パイプの愉しみ方

パイプの愉しみ方

紫煙の行方1

私は愛煙家です。しかしシガレットは吸いません。ゆっくりと愛用のパイプをくゆらせながら、パイプの良さを書きたいと思っています。

マスメディアから連日のように「誰でも良かった」と云う殺人事件が報道されています。世の中が狂ってきていると思われます。自分自身だけで解決出来ることを他人も巻き添えにして事件にしてしまう。現在の社会のゆがみは学校教育の失敗だと考えています。人間の人間としての考え方が欠如しているとしか考えられません。社会の流れが全体的に同じ方向に進んでいるように見えてなりません。何とヒステリックな状態でしょう。

何もかも先が見えていないのに急いで進もうとしています。1分1秒を争っていますが、何が良くてそんなに急ぐのでしょう。また少数の考え方は全部悪という風潮もはびこっています。

しばらく立ち止まり、ゆったりした気分になりませんか。

余裕です。

 

たとえ金銭的に困っていても精神的にゆったりした状態、しっかりした自分の考えを持っていれば解決する方法を思い得ることができるのではないでしょうか。

特に煙草についての議論は「タバコは悪である」という考え方が「禁煙運動」として拡がり公共施設、飛行機の中で、ホテルの中で、あげくの果てはタクシー内で……。 しかし煙草にも良いことが沢山あるのですよ。それをここで書いてみたいと思います。心の中は何となく複雑なのですが。

 

私は婦人科の医師です。40歳からお産はやめて25年になります。専門分野は婦人科の癌の早期発見で現在も心血を注いでいます。45年前に大学の研究室では子宮頸癌の早期の状態で子宮口に変化が見られ、それから癌に進行することが判っておりました。その原因は色々と考えられていましたが、何から手をつけたらいいのか方法も解りません。

今から20余年ほど前に、癌細胞からウィルスの同定が出来るようになり、子宮頸癌は性行為による人乳頭腫ウィルス(HPV)の感染が原因であることが解ってきました。私のような臨床医にとっては、寝耳に水というか、思いもよらない出来事でした。

その後、研究のスピードは早く、現在では約80種のHPVの作用する場所が解明され、16型、18型が最も危険な型であることが証明されています。

 

その当時から、肺癌とシガレットの関係の研究に携わっていた研究者は数多く、彼らは多大の労力をかけてその関係性を研究してきました。しかし、シガレットが癌の原因であるという証拠(Evidence)は認識されておりませんし、現在においても証明されておりません。何らかの関係はありそうだという程度です。

ですからシガレットを吸うことが癌への促進要因ではあったとしても、シガレットが原因であるということ証拠はありません。研究が始まってから既に半世紀近くたっていますが、明快な証拠はないのです。

しかしながら今度、子宮頸癌の原因と同じように、とんでもない証拠が見つかるかもわかりません。煙以外の原因が発見されることを期待しています。

 

私は婦人科の医師ですので、若い女性と子供のいる所では喫煙は禁止しております。妊婦さんの喫煙は胎児に影響があり、胎児の発育不全、未熟児、低体重児の増加が見られるので禁煙指導をしております。病院の中で禁煙することは当然のことと考えています。人間としてのマナーの問題と思います。

岡山パイプクラブ会長 医学博士 砂山有生