パイプの愉しみ方

パイプの愉しみ方

『50にして煙を知る』第20回
全国大会の華 知事あいさつ、着物姿選手宣誓、着火失敗
全日本パイプスモーキング大会・岡山大会 参加体験記

千葉科学大薬学部教授 小枝義人

白壁の町 倉敷は岡山でもっとも有名な観光地である。

今年の全日本パイプスモーキング大会の会場はその倉敷にある「アイビースクエア」である。かつての紡績工場の赤レンガをそのまま生かした、おしゃれなホテルである。10月25日、全国から集まったスモーカー156名がタイムを競った。

公務多忙の中、わざわざ会場まで足を運んでいただいた石井正弘・岡山県知事のあいさつは出色だった。

「高齢化社会、生きがいが求められる昨今、豊かな趣味を持っておられる皆さまが全国から、この倉敷に集られたことは、大変すばらしい。途中で煙が消えた方は、美しい倉敷の美観地区をゆっくりご覧になってください」と、まずは地元PRのあと、「この種の大会には必ず、県に賛助金を出してくださいという話がつきものですが、パイプスモーキング大会はそんなことも一切なし。これだけ大勢の皆様が地元のホテルに泊まって、お金を落としていただき、まことに感謝の気持ちでいっぱいであります」と言う場面では笑いと拍手が起こった。

あいさつだけで席を立つわけでなく、大会が始まったら、おそらく初めての体験であろうが、自らも試しにパイプに火をつけて数分吸って参加していただいた。

その誠実な人柄が会員にも伝わったのだろう。退場の際には大きな拍手が沸いたことも付記しておく。

大会は主催の岡山パイプクラブ 節句田恵美さんの着物姿での異例の選手宣誓で始まった。

猛者ぞろいの中、わが日本パイプスモーカーズクラブ(JPSC)の参加者は19名。もちろん全国のクラブでは最大参加者数だが、ベスト10入賞者はゼロ。さすがに練習をまったくしないわがクラブ員の面目躍如たるものがあった。全国大会初参加の美学者・大熊治夫氏は着火失敗で1分という記録で散った。

ひそかに長時間記録を狙っていたらしい。「東京から倉敷まで来て、1分か。忸怩たるものがあるなあ」とぼやいていたが、実は彼、今回の大会ポスター、パイプをくゆらす姿のモデルである。

その大熊氏も含めJPSCがブービーとブービーメイカーを独占。快挙、である。

私はといえば、今回の大会使用タバコ「飛鳥」を通算5キロも吸ったというタバコ大好き人間の渡辺さんから、大会前夜、マリリンモンローのネクタイを贈られ、「モンローにあやかるぜ」とそのネクタイの勇姿で参戦。40分余りで93位という結果、、、

優勝はいつものごとく徳島パイプクラブ木内さん。タイムは驚きの141分49秒。来年秋、ポルトガルで催される世界選手権派遣の権利も獲得した。

来年の全国大会は水戸。着火失敗の大熊氏、早くも水戸に意欲を燃やしていたが、彼の練習法はただひとつ。

酒を飲んだ時、必ずパイプをくわえるというわがクラブ員伝統のスタイルを堅持しているらしい。