パイプの愉しみ方

パイプの愉しみ方

なごやかパイプクラブ訪問記

日本パイプクラブ連盟副会長 岡山パイプクラブ会長 香山 雅美

 

 

友人から「香山さん、国際パイプスモーキングの日(IPSD)に、名古屋に行っていたの?」と聞かれました。

そうなんです。

名古屋のなごやかパイプクラブが国際パイプスモーキングの日(毎年2月20日)より一足早く2月17日(土)に開催した例会に招待され、私をはじめ岡山パイプクラブの一行5名が参加させて貰いました。

 

世界中のパイプ喫煙愛好家が世界平和を祈念して仲間で集まってパイプ喫煙を楽しむIPSDの催しは、2月20日だけに限定せず、世界各地のパイプクラブの日程の都合に合わせていつでも開催可と言うおおらかなものです。IPSDの催しを発案した国際パイプクラブ委員会(CIPC、本部パリ)らしい粋な計らいです。なごやかPCは今年、会員が参加しやすい土曜日の17日にIPSDに合わせて例会を催しました。

 

敵味方に分かれて互いに戦っていた双方が和睦する際には、席に着いてまず煙草を勧め合って一緒にゆったりと一服するのが、古来より人類の慣わしでした。敵愾心と相手に対する不信で昂っていた気持ちが煙草により次第に落ち着き、穏やかに和平に向けた話し合いが始められるからです。アメリカ原住民の慣習が発端と聞きますが、この良き習慣は近世になってヨーロッパ諸国やアジア諸国にも広がりました。つまり喫煙とは平和への誘いの象徴だったわけです。21世紀になっても人類は戦争をまだ続けています。CIPCは加盟する各国のナショナルクラブに、国際パイプスモーキングの日を設けて各国のパイプ喫煙愛好家が集まって共に平和を祈念しようと呼び掛けました。これがIPSDの発端です。今ではこの催しは世界各地のパイプクラブとパイプ仲間に着実に拡がっています。

 

さて、日本パイプクラブ連盟傘下のパイプクラブが全国各地に30余りあります。東京を中心とした関東圏の各クラブは、距離が近いので会員が他のクラブの例会にゲスト参加することがよくありますが、遠隔地のクラブ間の交流は残念ながらあまり活発とはいえません。毎年秋に開催している全日本選手権大会や、様々な事情で不定期開催が多くなっている地方大会で久しぶりに顔を合わせて交流するケースがほとんどです。

 

今回、私たち岡山パイプクラブの面々が勢揃いして、なごやかパイプクラブの例会にお邪魔したのは、遠隔地のパイプクラブ同士が自然に横の繋がりを拡げていくきっかけに出来ないかと言う私のちょっとした思いつきからでした。

 

幸い、岡山パイプクラブはフットワークが軽快なメンバーばかりです。私が「もしその日が空いていたら、一緒に名古屋に行かないか」と声を掛けると、皆さん二つ返事で乗ってくれました。

 

なごやかPCには昨年のルーマニアでの世界選手権大会に日本パイプクラブ連盟派遣の日本代表として参加した小森さんがいます。そこで同じ日本代表チームの一員だった日本パイプスモーカーズクラブ(JPSC、東京・銀座)にも声を掛けました。残念ながら青葉さんはGUN ROOM of TOKYO(東京・渋谷)のIPSDの例会に参加との由で、日本代表チームのメンバー揃い踏みとはなりませんでしたが、田崎さんが参加して下さいました。

 

我が岡山PCからは同じく日本代表チームメンバーだった宮川さんと不肖私香山、それに宮林さん、杉田さん、丹羽さんの5名。私以外の4名は岡山PC東京本部の会員です。昼に時刻を決めて名古屋駅太閤通り口を出たタクシー乗り場の先の喫煙所で落ちあうことにしました。

 

嬉しいことに、なごやかPCの仲間が夜開催の例会の前の時間潰しにとの心遣いで、名古屋の煙草ショップと煙草を喫える店を紹介してくれました。全員揃ったところで、タクシーで向かったのは「スモーキングショップ フナハシ」。

 

 

ご存じの方も多いと思いますが、50年以上パイプ煙草を扱っておられる名古屋の老舗煙草店です。私は先代の店主とは40年来のお付き合いで、「遊びにおいで」と言われていましたが、なかなか行く機会が無く今回が初めてでした。

 

お店には第3回からの全日本選手権の大会使用パイプや、世界選手権大会の使用パイプ、多くのパイプ関連の方々との写真が展示され、煙草店と言うよりまるでパイプ博物館といった雰囲気で、眺めているうちに様々な懐かしい思い出が蘇りました。

 

岡山PCのメンバーが「こんな物がありますよ」と指差したのは、ダンヒルのシガレットホルダー。ダンヒルマニアで鳴らす私への心遣いです。勿論、値段を聞かずに即決で購入。開封して値段を見ると、昔の消費税5%の頃の金額のまま、その事を店主に訪ねると、廃盤商品でもう仕入れることが出来ないので昔の金額のままで売っているとの説明でした。それをさらに値引きして頂き、感謝感激です。嬉しくなってお店の品々を注視していると、今は廃番になっている珍品のパイプ煙草を発見。これも価格は昔のまま。勿論購入しました。

 

我々を案内して下さったなごやかPCの会員が吸っているパイプを見た店主が「ちょっと貸してごらん」と店の奥に引っ込むと、マウスピースをバフ掛けして綺麗にして下さいました。以前は店の裏でハンドメイドパイプを作っていた方がいらしたそうです。東海地区のパイプの普及に貢献して下さった素晴らしいお店だと感服しました。一通り買い物が終わり、タクシーで栄地区に行って煙草が喫える喫茶店で楽しく昼食。洒落た煙草屋さんを教えて頂きました。

 

なごやかPCさんのIPSDの会は、いつもの例会会場のバーで開催でした。既に集まっておられた皆様に「岡山パイプクラブです」と自己紹介したところ、「わざわざ遠くからお疲れ様です」と労われました。そこで私が「私以外の4名は岡山PCの東京本部からです」と説明すると「え、東京ですか」と驚かれた様子。実は岡山PCは岡山本部と東京本部があり、現在は東京本部の方が若手会員が多いこともあって活動が活発です。

 

 

日本一の煙草蒐集家で有名な伊豆の大魔神こと芹澤さんに、なごやかPCさんの例会にお邪魔すると伝えていたところ、「皆さんで喫って下さい」と、専売局当時の貴重なキセル用の刻みの葉を数種類差し入れして頂きました。宮川さんは珍しい紙巻煙草を皆さんに提供。私もダビドフ2019年イヤーコレクションを出せば、小森さんは今年のものを提供。今年のイヤーコレクションは何と17,000円だったそうです。ぼったくりそのものの悪質な煙草課税でパイプ煙草の価格を高騰させる当局の遣り口に憤慨せざるを得ません。平和の象徴の煙草を故意に迫害するのですから、世界中で戦争が増えるのもやむなしでしょう。

 

それは兎も角、出席者の方々が持ち寄った様々な煙草で紫煙を盛大に立ち上らせて、皆で歓談。和気藹々の文字通りの「なごやか」そのものの雰囲気です。バーの片隅にパイプに関する本がずらりと並べてあり、ダンヒル社創業90周年記念出版の英文の本が目に止まりました。滅多にない稀覯本なので尋ねると、パイプ作家として有名ななごやかPCの小坂さんが、昔、シカゴパイプショーに参加した時に購入した本だそうです。他のパイプ関係の本も小坂さんの提供だそうで、パイプの普及に貢献しておられる素晴らしい方だと感銘を覚えました。実は小坂さん制作のパイプを私は4本持っています。どれも美味しく煙草が吸える良いパイプです。

楽しい時間はあっと言う間に過ぎ去り、なごやかPCから岡山の5人と田崎さんにお土産の海老煎餅を頂戴しました。

 

 

2次会は喫煙自由の煙草屋兼飲食店。深夜までパイプと酒で愉快に過ごしました。

なごやかPCの皆様、素敵な時間を提供して頂き、ありがとうございました。