パイプの愉しみ方
煙草は梅雨時が美味い
マスメディアが煽り立てる武漢コロナ騒動を忌諱して、パイプ煙草と葉巻を大量に持参し、独りしばし山奥の宿屋で隠棲していた。
梅雨時とあって、山登りやハイキングの客は疎で、小さな宿屋はほとんど私の独占状態である。
日課は、やや遅い朝食後、宿から徒歩20分程の見晴らしの良い尾根に登って、景色を眺めながら数時間、煙草を嗜むことだけ。ウイスキーと日本酒は忘れない。ストレートで飲むのも良いが、宿屋の主人に魔法瓶に詰めて貰った氷水で水割りを作り、煙草をふかしながらチビチビと飲めば至福の境地に至る。
愛煙家なら、大半の方が首肯するだろうが、煙草の美味さは湿度の高さと爽やかな空気に正比例する。だから日本で一番、煙草の味が芳しい時期は梅雨時であり、空気が爽快なのは高い山の上である。
山の天気は変わりやすいから傘は必携だ。湿った叢に座るにはビニールシートも不可欠。普通のシートよりも所謂プチプチ(気泡緩衝材)が、適度な弾力性があって座り心地が良い。
木陰の叢に居場所を確保したら、まずとっておきの葉巻に火をつける。葉巻のお供にはウイスキーかブランデー。緑に覆われた景色を眺めながら、無想の境地で1時間ほどひたすら紫煙を楽しむ。
葉巻を喫い終えたら、今度はパイプ煙草。冷やした日本酒がたまらない。これは単なる私個人の嗜好。
静寂の中、近くの灌木から聞こえてくる小鳥の囀りが心地良い。
山の上で喫うパイプの煙草は、その時の気分により様々だ。私の好みは黄色葉にラタキア葉やオリエント葉を多く混ぜた英国タイプの味の濃厚なもの。これでまず一服。2時間ほどかけてゆっくりとクールスモーキングを楽しむ。湧いてくる邪念を払い、何も考えないで喫煙に没頭することがパイプ煙草の味を満喫する秘訣だ。
お昼を過ぎてお腹が空いたら、宿で握って貰った海苔巻きおにぎりを2個食べる。これでほぼ満腹。
午後は、米国系の黄色葉中心の軽い味のブレンド葉を嗜む。香料がやたらと多い欧州系のものは、なぜか山の上で喫うのにそぐわないと勝手に思う。
文庫本は持参しない。読書はもう飽きた。
パイプを燻らしながら寝そべってiPadにイヤホーンでクラシック音楽を聴く。曲目は気分次第。歌劇やバレエの全曲を通して聴くことが多い。時折、霧や靄がかかって電波が届かず、聴けなくなるのはご愛嬌。
濃霧の中で独り喫うパイプ煙草は抜群に美味しい。霧に包まれて夢幻の境地というところだ。
雨がやや本降りになる気配がしたら、プチプチシートを畳んで適宜撤収。宿に戻って風呂を浴びて、ビールを飲みながらまたパイプ喫煙にいそしむ。
山奥でこうした日々を過ごしていると、次第に気分が爽快になり、活力が湧いてきた。毎日生きていることが楽しい。コロナ騒動で喧しい俗世間を馬鹿馬鹿しく感じる。
下山して自宅に戻って血管年齢を測ってみたら、4歳若返っていた。
山奥の美味しい空気と煙草と酒の素晴らしい効能だろう。