パイプの愉しみ方

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岡山PC 握り寿司食べ放題体験記

岡山パイプクラブ東京支部 平野憲一郎

猛暑の真っ盛りの8月のある日。

突然、岡山パイプクラブの香山会長から連絡があった。
「今度、東京築地の老舗の寿司屋で土曜と祝日に定期開催している握り寿司の食べ放題を体験するため上京するから、付き合わないか」というお誘いだ。
なんと4000円で、お好みの寿司を食べ放題。回転寿司ではない本物の高級寿司店だという。

愚生、江戸前の寿司は大好物だから、二つ返事で話はすぐ纏まった。予約は先着順だそうで、朝早くから並ばなくてはならないそうだが、そこは万事に手筈が良い香山会長のこと、東京支部の若手のM君に順番取りを依頼済みという。

午前10時半に地下鉄日比谷線築地駅の改札口に集合。香山会長と岡山パイプクラブ東京支部の5名に、準会員格のSさんの計7人のパイプ喫煙愛好家が集まった。食べ放題に備えて皆、朝ご飯は当然抜いており、気合十分だ。香山会長は前夜に新幹線で上京、夕食も抜いてお腹ペコペコとの由。

順番取りの大役を任されたM君は早起きして早朝6時過ぎに店の前に並んだそうだが、既に先客がいたそうで予約順位は4番。8時頃に予約表に代表者の名前と参加人数を記入して、一旦、門前仲町の自宅に帰って一休みしてからまた来たという。こういう腰の軽さが必要な役どころは、やはり若手でないと務まらない。一同、M君の労に深く感謝するのみ。

寿司屋の開店は11時。その前に軽く一服しようということになり、近くの公園の脇に中央区役所が設置した喫煙小屋を訪ねた。ところが定員8名程度の喫煙小屋は既に先客でほぼ満員状態。タクシーの運転手さん達が、公園脇に一時停止して、朝の一服を楽しんでいた。満員で入れないので、やむなく喫煙小屋の入り口あたりで、パイプに火をつけようとすると、公園の草叢から藪蚊が次々に襲来してくる。虫除けスプレーを持参すれば良かったと思ったが、そこまでは流石に気が回らない。

自治体の担当者諸君。喫煙部屋を作ってくれるのは、一応良しとするが、作るならもっと大きな喫煙部屋を作って貰いたい。君たちは需要予測を何もしないで、形だけ喫煙部屋を作っているが、大体どこの喫煙部屋もいつも満員か大混雑ではないか。公園や道路で喫煙しないで欲しいというから、紳士たるもの大人しく協力してわざわざ喫煙所に行っているのに、そこが狭くて満員なら、道路や公園で喫煙するしかなかろう。違うかね。

それはさておき、藪蚊襲来に辟易している内に11時開店が近づいたから、皆で寿司屋に赴く。店先で既に数十人が屯している。待っていると、店の女主人さんが顔を出して名前と人数を呼び上げて確認、幸いなことに第一陣として入店できた。

長いカウンターに、大きな笹の葉に握り寿司6貫が間隔を置いて並べてある。中トロとハマチ、マグロ赤身、雲丹、イクラ、ネギトロの軍艦が、それぞれ6個ずつ。二人一組でまず召し上がれということらしい。私は香山会長と同じ組で座る。見ると、カウンター前の細長いガラスの冷蔵室には、本日の食べ放題用の寿司ネタ類がてんこ盛りでぎっちり詰まっている。仕込み作業は大変だったろうと思った。

用意されたコースの寿司をあっという間に食べ終えたところで、隣の香山会長が「雲丹!」と威勢よく注文した。目の前の職人さんが握った雲丹の軍艦巻き1貫2個がささっと出てくる。二人で分けて1個ずつ素早く食べる。

高級寿司店らしく実に美味しくて、ネタも新鮮で上等だ。シャリはやや大ぶりだが、食べ放題の日だから当たり前だろう。香山会長はまた「雲丹!」と掛け声。雲丹が大好物だ。私も大好きだから、出てきた雲丹軍艦を黙って食べる。

香山会長は、回転寿司の大手有名全国チェーンの岡山店が、「雲丹食べ放題」の宣伝をしていたので、喜んで初日の朝一番で食べに行ったところ「売り切れ」と言われて激怒したそうだ。新聞やテレビにも先頃、大きく非難報道されていたからご存じの方も多かろう。食べ損なった雲丹を取り返そうとの勢いだ。

カウンターのあちこちから「大トロ」、「カニ」、「ホタテ」、「エンガワ」などと次々に注文が続く。どれも高級ネタばかり。岡山PC東京支部の面々も負けずに、お好みで次々に注文する。私も「エンガワ」を一度だけ注文したが、他は香山会長任せ。

職人さんも心得たもので、さっと握って出す。食べ放題は90分制限だが、30分もあれこれ食べ続けると、流石に腹八分になり、注文のペースが緩やかになる。すると職人さんが適当に高級ネタを握って「欲しい人は」と声をかけると、さっと手が上がる。客と職人さんとの四方山話も駄洒落が飛び出して楽しい雰囲気だ。

香山会長も「雲丹」は流石に飽きたのか、今度は「大トロ」を連続注文。私も黙ってお相伴。昨夜の晩ご飯抜きの食欲は見上げたものだ。とはいえ小一時間で30個程度も平らげると、流石に満腹となり箸が進まなくなった。上がりのお茶を女給さんの愛くるしいスペイン婦人が運んでくるのもなかなか乙だ。

最後に、香山会長が締めで「雲丹」を頼んで、本当に満腹。約1時間で、食べ終わった。勘定はきっちり一人4000円と実に格安だった。店を出ると、第二陣、第三陣を待つ客が大勢待っていた。人気店だということが分かる。

築地駅で解散してそのまま帰宅。
この日は晩ご飯抜き。 私は一流店での寿司の食べ放題は初めての経験だった。機会があれば、またM君にご足労をお願いして岡山PCの面々と一緒に挑戦したいが、そうでなくとも気軽に普通に訪れたい寿司店でした。