パイプ座談会

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パイプ座談会 六本木ローデシアンパイプクラブの巻 2

Q子:  久保さんのパイプ歴をご紹介頂けますか? 紙巻きとパイプはどちらが先ですか?

久保:  喫煙を始めたときから、シガレットとパイプの両方を吸っていたから、時期的には差がなかったね。アルバイト先で片付けの仕事をしていて、不要なものだから処分してくれと言われた時に、机の中にオーリックのダブルボアっていう、小さい穴が4つ開いているやつ、V字型に煙が出るやつで、当時外国製だったから高価なものを見つけて、すごいやと思って始めました。
当時は吸い方なんか知らないから、まずは、紙巻きのタバコを詰め込んで吸ってみたところ、目茶目茶辛くてこんなもの吸えないやと思って、その時は机の引き出しにしまって置いたのですが、当時はお金もないから、やっと紙巻きタバコを買って、ちょこちょこ吸っていました。だから、紙巻きとパイプは全く同時です。ただ、パイプタバコの味が判るまでには随分と時間がかかりました。
最初は、新宿のサブナードが出来た時に、日本パイプクラブ連盟の主催でパイプスモーキングコンテストがあってこれに参加したわけです。その時、たまたま3位になって、初参加で3位だから、俺って才能があるのかな、と思ったけれど、吸い終わって商品など貰って、会場出て喫茶店に入ってびっくり。コーヒーの味が全然しないんだよね。水みたいなの。舌がもう完全に焼けちゃっているのね。吸い方も知らずにただただ、長く吸ったから。
パイプタバコってつらくって、とても美味しいものじゃないけど、格好良いから、ただ気分的に憧れていたのですが、コンテストで入賞してからも、ずっとそんな感じが続いていました。
当時はアメリカ系のハーフ&ハーフとかプリンスアルバートとかを吸っていて、僕は不味いと思うけどそれしかなかったから、その後、日本専売公社(JT)系の桃山とかが発売されて…。
六本木ローデシアンパイプクラブ 座談会 ほらほら、今井さん、昔、線香の味がするやつがあったじゃない。白い箱に黒い柄の四角い箱のやつ……。とにかくその辺りの葉っぱは不味いと思うので、ハーフ&ハーフくらいが旨いのかなと思っていたら、そのうち高橋店長の所にアルバイトに行って、ヨーロッパブレンドというものが存在することを知って、アンフォーラとかの味を知りました。
それまでのアメリカタバコとは違って、煙の温度がずーっと低く感じて、舌の当たりが柔らかいから、味が判ってきました。こんな美味しいものもあるんだと思ったら、そのうちに飛鳥が出ることになって、ダンヒルとか憧れてたけれど、値段が高かったから、中間くらいの価格で専売公社が出していた飛鳥を吸ったんです。それがラタキアとの出会いで、妙に香料で甘くなくて、「これは旨い!」と思って、それ以降ずっとラタキア系ばかり吸っています。
味が美味しいのはやっぱりラタキア系だよね。でもタバコを吸わない人には匂いが評判悪いよね。それが判ってきて、周りに気兼ねをしなくてはない状況の時には、今だとボロクリーフだし、昔はアンファオーラだったかな、そういう甘ったるいやつを吸って周りの受けは良いけれど、そのときは、自分は「早く飛鳥に戻りたい!!!」て、感じだったよね。一寸前なら、バルカンソブラニー。これが、一番美味しい、「もう、一生付き合おう!!」と思っていたけれど、ある時、突然なくなっちゃって、それで、いまでは泣く泣くダンヒルの965と、千田さんはヨットらしいけれど、同じダンヒルのロンドンミクスチャーの二つが定番です。
今でも、自分で味わいたいときはこの二つで、周囲に気兼ねするときはボルクムリーフのウルトラライト。その中間の時は、混ぜ合わせて三分の一くらいラタキア系を混ぜて吸っちゃうね。
そんな形で周囲の人への心遣いをしているってことです。
今では、インターネットを利用して簡単に個人輸入できるということが判ってきたので、世界のどこかにはラタキア系の美味しい葉っぱがあるだろうと思って、バルカンソブラニーで検索すると、海外にも同じ千田さんと同じ趣向の輩がいて、バルカンソブラニーに似たものを探しているらしいです。 だから、海外にも「あの味じゃないと……」と思って居る人がいるんですね。例えばe-bayとかで、バルカンソブラニーの未開封のものが高値でオークションに出ているのね、それに載っているのを参考に書き込みをたぐりながら、これが、似てるんじゃないかって探すの。
そうやって、やっと探し当てたのが、今日持ってきた、GLピースのオデッセイです。個人輸入で買ったのですけれど、これ、割とバルカンソブラニーに似たとこがあるんです。(と、嬉しそうです)。
今、バルカンソブラニーに似た銘柄の葉っぱの候補が3つ位あります。結構似ているのがあれば、「ほら、千田さん。似てるよ!」って教えます。(と差し出す)

Q子:  パイプ愛好家の伝説になっている幻のバルカンソブラニーですね。昨年のJPSCの旅行会でしたか、最長老の関口さんが何十年も封を空けなかった、取って置きの一缶を持参していらしゃいました。缶の外側に錆がでていたけど、争奪戦になりましたけどね。

久保:  本当はね。本物のバルカンじゃなければ意味が無いの。

Q子:  みなさんそうおっしゃいますよね。

久保:  本当に美味しかったものね……。当時は、皆がバルカンが最高って言っていた。 あの味を基準にする人たちと、今井さんのような人たちとは次元が違うのよ。 インターネットにも書いている人がいるんだけれど、パイプを吸っていると、必ずラタキアとの出会いがあって、それを乗り越えられる人と、そうでない人、つまり「あ、だめだ、臭い」と思ってやめちゃう人に二つに分かれる。 それを、乗り越えた人が「大人の味が判る人」で、千田さんなんですよ。

Q子:  そう言うことなんですかね。

高橋:  それでもね、私は最初はバニラ系の軽めのやつを薦めますよね。バルカンとかダンヒルとかはね、初心者にはあまり勧めないですよ。長く吸っている人だったら勧めますけれど。

千田:  一時期、ダンヒルも生産を止めて入手できなくなる情報が入って、もうパニックになりました。猛烈に焦っちゃって、店長、確か170缶くらいまとめて買ったんですよね

Q子:  えっ。170缶も一度に!!! GKKパイプクラブにも当時、バルカンソブラニーが生産打ち切りという話を聞いて、慌ててまとめて一度に100缶、つまり5キロ買って、ひたすら吸い続けて1年間できれいに全部吸いきってしまったとかいう渡辺さんがいますけど……。千田さんはその上を行きますね。

千田:  そう、それでそのうちの1缶を今日、持ってきたのね。吸い続けて後、僅かに1缶位になったから、慌てて、また買ったんだけどね。 パイプタバコの葉っぱの輸入商社さんは、このように強烈な潜在需要が存在するってことを忘れないで、二度とこのようなことは起こさないで欲しいですね。

久保:  あの時はパニックだったよね。

千田:  バルカンが無くなっただけでも大ショックだったのに、代わりのダンヒルまで無くなったら!

Q子:  ちなみに、170缶買って、どのくらい持ちますか?

千田:  結果的には2年保たなかったですね。2年経たずして全部吸い切った。

久保:  というと3、4日で1缶空けるわけね。

Q子:  やはり筋金入りのパイプスモーカーですね。

今井:  うん、パイプ党は、そんなものかもね。僕は50グラムのパウチ1袋を2日、長くて3日だものね。

高橋:  うん、僕も50グラムで2、3日だね。

Q子:  いやはや、六本木パイプクラブを代表する皆様方のスーパーヘビーというか強烈なる吸い方には恐れ入りました。私は1、2週間でようやくパウチ1袋を空ける程度の、ほんの駆け出し者です。
そこまで無性に吸いたくなるというパイプタバコの魅力とは何でしょうか?

千田:  僕は紙巻きは全く吸わないんだけれど、紙巻き吸うと、紙の匂いがするでしょう。それ、やっぱり抵抗がありますね。パイプは、ほら、純粋にタバコの葉の味だけ。タバコの味だけ楽しむのなら、葉巻だけれど、それは高いから、手軽なのはパイプだよね。美味しいし。

今井:  ちょっと汚い話なんだけれど、痰を吐く時ね、紙巻き吸っていると、真っ黒な痰が出るんですよ。パイプにしてからね、全然、黒くならないの。

久保:  へえ。そんなことあるの。知らなかった。

今井:  そう、綺麗な痰が出るんです。(Q子の疑問:綺麗な痰ってあるんでしょうか?)

六本木ローデシアンパイプクラブ 座談会

千田:  おっしゃる通り。健康診断でタバコの喫煙歴とか本数とか申告するのがあるんですけど、パイプしか吸っていない僕は何本とは書けない。で、何グラムって書くと、必ず医者に、「コレは何ですか」と聞かれて。「普通紙巻きタバコは約1グラムです」と言うんだけれども、なかなか上手く換算できなくて。だけど、肺のレントゲンをみると、殆どきれいでね。やっぱり、肺まで吸い込まないってことで、先ほどの今井さんの話につながるんですけどね。

高橋:  でもね、やっぱり紙巻きってのは手軽でね。火をつけて直ぐ吸えるからね。ところが、パイプとなるとそうはいかない。タバコ詰めてね。なんだかんだと手がかかって、そしてやっと火をつけたら、初心者は直ぐに火が消えてね。シガレットは手軽だからね。

久保:  でもまずいよね。

今井:  うん、まずい。

高橋:  でもお手軽だから、ほら、シガレットの火が原因でホテルが火事になったりするわけね。

今井:  そう。でも、私もパイプに切り替えたから、火をついたまま、寝ちゃっても大丈夫。

高橋:  30秒と火はついて無いよね。

久保:  車を運転してて咥えタバコするじゃない、そうすると、最後のフィルターのところにくると、火が落ちるじゃない。それで、時々ジーパン焦がすんだけれど、パイプだとその心配ないものね。火が、ボウルの内側に入っているのと、むき出しの紙巻きとではやっぱり違うよね。

Q子:  灰皿をいつも持って吸っているようなものですからね。

今井:  そう、絶対良いよ。本当に。

久保:  しかも、燃えカスは灰だけで、フィルターは無いからね。

今井:  エコに通じるよ。自然にやさしい。

千田:  灰は土に還るよ。

久保:  パイプを吸っていると、灰皿に吸い殻がどんどん溜まるってことはないよね。1週間ぐらい灰皿の灰を捨てなくったって、たいしたことないもの。シガレットだったら、大変だ。

Q子:  山のようになりますものね。

久保:  しかも、フィルターは基本的には土に還らないものね。その上、紙も使っていないのだから、こんなに良いものは無いよね。

高橋:  理想的です。

千田:  後は、バルカン、バルカンさえ復活してくれれば、何にも言うことはない。

(続く)

(久保さんの長い長いパイプ歴披露の独白から、伝説の幻のバルカンソブラニーの話となり、最後にまたバルカンへの切望話になりました。世界中にあまたあるタバコ会社でバルカンの復刻版を生産してくれるところはないのか、と思います)