紫煙を楽しむ

紫煙を楽しむ

川原遊酔(かわはらゆうすい)の「紫煙を楽しむ」
台湾の新喫煙規制

我が国で最近注目されていた神奈川県の「公共的施設における受動喫煙防止条例」は、
飲食店等の公共的施設における全面禁煙化か分煙化を目指していた条例案でしたが、業界の反対と昨今の景気動向を理由として、店舗面積100平方メートル以下の小規模飲食店を規制対象から外すなどの譲歩案に変更となり、3月24日、県議会での審議の結果、譲歩案(修正案)が可決されたところです。この条例の社会的評価は、今後行われるものと思われます。

一方、筆者が最近訪問した台湾では、本年1月11日より、「公共の場の全面禁煙法」(違反者は罰金1万NT$、日本円で約3万円)が施行され、すべての公共建築物内での禁煙が徹底していました(ホテルや空港内の完全禁煙を含む。午後9時以降開店の成人利用のバー、クラブ等のみ喫煙可)。台北市内のホテルでも、完全禁煙で、室内のテーブルの上に、「このホテルは全館禁煙であり、客室内で喫煙すると、罰金1万NT$」と、中国語、英語、日本語で記載された脅迫的なプレートが置かれていたので、仕方なくホテルの外へ出て喫煙する羽目になりました。

この台湾の全面禁煙法施行から1ヶ月後のアンケート調査結果が、2月13日付の「SUN BUSINESS」という現地日本人向け経済情報紙に掲載されていたので、以下に簡単にご紹介しておきます。それによると、行政院衛生署国民健康局が、1,000人余りを対象にして、今回の禁煙政策について調査した結果、回答者の92%が、「たばこのない環境」に満足しており、レストラン、職場、駅ホーム、待合室などの環境が明らかに改善されたとみているとのこと。また、14.5%の人が、路上などの室外にも全面禁煙措置が適用されるのを希望しているとのことから、路上喫煙を取り締まるべきとの意見が、今後強くなれば、法律を改正して屋外でも特定の場所でしか喫煙できないという規定を設ける可能性のあることを担当者が述べています。また、禁煙実施場所について、各県市が調査した14万件あまりの資料によると、不合格は186件のみで、不合格率0,13%とのこと。不合格の内容は、「灰皿が撤去されていないか禁煙の標識を掲示していない」などが49%、「禁煙場所での喫煙が見つかった」が38%とのことです。ただ、台湾の喫煙者率は、男女混みで約20%あるようなので、回答者の92%が、「たばこのない環境」に満足しているという結果は、非喫煙者を中心としたややオーバーな数字ではないかと思われます。

罰金付きで、例外がほとんどない非常に厳格な「公共の場の全面禁煙法」は、愛煙家にとって由々しき事態であるばかりでなく、社会全体にとっても、危険な兆候と言えるのではないかと憂慮するところです。他人に迷惑をかけなければ、本来自由であるはずの喫煙行為に対して、国家権力で全面禁止することの是非を慎重に判断すべきにもかかわらず、一挙に全面禁煙とするのは、分別のある社会とは言えないはずです。

台湾の今回の新喫煙規制法は、おそらく今後のたばこの総需要減少にもつながるものと思われますが、たばこに関わる危険な兆候として注視していく必要があるのではないでしょうか。

川原遊酔(かわはらゆうすい)