紫煙を楽しむ

紫煙を楽しむ

川原遊酔(かわはらゆうすい)の「紫煙を楽しむ」

厚労省の最新たばこ情報への反論

はじめに

「厚労省の最新たばこ情報」においては、「たばこ関連疾患の多くは、喫煙開始して20−30年かかって発症し死に至るので、現在の死亡の状況は過去の喫煙の状況を反映している」とした上で、「たばこ関連死亡数」(2,000年時点で、男性90,000人、女性24,000人)を断定的に記述しているが、そもそも、「たばこ関連死亡数」は、既存の疫学データに基づく推計値にすぎないことに注意を要する。


(図1)

ポイント1( 図1参照)

仮に、喫煙とがん死亡が強く相関するとするなら、喫煙者率がピーク(85%程度)の1950年から30年経過した1980年ごろから、がん死亡率が低下に転じなければならないが、実際のがん死亡率は増加の一途になっている。肺がん死亡率でも同様のことが言える。


(図2)

ポイント2( 図2参照)

各国の喫煙者率と平均寿命の関係を見ても、男性喫煙者率の高い日本の平均寿命が他の先進国の平均寿命よりも高く、かつ、日本の平均寿命は徐々に伸長する一方となっている。


(図3)

ポイント3( 図3参照)

これまでに引用されてきた疫学データは、10年―20年程度の短期間のものが多いが、ここに紹介する久山町研究のような長期の疫学研究(約50年にわたる長期コホート研究)の結果が公表されることを期待したい。人間の死亡率は、最終的には100%なので、喫煙の有無にかかわらず、人間は何らかの死亡原因によって死に至るものである。


結論

上述のごとく、男性喫煙者率が低下の一途である日本において、がん死亡率も肺がん死亡率も上昇の一途であり、平均寿命も徐々に伸長していることから、喫煙と関連死亡数との関係は一概に断定できず、慎重に考えなければならない問題である。

川原遊酔(かわはらゆうすい)