パイプの愉しみ方

パイプの愉しみ方

アインシュタイン博士のパイプ 続編

「このパイプの製造会社はどこか?」

日本パイプクラブ連盟のHPの「パイプの愉しみ方」欄に掲載の記事「アインシュタイン博士のパイプ」(2019年9月3日)について、愛読者の方から高度なご質問がありました。
ご質問は2点。
①アインシュタイン博士が愛用したパイプ(当該写真)の製造会社名を知りたい
②アインシュタイン博士が愛用したパイプタバコの銘柄は?

きちんとした回答ができる自信はありませんが、早速、できる範囲で調査です。

まず、この博物館収蔵品のパイプの製造会社について調べました。

この写真は、2018年に東京・浅草で開催した世界パイプスモーキング選手権大会に、記録映画撮影で協力して下さった米国ニューヨーク州在住のY女史(ご尊父がパイプ喫煙愛好家)が米国フィラデルフィアの国立ユダヤ系米国人歴史博物館(National Museum of American Jewish History)を訪ねた際に撮影して、わざわざ当連盟事務局に送って下さったものです。
調べた結果、このパイプはもともとワシントンD.C.にある国立米国歴史博物館(National Museum of American History)の現代物理学コーナーに展示しているものだとわかりました。両博物館ともにスミソニアン協会系列ですので、貸与しているわけでしょう。

Y女史が送って下さった2枚の写真では、残念ながら撮影の角度が異なり、製造会社名の刻印は見えません。そこでスミソニアン協会の所蔵品をインターネットで検索しました。これがその写真です。

スミソニアン協会の説明文では、このブライヤーパイプはアインシュタイン博士が長年使い込んだ愛用の品。1948年に博士が熱烈なファンの女性にねだられてプレゼントし、その女性が1979年に同協会に寄贈したそうで、現代物理学関係の所蔵展示品では一番の人気だとか。

ボウルの木目はbird’s-eye。マウスピース(吸い口)のビットの箇所に歯で噛んだ噛み跡があり、製造会社の刻印や製造番号などはこの写真の角度では判りません。
ただ、マウスピースの部分を仔細に見ると、照明の加減かもしれませんが、白い点(ホワイトスポット)の痕跡のようなものが見てとれます。単なる白い汚れかもしれませんが。
もし、ホワイトスポットならば、パイプ喫煙愛好家なら誰もが知る英国のダンヒル社製のマウスピースの可能性があります。
その場合は、おそらく1930年代後半か1940年代初めに製造されたダンヒル社のビリヤード型パイプのマウスピースだろうと推測できます。
私が所蔵しているダンヒル社製の古いパイプの中にたまたま似たタイプがあったので、参考までに写真を載せておきます。



ところが、念のためになおも調べているうちに、スミソニアン協会の収蔵品の中に「アインシュタイン博士のパイプ」という別の写真を発見しました。それがこれです。

この最初の写真と同じパイプであることは間違いないと思います。こちらの写真の方が鮮明です。製造会社の刻印がかすかに見てとれます。ただ、マウスピースの部分にホワイトスポットはどうも見当たらないようです。

パイプの写真全体を良く観察すると、ボウルとステムの大きさに比べて、マウスピースがやや長すぎる印象があります。またステムとマウスピースの差込部分のサイズが微妙に異なっている感じもします。
想像ですが、このパイプを長く愛用していたら、マウスピースの部分が壊れたので、他のパイプのマウスピースを探して無理やりねじ込んだものだのではないでしょうか。
その証拠に、ステムの部分がマウスピースのダボとサイズが合わないようで、割れてしまっています。
私も愛用していたパイプのマウスピースが壊れたので、別のパイプのマウスピースを差し込んで使ってみたら、寸法が合わずにステムにヒビが入った経験があります 。

さて、製造会社を知るためにステムの刻印の箇所の写真を拡大してみました。
最初の大きな文字がVのように見えますが、よく判りません。
以下COKITAD????のように見えますが、拡大写真でも判然としません。
ここで、このパイプの製造会社についての写真調査はひとまず行き止まりです。

 

もし読者の方で知見がある方がいらっしゃれば、是非ともご教示いただきたくお願いします。

日本パイプクラブ連盟事務局では、スミソニアン協会に、この刻印部分について問い合わせをしてみます。
もし返事があれば、続報として結果をご紹介します。

余談ですが、アインシュタイン博士とパイプの写真をインターネット検索すると、数多くの写真が残っています。
博士は若い頃からのヘビースモーカーでしたから、当然、数多くのパイプを愛用したことでしょう。集めたパイプもたくさんあったに違いありません。博士の没後、ほとんどが散逸してしまったようです。
調べているうちに分かったことですが、博士の遺族が2017年のクリスティーズのオークションに出展したダビドフ社製のブライヤーパイプは推定落札価格が5000〜8000ポンドだったのに対し、なんと5万2千ポンド(邦貨換算で約750万円)の高額で落札されました。それがこれです。

続々編では、アインシュタイン博士が喫っていた煙草の銘柄について調べてみます。

日本パイプクラブ連盟事務局