パイプの愉しみ方

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『50にして煙を知る』第19回 ホワイト・エレファント 到着の顛末

「こんにちは、ゆうパックです」。

「これDHLじゃないですか?」

「ああ、すいません。そのようですな。いつもゆうパックしか配達してませんから。まあ、ご本人様ならかまいませんから、受け取りサインをください」。

「あいよ」。

7月30日、酷暑の中、郵便局から届き物である。
梱包にドイツ語が散らばっているから、これは、先日注文した「ホワイト・エレファント」に違いない。なんとたった10日で到着、どう考えても船便ではなく航空便である。

さすがはドイツ人である。恐ろしく速く届いたものだ。
海外に注文したレコード到着を数ヶ月心待ちにしていた70年代とはえらい違いである。

しかし、この小包、税関で「開封」してある旨記されていた。大きな箱に「パイプ・クリーナー」と印刷された品名で税関もナーバスになったのだろうか。有名芸能人の覚せい剤所持が次々に問題になっている昨今、パイプという単語がひっかかったのか、「ひょっとして大麻か、薬物か」と疑われ、一応検品されている。
まあ、開けられても困るものじゃないから気にしないが、当方にとっては、待ちに待ったブツだ。

いささか緊張しながら、箱を開けてみた。

確かに、注文どおりモールが200本入っている透明な円筒がぎっしり詰まっていた。包装紙もなくむき出しで、その様は「なんかトウモロコシみたいだなあ」というのが正直な感想だ。

箱から取り出してみると、ちょうど筒が10本ある。合計2000本もあれば、いくら私でも当分は持つだろう。

 箱の中は、本当に注文した商品のモールだけしか入ってない。
「日本のパイプ用品店ならチラシを入れるとか、サンキューぐらい書いたカードが入っていて、リピーター狙いをしてもおかしくはないじゃないか。

ほんと、愛想がないんだから」と、ぶつぶつ言いながら眺めていたら、手伝ってくれた仲間も同じ感想を持ったらしく、

「モールは同じものだけど、幻のホワイト・エレファントとして、シャレた袋に入れたのは、きっと日本の業者だね。むきだしの円筒じゃ、購買意欲もわかない。懸命に探したのに、これじゃほんとにただのトウモロコシだ」

そうだ、そうだ。このまんまじゃ、あまりにも愛想がないじゃないか。あの袋は空になっても捨てずに残してあったから、入れなおしてみた。やはりこれです。立派じゃないか。

さて、この円筒モールの感想を改めてスモーカーたちに確かめてみた。
「モール?よくわかりません」の梶浦さんは「僕は年に3本ぐらいしか使わないからねえ」―やはり関心なしか。

「まったくこだわりなし。モールなんか使わないもの。こだわっているの、小枝さんぐらいのもんだろ」あれだけタンパーに凝っている世界唯一のタンパー作家・森谷さんにしても、この冷淡な反応。
「まあ、彼がそこまで言うなら試してみるかね、5、6本もらっとくね」という親切なスモーカーも、いるにはいた。

幻のホワイト・エレファントにふりまわされていたのは、どうやら私だけだが、使いやすさはやはり抜群だ。

千葉科学大薬学部教授 小枝義人