禁煙ファシズムにもの申す

禁煙ファシズムにもの申す

書評紹介

日本パイプクラブ連盟事務局

評論家の宮崎正弘氏のメールマガジン「宮崎正弘の国際情勢解題」(令和4年12月9日号)で煙草関係の面白い書評を見つけました。

取り上げられた本は、菊池一隆『煙草ゲリラの反撃』(集広舎、税込二千円)です。

禁煙ファシズムが猖獗を極め、喫煙者は死刑に処せられる暗黒の近未来。
喫煙の自由を叫ぶ愛煙家がゲリラ的闘いを起こし、国家権力により次々に処刑されていくという衝撃作です。
ネットで調べたところ、著者の菊池一隆氏は、中国・台湾の近現代政治経済を専門とする歴史家の方です。
当事務局では、その本を入手できていないので、宮崎氏の書評をそのまま引用してご紹介します。

 


 

ファシズムとたたかう自由主義の少数派はやがて殲滅される
  環境、地球温暖化、ワクチン。禁煙ファシズムという恐怖政治

 

菊池一隆『煙草ゲリラの反撃』(集広舎)

 

本書を開く前にドイツから風がわりなニュースが飛び込んできた。 2022年12月7日、ドイツで帝国の再建を狙い、政府転覆をはかる武装蜂起を計画していた「極右グループ」が摘発され、ハインリヒ十三世を名乗る首謀者(貴族出身者という)を含む25名を逮捕した。そのために3000名の武装警官が動員されたという。
 荒唐無稽な茶番、あるいは時代錯誤で済まされるのか、これはドイツ版五・一五、いやそれともドイツ版「由井正雪の乱」?

 

さて本書は禁煙ファシズムとの闘いで、全体主義に傾く国家の趨勢に抗議するため愛煙家が一斉蜂起し、首謀者が死刑になるとうい近未来ホラー小説の類い、ストーリー的には構成もしっかりしているが、小説の技法が不足気味である。荒削りのシナリオという観なきしも非ず。
 それはともかく愛煙家は喫煙所がなくて、狭い場所を探すのにも苦労する。著者のシミュレーションに拠れば、徐々に愛煙家の居場所がなくなるのだが、世論はなにがなんでも禁煙という突然、外国から闖入してきたファシズム的な夢遊病のたぐいに覆われ、愛煙家には抵抗の気配もない。 古今東西、ものごとを考えない人が多いのである。
 「管理が管理を呼んでいる。管理強化を嬉嬉としてやる人間が増大し、それに唯々諾々と民衆は従う。何という堅苦しい世の中だ。そのうち呼吸の自由すら奪われ、管理される。携帯灰皿も悪いという。妥協しても、妥協しても次々と追ってくる批判」(61p)。まるでスターリン、いや習近平のような独裁者が背後にいるのだろうか。
やがて愛煙家と嫌煙派の武闘が繰り広げられ、コロナ対策中にも発動されなかった「非常事態宣言」がだされる。煙草を吸うと「戒煙収容所」に強制収容される。まさに中国共産党のウイグル族弾圧と同じ境遇となる。
 駅から、広場から、そして喫茶店からも愛煙家は追放され、煙草は目玉が飛びでるほどに値上げされ、そのうち発売が禁止され、喫煙した者には死刑判決。
 似ているなぁ。ワクチンを打たないと白い目で見られ、マスクなしで電車にのると肩身が狭い。ワクチンと打って死んだ人の率が高いというのにメディアは一切報じない。地球温暖化、脱炭素という虚言にもとづくキャンペーンで、経済構造がおかしくなった。基底にあるのは一種の全体主義である。
嗚呼、人間は全体主義が好きなのかも。

 

本書では、7月7日に禁煙ファシズムに対抗して男女十四人の多国籍グループが東京に集結し、第一回会議が秘密裏に開かれるという設定。
 「自由参加だ。他の人からみたら無意味なことに命を懸けることにまた意味がある。ばかげたことをやらなくては救われないばかげた社会なのだ。たばこの問題ではない。これはファッショ的な体制への反抗だ」と主催者。
 第二回の抵抗会議は8月8日に開催され、趣意書が採択された。決行日は8月15日となる。
 煙草を吸いながら行進をする。たちまち逮捕され、首謀者は死刑判決が下った。
 冷酷な暗喩である。
7月7日は盧溝橋、8月8日は日ソ不可侵条約をふみにじり、ソ連が対日戦争に参戦した日。そして8月15日は言うまでも無い。
 全体主義と戦う力なき民衆の、しかし自由を希求した声は国家暴力で葬られた。以後も愛煙家の死刑が続き、やがて大規模な暴動に発展し軍が出動した。実弾の使用が許可され、愛煙家は日本から殲滅されられた。
だが、しばらくすると愛煙家がいなくなったはずの日本各地に紫煙がただよい始めた。
 自由を求める人にとって現代的な暗喩である。

 

2022.12.12