パイプ座談会
パイプの葉 座談会 その1
司会: 本日は日本パイプクラブ連盟(PCJ)事務局主催のパイプ座談会にご多忙の中、ご出席下さいましてありがとうございます。この座談会はPCJ事務局で長らく企画を温めていたものですが、なかなかこれはというメンバーがそろわず延び延びになっておりました。
本日は、皆さん方が心から愛するパイプ喫煙の葉っぱについて、蘊蓄(うんちく)を傾けて頂くと共に、忌憚(きたん)のない議論をして頂きたく考えまして、東京・銀座に活動拠点を置く日本パイプスモーカーズクラブ(JPSC)所属の平均パイプ喫煙歴30年から40年以上を誇る古強者の梶浦、外川、森谷、の三氏に、最近シガー党からパイプに転向してはまりこんでいる松尾氏も加えて、お勧めの煙草の葉を持参して貰いました。四氏ともにパイプ喫煙に関しては一家言も二家言もお持ちで、いずれも歯に衣着せぬ言動で知られる猛者でございます。
なお、司会は女だてらにJPSCの末席を汚すQ子です。不行き届きの点や失礼な言動がございましても、ごめん遊ばせ。
それではよろしくお願いいたします。(一同、神妙に会釈)
梶浦: 今日はいいのを持ってきたよ。(と、ホルベックのパイプを披露)
外川: (大声で)ホルベック? ホルベック? 勿体ないよ。梶浦さんには似合わないな。よし、これで梶浦さんがホルベックを持っているのを確認したからな。(冒頭から、司会進行を無視して掛け合い漫才調で、JPSCの内輪話がひとしきり続く)
Q子: (おもむろに咳払いして)それでは、まずパイプ煙草の葉について、初心者向けに語って頂きましょうか。まず、長老の梶浦さんからお願いします。
梶浦: まあ、煙草の葉っぱの定義で言えば、一番初心者向けに解説すれば、大きく分けてこういうフレーバー系か(煙草缶をユビ指しながら)、ラタキアの入った臭いがきついのかの、そのどちらかだよね…………
外川: (興奮した口調で、梶浦氏の発言を遮って)あのね。いいですか。Q子さんがまとめるわけだから、まず先に葉っぱの説明を入れた方がいいね。それからパイプ煙草というのは基本的にブレンドされたウイスキーと思ってもらっていい。だから森谷がやっているんだけれども、バージニア葉とここにあるマックバーレンの一番か何番か知らんけれども、マックバーレンを混ぜようと考えるのは、基本的に間違いなんだよね。
これ、基本的な話ね。(何故か、最初からハイテンションです)
Q子: ふーん。アハハハハ。(困った様子で)
外川: だから、ブレンドとブレンドを混ぜて飲もうというのは邪道(※)なんですよ。パイプ煙草の銘柄は基本的に完璧に出来上がっていて、それがパイプ煙草の基本なんですよ。その100%出来上がっているのを混ぜ合わせようというのは邪道なんだよ。(口から泡を飛ばす)
※タバコの葉っぱの専門家によると、ブレンドとブレンドを混ぜ合わせるのをマイナスのブレンドというそうです。(Q子のミニ蘊蓄情報)
森谷: シングルフレークもあるけどね。(と異論を挟む)
外川: それは別。別の話。それを知った上で自分なりに混ぜ合わせて遊んで貰わないと、間違いが起こるよ、ということね。香水と香水を混ぜても意味がないだろ。ブレンド・ウィスキーと………
松尾: (外川発言を引き取り)ブレンド・ウィスキーとブレンド・ウィスキーを混ぜても意味がない。(と援護射撃)
外川: (松尾氏の賛同に、頷きながら)俺は香水のことはよく知らないが、シャネルの五番と何とかの何番かを混ぜたら、おかしくなるだろ。
森谷: (外川発言を無視して、おもむろに)煙草を吸って楽しいと思う以上、何かその匂いが好ましいと思って吸っているわけだよね。特にパイプ煙草の場合はね。だから……
梶浦: (話を遮り)匂いじゃなくて、香り。(と、茶々を入れる)
森谷: まあ、同じだけど……。
梶浦: Q子さんが、頷いているよ。
森谷: まあ、それは人によって違うんだけど、それを追及するにはどういう葉っぱを吸ったらいいかというのが葉っぱの選び方だね。本当に人によって違うんだよね。
梶浦: だから、基本の考え方として香りを楽しむ訳だから、どういう種類の香りがあるかということをまず話し合いたいね。だから初心者向けに葉っぱの種類を大きく分けて話し合った方がいいんじゃないかと……
森谷:とっつきだとね、シングルリーフの葉は燃え方でいい香りがしない場合があるから、香りを加えた葉を混ぜた方がいいかもしれないね。
梶浦: やはりね、フレーバー系と、ラタキアが入った系統とは、その二つにパイプ煙草は大別されるんだよ。それでまあ、フレーバー系が好きな人と、煙草はラタキアが入ってコクが無くちゃ嫌だという人と別れるわけだよ…………
森谷: (梶浦発言を聞き流しながら、卓上の煙草缶を指さして唐突に)これ? この缶空けてもいいの? オリエント葉は、缶を空けたときしか、臭いがしないんだよ。
梶浦: 芋焼酎みたいなもんか。 (話を元に戻して)要するに、それによって好みが違うわけだ。
外川: じゃあ、まずね。要は初心者向けの座談会ということだから、初心者に我々が勧める煙草の葉は何か、我々は何を吸っているか、まずそこからいこうよ。(ようやく本題に入り始める)
梶浦: 最初はね。あまり臭いやつじゃない方がいいんじゃないかと思うね。
松尾: ラタキアじゃない方がいいね。
外川: ずばり、銘柄で言ったらいい。俺はアンフォーラがいいね。
Q子: (意外な表情で)アンフォーラ?
外川: そう。アンフォーラのフルアロマ。
梶浦: アロマとかいてある葉っぱは、大体、甘くて香りが優しいやつだ。(と解説)
外川: 今は無くなりましたけどアメリカ系より、ヨーロッパ系の方が最初は吸いやすい。
梶浦: ボルクムリーフも美味しいよ。
外川: ボルクムリーフはいいね。アンフォーラかボルクムリーフあたりを最初に吸えばいいね。ボルクムリーフは三種類か四種類あるけれども、どれでもいいや。
梶浦: JPSCの人はあまり吸わないけどね。世の中では、このキャプテンブラックは結構、流行っているんだよ。森谷さん、このキャプテンブラックをちょっと吸ってみて。(と勧める)
森谷: (パイプに詰めて、火をつけてみて)うーん。やっぱり甘い香りがするね。
松尾: キャプテンブラックはシガレットになっているじゃないですか。だからシガレットでキャプテンブラックの味を覚えてパイプで吸ってみようかと………
梶浦: シガレットがあるの?
松尾: シガレットがあるんですよ。もう随分前からありますよ。
梶浦: だからね、アンフォーラとボルクムリーフと、これ、キャプテンブラックなんかがごく一般的な始まりだよね。(この後、本日の議題には関係ないJPSCの内輪話がしばらく続く)
冒頭から、司会進行を無視した荒れ気味の座談会の展開になっておりますが、同じパイプクラブの気心が知れた仲間内ということもあって、四氏の舌は頗る滑らか。パイプに関する深い蘊蓄を背景に、気合いの入った本音の掛け合いがまだまだ続きます。続きをお楽しみに。Q子