パイプの愉しみ方
パイプの煙 番外編 高雄訪問記 心に沁みたコニャックの一滴
12月12日から3泊4日で、9ヶ月ぶりに台湾・高雄を訪問した。高雄大学での講演がメインであったが、大好きな街なので日々の雑事からも解放され、いい気分転換にもなった。
昼間の気温24度、北風が吹く日本とはえらい違いである。
師走とはいえ、旧正月の台湾は、年末でもせわしい感じがまったくないし、最近ではJAL、ANAが成田から高雄に直行便を飛ばしているので、まことに便利になった。
幸運は搭乗手続きから始まった。「あれ?ビジネスクラスですよ」と声を上げたのは、同行した拓殖大学海外事情研究所・丹羽文生さんだ。
なんとエコノミーが満員でわれわれ2人はビジネスクラスにアップグレードになった。ラッキー。
「うまいうまい」と夕食を機内でいただき、談笑しているうちに高雄の夜景が目に入ってきた。
到着すると、笑顔で仲間が出迎えてくれた。国立高雄大学・東アジア語学科長 邱栄金博士と彼の友人で実業家の蘇振源氏。
「よくいらっしゃいました」と荷物を車に積んでくれ、あっと言う間に宿泊先へ。
翌日の講演も無事おわり、午後遅くから高雄の街へ散策に出かけた。
まずは前回も訪れ、森谷さんのタンパーを忘れてしまった海岸珈琲店(OCEANSIDE CAFE)だ。相変らずの繁盛ぶりで、木製テーブルがいつのまにかガラス製になっていた。
エル・サルバドルなる南米特産コーヒーをすすりながら、乾き気味のラットレーの葉をつまんでいたら、「どうぞ」と蘇さんがコニャックの小瓶をプレゼントしてくれた。
前回訪問したとき、「葉が乾いたら、アルコール、それもコニャックで湿らせるといい」とパイプ仲間の先輩、平野さんのアドバイスを彼に紹介したことを覚えていてくれたのだ。
これには参った。ご好意に甘え、いただいたコニャックを葉に湿らせたが、この一滴は葉よりもむしろ私の心に沁みた。ありがとう、蘇さん。
台湾海峡を眺め、一服吹かす。その瞬間、体の中を涼風が駆け抜けた。
ところで、この夏、台湾で封切られ空前の大ヒットとなった映画「海角7号」をご存知だろうか。日本人と台湾人との恋愛を描いた物語だが、「主演女優の田中千絵は台湾でブレイクした」と各種メディアは伝えている。
日本語、台湾語、中国語の3か国語が飛び交うこの映画の舞台は南台湾の町・恒春で、その地を訪れる観光客の数がすさまじい。
観光バスでロケ地を回るツアーまであるのだから。
翌日、われわれは、この映画の舞台となった南台湾一帯を回った。台湾最南端の地、ガランピーまで車で一気に南下した。
バシー海峡、台湾海峡の両方を見ることができるガランピーは一大名所になっており、大陸からの観光客もチラホラ。
長い海岸線と青い海はカリフォルニアを想起させる。サーフィンもできるし、海を眺めるカフェも多い。
われわれもかわいいカフェで一休み。親友・邱博士とのツーショットもなかなかのもの。4半世紀の付き合いの年輪が、お互い顔にも出てきました。
台湾といえば、今年、ソフトバンクの王貞治監督が引退した。台湾が生んだ英雄は、いまも大変な人気だ。なつかしい現役時代の少年雑誌の写真が載っている絵葉書を高雄の土産店で発見した。「棒球王・王貞治は永遠のヒーローだ」などと思っているうち、帰りの便は追い風に乗って、2時間45分で成田着。また寒い師走の日本に戻ってきた。