パイプ座談会

パイプ座談会

パイプ座談会 六本木ローデシアンパイプクラブの巻 1

司会(Q子):  この度は日本パイプクラブ連盟(PCJ)主催のパイプ座談会に、ご多忙の中お集まり頂き、ありがとうございます。今回の座談会は、東京・六本木を拠点に活動している名門クラブ、六本木ローデシアンパイプクラブをパイプ愛好家の皆様方にご紹介する目的で企画しました。今回の会場には六本木パイプを代表する凄腕のスモーカーの面々がお集まりです。クラブの歴史やどういう活動をなさっているかなど、ご自由にお話下さいませ。司会は、不肖、Q子が務めます。 それでは、まず、皆様方のパイプ歴から伺いましょうか。 (どこからともなく「高校生の時!」との声が聴こえてくるが、司会者は無視して) まずはクラブ創設者の高橋さんから順に御願いします。

六本木ローデシアンパイプクラブ 座談会メンバー

高橋:  私はタバコ屋をやっていますので、パイプを吸い始めたのは、30年以上になりますかね……。

久保:  (話を横から遮って)店長(註;高橋氏は店長の愛称で呼ばれている)、30年ということはないでしょう。僕だって40年以上吸っているんだから!店長は何歳でしたっけ、還暦を先日迎えられたのかな??

高橋:  今、69歳だから20歳から始めたとしても、49年ですかね。

久保:  そうでしょう? じゃないと、計算が少し合わないもの。何もパイプ歴をサバを読んで少なく謙遜することはありませんよ。

Q子:  (不規則発言には動ぜず、すまし顔で)パイプを始められたのは何歳の時からですか?

高橋:  やっぱり紙巻タバコよりパイプが後だね。

Q子:  そうですか。パイプ界の生き字引みたいな高橋さんでもパイプはシガレットより後ですか。

高橋:  そうです。でもせいぜい40年くらいかな。はじめは何でも吸っていました。葉巻もね。

Q子:  今はパイプが主ですか?

高橋:  今はパイプと紙巻きが半々かな。個人的にはパイプの方が好きだからね。店でいつも咥えてるってことは、やっぱりパイプを吸う時間が一番長いかな? 紙巻きタバコを吸いながらだと、お客さんに失礼じゃないかという気がするけど、パイプならば良いかなと……。パイプだったら失礼にならない感じだね。 このクラブが出来た当初のメンバーは、実は店に来ていた人たちなんです。パイプクラブが出来たのは、私の店に当初アルバイトにきていた何人かが集まって始まったのがきっかけです。

Q子:  六本木ローデシアンパイプクラブの創立はいつ頃ですか?

高橋:  日本パイプクラブ連盟(PCJ)創立の時の昭和49年と同じ頃です。だから全日本パイプスモーキング選手権大会の5回目の大阪大会の時からだったね

久保:  銀座を活動拠点にしているJPSC(日本パイプスモーカーズクラブ)が、全国各地のパイプクラブを束ねた全国組織の日本パイプクラブ連盟を作るので、六本木でパイプ好きが集まってパイプを吸っているなら、クラブをつくらないか、連盟が色々と援助するからということで始まったんです。

田中:  全日本選手権大会には、六本木クラブは第5回の大阪大会から参加しています。個人としての参加は第1回目からだけどね。第5回は初出場で団体戦3位、第6回は団体戦2位、第7回目に初めて優勝しました。

高橋:  店のアルバイトの方とか、当時、近くにあった防衛庁にお勤めのパイプ党の方とか、日本専売公社(現JT)の社員の方とかを入れてクラブを創設しました。

Q子:  例会の場所は高橋さんのお店ですか?

今井:  その頃は殆どお店ですね。

田中:  私はパイプタバコの葉っぱを買いに行って、高橋さんに勧められてスカウトされた訳。当時、勤めていた防衛庁の職場から歩いて10分だものね。

高橋:  他のパイプクラブと比べると、うちのクラブはロングスモーキングに重点を置いていましたね。JPSCなんかは、当時はパイプ好きが馬鹿話をしに集まっていたという感じだったけどね。

Q子:  六本木さんは、熱心で真面目なクラブだったんですね。

久保:  そう言われたから、そういうものだと思っていたのですよ。

田中:  昨年の第34回の青森大会では、団体戦優勝が7回目です。徳島パイプクラブに並ぶトップの成績です。(と、鼻高々)

Q子:  田中さんがパイプをはじめたきっかけは?

田中:  20代の頃で船に乗っていた時、親父の土産にパイプを買っていったんです。そしたら、親父が吸わないから、俺が吸っちゃったということになった。

Q子:  それがパイプの始まりですか?

田中:  そう。24歳の時かな。

Q子:  親孝行ですね。

田中:  パイプを土産にしたのはね、ハワイで、えらく格好いいパイプを見つけたから。 それなのに、親父は全く吸わないのね。「なかなか火が着かないぞ!」とか言って、パイプを焦がしちゃっているの。私の郷里は田舎なので、炭があるんです。竈の炭をパイプにいれて、凄い火種をつくっていたらしいから、パイプが焦げたんじゃないかと思うけど。 一同:それは凄い。(と感嘆の声)

田中:  そのうち、その土産のパイプを親父は放り投げてしまって、せっかく買ってきたのにどうして吸わないの。そんなことなら、俺が吸おうかなってことで始めました。

Q子:  お父様は吸い方が分からなかったのですね。

田中:  だろうね。誰も教えなかったから。かといって、俺も知らないから、どうやって吸うのかなと苦心惨憺、試行錯誤してなんとか、火が着くようにはなった。

Q子:  まるでパイプ喫煙の修行ですね。

田中:  でもね、本格的に吸い出したのは、先程のように高橋さんに勧められ、このクラブに入ってから。それまでは他の人と同じようにフレークのネイビーキャップを無理矢理詰めたり、それからプリンスアルバートを買ってきて詰めたりしていました。

今井:  あの辛い葉っぱね。

田中:  それからアンフォーラも。

久保:  あの頃はね、ハーフ&ハーフやプリンスアルバートが流行っていたけど、どれも辛いんだよね、舌が焼けるくらい。なんでこんなものと思いながら、格好良い筈だと自分に暗示をかけて吸っていたんだ。

田中:  私はそれまで紙巻きを吸っていたけれど、本格的にパイプを吸うようになってから紙巻きはやめました。会社で仕事をしながら、紙巻きを吸っていたら、上司に呼ばれて、席を外すでしょ。そしたら、昔のことだから、一生懸命手書きで複写した書類の束に何枚もずーっと焼け焦げの穴が開いていた。パイプだったら、吸わなければ消えるから、大丈夫だからね。 そんなこんなで、パイプ歴は30年位になるかなー。

今井:  私が始めたのは対外的には20歳からかな。私はパイプとシガレットはほぼ同時です。今、55歳だからパイプ歴は公称35年ですね。高橋店長のところでアルバイトを始めて、紙巻きと同時に吸い始めた。店長を真似てハンドメイドパイプを作って店で持っていたら、お客さんになんと2万円で譲ってくれないかと言われたんですよ。その時はとっさに「いや!私が作ったものだから売れません」と断ったんだけど、あの時売れば良かったなー、と悔やんでいます。あの頃は2万円の価値を身に染みて知らなかったからね。

Q子:  なるほど……、勿体無いですね。2万円と言えば、今でもパイプとしてはそこそこの金額ですよね。

今井:  私は家ではパイプは殆ど吸わなくて、店でアルバイトの時しか吸わなかった。本当に吸い出したのは2年前、53歳の時。実はそれまでは、ずっと紙巻き主流だったんですよ。月に一度の例会の時だけパイプというわけです。

Q子:  それは何故ですか?

今井:  紙巻きからパイプに替えたのは、はっきり言って紙巻きの値上げがきっかけです。一箱170円が300円になったので、パイプに替えました。要にお金の問題で計算すると1ヶ月あたり、2千円から3千円は安くなるんだよね。

Q子:  なかなかのヘビースモーカーですね。確かにパイプの方が紙巻きより安上がりですね。

今井:  今は、仕事中は、朝から晩までパイプを咥えっぱなしです。紙巻きは本数を吸っても実際に吸っている量は少ないからね。パソコンだと両手を使うので、手を離しても吸い続けられる、パイプの方が都合よいという合理的な理由もあります。

久保:  とにかくパイプは紙巻きと比べて経済的だよね。 一同:そうそう(と賛同の声)

Q子:  千田さんがパイプを始めたのは?

千田:  田中さんと同じようなきっかけです。親孝行の真似事で1984年の父の日のプレゼントにパイプを購入したんです。それまでは一寸変わった紙巻きを選んでいたのだけれど、当時だから、そんなに高いものでなくてもいいから葉巻を買おうと思って、高橋さんのお店に行ったんです。そしたら、パイプを咥えた高橋さんがいて、パイプの香りが良かったので、葉巻も買ったけど、安いパイプとタバコを買って親父に贈りました。

Q子:  防衛庁の方々は、実に親孝行ですね。

千田:  結果的には親父はハイライトが良かったみたいだな。それまで私はタバコは殆ど吸わなかったけれど、パイプは香りが良くて美味しそうだと思って、真似事で始めて、最初、池袋での東武デパートで関東大会があるよ、と誘われて参加して、クラブの雰囲気も良かったから、今に至っています。

Q子:  いきなりパイプ!みたいなものですね。

千田:  最初は甘いのから始めて、だんだんとアメリカタイプからイギリスタイプへと好みが変わって、今は辛いのが大好きです。ラタキア葉のバルカンが輸入されなくなったので、ダンヒル965とかロイヤルヨット、この二種を主に吸っています。但し、この銘柄の難点を挙げれば香りがいま一つ良くない。あくまで私個人の感覚ですけどね。香りの素晴らしいものはあまり美味しくない。 くさやと同じです。自分は味は美味しいと感じるけれど、周りの人は香りが良くないと言う。

Q子:  パイプの葉っぱの場合は、確かに言えますよね。

千田:  だから、職場ではアメリカタイプの香りの良いやつを吸って、一人の時はじっくりイギリスタバコ。

高橋:  タバコっていうのは自分が吸うのと他の人が吸ったのでは香りが違う。自分はちっとも美味しくなくても、周りの人は「いい香りだね」っていうことが多いね。

千田:  周りの人にはバニラの香りが評判良いです。特に女性には。バニラに限る。バニラは間違いない。

高橋:  確かにラタキアは美味しく感じるけれど、そればかりだとね……

千田:  僕はラタキア最高!だと思うんだけどね。

今井:  うちのクラブは変人が多いからねー

久保:  別にラタキア好きが変人というわけじゃないよ。

田中:  ラタキアの香りは水虫の匂いなの。(と強調)

今井:  靴下の臭い匂いだよ。

Q子:  えっ、ラタキアの事ですか?

千田:  水虫の匂いは、残念ながら今まで嗅いだこと無いからなぁ……

Q子:  どうやら今井さんはラタキア派じゃないんだ。

今井:  僕が好きなのは甘い葉っぱね。ほら、これ。(と持参のタバコを示す)

久保:  千田さんはラタキア派だよね。

今井:  臭いやつね(と念を押す)

久保:  周りの人は臭いけど、本人は美味しい。

Q子:  そういうものですかねぇ。タバコ会社の方がこの会話を聞いたらハラハラしますね。

久保:  今井さんのは、周りの人のために吸うだけで、自分はちっとも美味しくない。

千田:  ハーフ&ハーフなんてのは、香りは良いけれど美味しくないと私は思います。

久保:  バーレイ葉っていうのはあれは香りだけなんだ、吸えたものじゃない。

高橋:  香料を使っているから、葉っぱは全然だめだね。美味しくない。

千田:  熟成させたラタキアは大人の味だよ。今井さんは未成年者で、まだ大人じゃないから……。お子様だからねぇー。

久保:  チョコレートもカカオ豆100%はまずいよ、色々とブレンドして70%位が美味しいよね。

千田:  ラタキア70%、バージニア30%位がベストの配合かな。

Q子:  香り重視のものはラタキアではなく。バージニア葉が多いのですか?

久保:  ラタキアは入っていないよ。ラタキアが入っていたら癖が出てしまう。

高橋:  ラタキアを使っているのは、全部のパイプタバコの中で5%位じゃないかな。ラタキアで香りを付けているのは少ない、他は甘ったるい香りがついている。

(六本木ローデシアンパイプクラブの紹介から始まって、各自のパイプ歴を披露する内に、パイプの葉っぱを巡ってラタキア党と反ラタキア党に分かれて、独断と偏見が入り混じったジャブを交わし始めたところでブレイクタイム。次回もお楽しみに:Q子)