パイプの愉しみ方

パイプの愉しみ方

偽物ダンヒルパイプにご用心

日本パイプクラブ連盟副会長 岡山パイプクラブ会長 香山 雅美

先日、近所のインポートショップに行った。

ここは輸入商品中心の店で、数は少ないがパイプやパイプタバコを扱っているのと、大きな駐車場があるので時々出向く。

たまたまある方が店員にご自慢のダンヒルパイプを見せて、この店もこのレベルの良いパイプを売るように頼んでおられた。

初対面だが、パイプ仲間にぜひ加わって頂きたいので、声を掛けて近所の喫煙自由の喫茶店に誘った。

パイプ愛煙家は一種の絶滅危惧種だ。世間で何かと白い目で見られることも多いので、仲間意識から普通はすぐに仲良しになる。

コーヒーを飲みながらパイプ談義に花が咲き始めると、彼はご自慢のパイプをおもむろに披露して下さった。

その時、持っておられた8本のダンヒルパイプのうち半分の4本が偽物だとすぐに気付いた。

どこで入手なさったのか伺うと、インターネット上でオークション形式の売買を仲介する●●●●や、主に個人間の売買を斡旋する○○〇〇。日本中の誰でも知っている二大通販サイトで購入したとの由だった。

聞くと、パイプ喫煙を始められてまだ数年とか。パイプ喫煙の奥深さが次第に分かってこられる頃だ。

半世紀の間パイプをひたすら喫い続け、その間、数万点以上のパイプを手に取ってきた私からするとまだ入門者レベルの方だが、先輩面をするつもりは全く無い。良きパイプ仲間の後進を増やしたい気持ちだけだ。

彼のプライドを傷つけるのは本望ではないので、パイプクラブの楽しさを紹介し、再会を約しただけで、帰路についた。

その夜、気になって●●●●を覗いてみた。出品されたパイプの中に偽物だと推定できるものをいくつも見つけ、驚いた。

個人の優雅な趣味であるはずのパイプ喫煙の世界まで、人を騙す偽物パイプが横行しているのか、と正直愕然とした。

パイプ仲間に警鐘を鳴らさなければならない。

 

ネット上で堂々と売られている偽ダンヒルパイプの多くは、長年のダンヒルパイプ愛用者はすぐに分かる程度の偽物だ。

ダンヒルパイプにあまり執着がない方でも、ベテランのパイプ喫煙愛好家なら実際に手に取ってみると「なんだかおかしいな」と気付くと思う。

ただパイプ入門レベルの方は、本物をたくさん手に取った経験がないので、騙されやすいだろう。ましてネット上の写真だけでは判定は難しい。

一体どこの誰が、偽物ダンヒルパイプをわざわざ製作しているのだろうか?

恐らく、偽物造りで悪名高いあの国の人あたりではないかと想像できるが、ダンヒルパイプが数多く流通しているのは欧米諸国だ。あちらの方の人もいるかもしれないし、恐らくいるだろう。

日本の有名通販サイトに数多くの偽物ダンヒルパイプが登場しているところをみると、悪い日本人も偽物造りに加担している恐れが大きい。

この日本パイプクラブ連盟のホームページの読者の方々に、偽物ダンヒルパイプと思われる具体例を写真で紹介し、簡単な見分け方をお伝えしたいと思う。

実は最初は、真贋判定の基準に加えて、詳しいコツとノウハウを読者に全てご教示したいと思った。

ただ、真贋判定の詳しいコツやノウハウまでこのホームページ上で詳しく公開すると、偽物制作者がより精巧な偽物、本物そっくりの偽物を作るかも知れない。悪い日本人がもし加担していたら、真贋判定のコツやノウハウがこのホームページを通じて偽物製作者に筒抜けになりかねない。

だから、残念ながら、詳しい真贋判定のコツとノウハウは日本パイプクラブ連盟の会員、つまり全国各地のパイプクラブ会員のみに限定して、私が直接会って教えざるを得ない。会員ならば身元が全員分かっており、入会審査があるパイプクラブ会員に偽物造りに加担するような卑しい人物はいないと信じるからだ。

 

ここでは、ダンヒルパイプについての一般常識と、その常識からして偽物だと容易に推定できるネット通販上の写真例だけを紹介しておく。

英国にはパイプメーカーがいくつかあるが、一番有名なのがダンヒルだ。ダンヒルパイプは、マウスピースにつけられているホワイト・スポットが有名で、ブライアーの材質と高度の製作技法にこだわった高級パイプとしての名声をほしいままにしてきた。

ダンヒルパイプは他のパイプメーカーの様に様々なクラスを設けず、ストレートグレインのDRとレギュラークラス、特殊クラスだけだ。

ダンヒルパイプの特徴の一つにシャンクに押された克明な刻印がある。その刻印を見れば、そのパイプが何年に製造され、何の種類かが分かる。

その為、同じ種類だが、異なった製造年のパイプを集めるマニアの方が多くいる。実は私もその一人だ。

 

偽物はホワイト・スポットと刻印を悪用している。ホワイトスポットでの真贋判定は余程の粗悪な偽物以外は難しいから、まず刻印に注目されたい。

西暦年号は「MADE IN ENGLAND」の後の数字で表記されている。
1960~1969 00~09
1970~1979 10~19
1980~1989 20~29
1990~1999 30~39
ここまでは数字の下にアンダーバーがあり、アンダーバーまでの高さがMADE IN ENGLANDと同じ高さだ。
2000~2008 00~08
2000年からは数字の下のアンダーバーが無くなった。
以下の6枚の写真のダンヒルパイプの刻印は偽物だと推定できる。

 

 

最後の6番目のパイプは良く似せた偽物と推定する。ベテランのダンヒルマニアでないとなかなか見分けが難しい。

偽物と思しきものばかり見せて本物を示さないと、入門レベルの方は違いが分からないだろうから、ご参考までに3本ほど本物のダンヒルパイプの刻印を紹介しておく。

 

 

もし刻印で判断が出来ないくらい精巧な場合は、ボウルで判断して頂きたい。

特にサンドブラストの場合、その品質の違いは歴然だからだ。以下の2つの写真は偽物だと推定する。

 

 

本物のサンドブラストを3本ほど、ご参考までに紹介しておく。

 

 

違いが分かっただろうか。

 

読者の方々にダンヒルパイプについて、ご教示したいことはまだ色々あるが、今回はこのくらいにしておく。

何かダンヒルパイプについての一般的常識の範囲内でのご質問があれば、日本パイプクラブ連盟事務局まで住所・氏名・勤務先と役職及び連絡先電話番号とメールアドレス併記でメールで寄せられたい。メールの文面を読んで、お答えすべきものと判断したらお答えする。

ただし、個々のパイプの真贋についてのお問い合わせは一切お断りする。本当に知りたければ、地域のパイプクラブに入会審査を経て入会して日本パイプクラブ連盟の会員となり、仲間から一定の信用を得てからにして頂きたい。その場合は、喜んで私の真贋判定のコツとノウハウも伝授する。