パイプの愉しみ方

パイプの愉しみ方

万物是填圧棒也

丹波 作造

人も殺すが生かす道具にもなる。刀、箸、煙管、天秤棒、釣瓶の縄、釣竿、櫓、果ては××××迄演じるのが落語の扇子だが、タンパーに使うとは寡聞にして聞いたことが無い。快楽亭ブラックが生きていれば、ホームズ登場でそんな場面があったかもしれないが。寄席の升席で煙草盆を出さなくなって久しい、パイプの火が消えて、あ、消えた(けえた)と呟いて卓に伏せても、八代目の「死神」ですなと突っ込んでくれるメンバーも払底した。


八代目 三笑亭 可樂

タンパーなぞは径が五分位の棒が有りゃいいんで持ち歩くなんざ面倒でいけねえ、喫煙行で突如林に入っていくので用足しかと思っていると、嬉々として折った小枝を持って来る輩も居る。行住坐臥タンパーを探すといえば、最近某パイプクラブの重鎮A氏と飲む機会があったが、席に着くなり膳にある箸の端面を仔細に検分し、良しと言われたには感心した。同席したB氏はといえば、手にする扇子の下端が妙に汚れている。

不遜にもタンパー作家を目指す某若手に至っては、夏はタンパーの季節ですと広言して百円店で虫取網、魚掬網の柄を矯めつ眇めつ漁っているという。話は逸れるが、夏の風物詩であるとはいえ、如何にその径が魅力的でも花火だけはタンパーに用いてはならない。幸運の女神フォルトゥナには前髪しかないとダ・ビンチも言っている。不肖自分も絶好の材に巡り合った瞬間を逃さないため、常時鋸を携帯するべく決意するに至った。しかし好事魔多し、鋸自身が格好のタンパーである事に気付いてしまい、ハングリー精神が弛緩してしまいそうなのは困ったものである。


カッターのこ(タミヤ)