パイプの愉しみ方

パイプの愉しみ方

紫煙の行方2

岡山パイプクラブ会長 医学博士 砂山有生

さて、皆様方はタバコといえば何を思い浮べますか?
おそらくシガレット(紙巻タバコ)だと思われます。
日本では、シガレットもパイプタバコも葉巻も刻みタバコも皆煙草なのです。

タバコ擁護のために沢山の外国の文献を取り寄せ読んでみますと、肺癌との関係、循環器との関係、全部がシガレットとの関係であって、パイプタバコとの関係については記述されたものはありません。

約20年ほど前でしたか、英国の保険会社が生命保険の契約にあたり、シガレットを常用している人は保険料が1割アップ、以前シガレットを吸っていたが,今はやめている人とパイプ常用者は保険料変わらず、吸わない人は1割ダウンの保険料で契約出来るという契約条項があることを知りました。現在はどうかわかりませんが。

新開の片隅には記事として載りましたが、「タバコ」という曖昧な言葉でした。
日本語は非常に織細に表現出来る言葉ですが、時に曖昧さを残す言葉でもあります。
ですから翻訳すると曖昧になり、シガレット、即ちタバコとなってしまいます。
「Relation of Lung Cancer and Cigarettes」の英文は、「肺癌とタバコとの関係」と日本語に翻訳されます。

なぜ、「肺癌と紙巻きタバコとの関係」とならないのでしょうか?

実際、自分を含めて何となくパイプの方が安全と考えているのでしょう。

欧米の医師は、シガレットの禁止を患者に指導しながら,本人はパイプをくゆらせているのが、現状です。

私は病弱なため、色々の先生方に診察を受けていますが、この先生はシガレットを吸わないだろうと思った先生がお吸いになるのをみて、半分安心したり、がっかりしたりするものです。

私はお酒が全然飲めません。
当然のように何か他のものに興味を持つようになります。
自信を持って言える趣味というよりは、道楽といえますが、パイプ喫煙、パイプコレクション、カメラ(写真)、ゴルフです。<

パイプの楽しみとは何なのでしょう。

まず紫煙をくゆらすこと。最高の時間(リラックスタイム)であり、疲れた頭の思考回路を復活させてくれます。肺まで吸い込まないパイプタバコの中のニコチンは口腔粘膜からある程度吸収され、脳血管に働くものと思われます。

パイプスモーキングは気分がリラックス出来ること。時、場所、食事、気分、友との語らい等、パイプ並びにパイプ煙草を毎回でもチェンジ出来ることにあります。

その上パイプの形が吸いやすい、バランスがどうだの、パイプの景色がどうだの、自分に似合ったパイプを探し歩いたりし、ショッピングの楽しさも加わり、仲間でパイプについて品評会をしたり、ロングスモーング(長時間一定量のタバコを途中で消さずに吸い続け、一番長時間吸った者を優勝者とする)を試みたり、挙げ句の果てにはパイプの手作りをしたりして大変楽しいグループができあがります。

そして出来上がったのが岡山パイプクラブです。僭越ですが、私は35年間も会長を務めています。パイプ好きな者の同好会なのです。趣味の集まりなのです。周りからは変り者の集まりだと酷評されてはいますが……。当然マナーはしっかりしています。

シガレットを吸っておられる多くの人の意味合いは何なのでしょうか。習慣、リラックス、口が淋しいから、とか特に何らの主義主張はなく、ただ何となくというのが本音でしょう。

ですから、もっぱらニコチンの量がやれ1mgだとか、タールの量がどうだこうだとか、我々にとってはまったく枝葉末節のことばかりで、辟易いたします。

昔は、両切りピースの缶入りは香りもよく、旨かつたとおっしゃる方が多いのですが、なぜお止めになったのでしょうか?

結果ははっきりしております。タバコの成分のなかにタールは多いし、発癌物質があり沢山吸うと肺癌になるという説(実際に患者は増加しています)が、医療関係者、衛生関係者、マスコミの大攻勢により一般化しているからです。

ここでも「タバコ」という曖昧な表現をやめていただきたいと思います。
なぜ、きちんと「シガレット(紙巻き煙草)」と書いて頂けないのでしょうか?

日本のマスメディアはそのあたりの感覚が希薄です。