ヒトはなぜたばこを吸うのか ―参考図書紹介

ヒトはなぜたばこを吸うのか ―参考図書紹介

14.書評『ルイ・ロペスのパイプ喫煙入門「コーンパイプ探検記」』
赤坂葵パイプクラブ 大久保雅夫

パイプの入門書や概説書は、ダンヒル『パイプの本』(1971、読売新聞社)、梅田晴夫『パイプ』(1978、立風書房)、日本パイプクラブ連盟『パイプ大全(第3版)』(2009、未知谷)、『煙管・パイプ・手巻きたばこ』(2012、スタジオ・タック・クリエイティブ)など数多く存在する。その中で、極めてマイナーな「コーンパイプ」に絞って、「これなら類書はないだろう」と自信と確信をもって、パイプ書籍市場に殴り込みをかけた著者の勇気にまずもって敬意を表したい。

パイプの歴史を見ると、クレイパイプやメアシァムパイプにはじまり、その後ブライアーパイプが主流になっている。コーンパイプをはじめ、その他の素材を材料としたパイプは傍流であった。しかし現代は、ブライアーパイプが原料不足で存続が危ぶまれるようになり、コーンパイプですら高額になっている。そのような背景があるからこそ、コーンパイプの書籍が人々に受け入れられるようになったのだろう。

さて、著者は第一章でたばこ概論、第二章でコーンパイプ概論、第三章でコーンパイプ喫煙概論と、古今東西の文献を読んでの知識を駆使し、縦横無尽に議論を展開する。白眉は第四章と第五章での、コーンパイプ喫煙実験である。書物を狩猟しての、百科事典的な知識の集積に飽き足らず、理科の実験のごとく、実際に数種のコーンパイプばかりでなく、数種の銘柄のパイプたばこを使用して、すべての組み合わせで試喫を敢行する。この実験に費やした時間は相当のものである。通常のパイプ喫煙であれば、「おいしく吸えてよかった」ということだが、実験であれば「味わう間もない難行苦行」であったろう。お疲れさまでした。

著者は、これから「煙草レビューの旅行記、タバコ屋紹介の放浪記、全国のパイプクラブやパイプメーカーの訪問記」を続け、「コーンパイプアイランド」というホームページで発表するという。世界中には、数多くのタバコブランドがあり、タバコにかかわる名所・旧跡もある。それらをホームページに掲載すれば、喜ぶ読者も多いだろう。著者の今後の活躍に期待したい。

ところで、コーンパイプといえば、日本占領連合軍最高司令官ダグラス・マッカーサー(1880-1964)が有名である。1945年8月30日コーンパイプをくわえて厚木飛行場に降り立った姿が鮮烈な印象を与えた。ジェフリー・ベネット(著)林義勝ほか(訳)『老兵は死なず---ダグラス・マッカーサーの生涯』(2016、鳥影社)によれば、熱狂的なパイプ愛好家であるばかりか、一日一箱吸うヘビースモーカーで、象牙のたばこケースを多数所有し、フィリピン葉巻を愛好していたという。なお、公式の場はコーンパイプで、プライベートはブライアーパイプ使用という説がある。

 

(編集部追記)
書籍の詳細は以下になります。
https://www.pipeclub-jpn.org/book/book_11.html#book51