キセル・シガ−の愉しみ方
The Magic Hour(三谷幸喜 脚本・監督)に美術協力
映画「ザ・マジックアワー」の中に、色々な場面に当社柘製作所の製品が出てくる。
映画の時代設定は昭和初期である。映画のセットの中心であるホテルに向かって左側にTOBACCOと看板のあるたばこ店がある。このセットを柘製作所が任された。
映画のシーンではほんの少ししか登場しなかったが、プログラムの中では写真で紹介してもらっている。
まず、主人公の大塩幸之助(西田敏行)が吸っている葉巻はタバカレラ。前半にタバカレラのピラミデが箱ごと出てきて、3人で一本ずつ取るシーンがある。その直後、大塩幸之助が葉巻を切る言葉を発した。それがこの映画の一つのキーワードにもなった。
ギャングの親分のテーブルの上には、シガーヒューミドールに葉巻用の灰皿が2個。
一味の黒川裕美(寺島進)がブラックデビルの真っ黒いシガレットを吸っている。この映画では葉巻を喫っている場面が至る所に出てくる。シガレットもしかりだ。
一番ビックリしたのは、マダム蘭子(戸田惠子)がいるホテルの受付カウンターに、当社のアパラギ・ミントの1ダース入りディスプレイボックスが置いてあったことだ。カウンターの賑やかしの一つとして選ばれたに違いない。
時代設定は昭和初期の町並みや内装だったが、我々は、たばこ屋に関しては極力、時代に合わせたディスプレイにしたつもりだ。
まず、たばこ屋店頭のガルシア・ベガの葉巻は20世紀初頭にはアメリカで売られていたものだ。当時はほとんどクリーンラッパーだったが、ディスプレイした内の2種類がグリーンラッパーだから、まあいいでしょう。
そのパッケージも現在とほとんど変わっていない。ウインドーディスプレイのパイプたばこは、20世紀初頭にヨーロッパで売られていたものを中心にディスプレイした。
大型客船のタイタニック号が缶にプリントされている「クルーズライン」などがそれである。
コーンパイプは19世紀の後半に、アメリカで出来たものだからこれも大丈夫。
最下段のタバカレラの葉巻も18世紀から作られていた世界的にも有名なマニラの葉巻だ。
お店の奥に飾ってあるホーロー製のたばこ製品の宣伝物は現代に作られたものだが、当時の雰囲気を出している。
これから先は内輪話になるが、柘製作所のイケバナも3本ディスプレイされている。これは1970年代の終わりごろから作り始めたので、昭和初期にはない。
問題はシガレットだ。左からDJミックスが4種類、マニトウが2種類、ブラックデビルが2種類ディスプレイされている。
店の奥にはカートンで明らかにブラックデビルがある。まずピンクだ、2番目がブラックデビルのチョコレート、3番目がブラックデビルのココナツミルクだ。映画には出てこなかったが、プログラムの写真にはその写真がある。
でも、こんなところまで判る映画鑑賞者は、一部のたばこ好きだけではないだろうか。
一番面白いのは店頭の左端に貼ってあるシールだ。これはなんと日本たばこ協会が出している「たばこは20歳から」のシールだ。数年前に同協会が作ったものだ。
この映画の面白さは、当社社員の三井君がやんちゃして、時代に合わないシガレットやパイプを並べたことを認めたことや、日本たばこ協会のシールなど貼ってあるその発想の自由さだろう。実に面白い映画だ。たばこ好き必見の映画。
最後のエンドロールにしっかりとTSUGEのロゴが入っていたので、この映画の制作に参加したことが証明されているので嬉しい限りだ。