間が過ぎてゆく。

「パイプの前に会員はすべて平等」が、パイプクラブの伝統だ。自由闊達で知的な雰囲気に魅かれて会員が集まり、親しくなっていく。

午前中は快晴だったが、午後から曇り空になってきた。3時過ぎた頃から、小さな雨粒がポツリポツリと落ちてきた。「名残惜しいが、さあ、そろそろ撤収しよう」との声が出て、後片づけ。火を消して、清掃して、酩酊して河川敷に大の字で眠りこけている仲間を起こして駅までゆっくりハイキング。

平成25年のゴールデンウィークの楽しいバーベキュー行事は、かくして終了。来年もまた仲間と行きたいものだ。
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