大会記

大会参加記

第36回全国パイプスモーキング選手権大会記

今回で36回を数える全日本パイプスモーキング選手権大会が10月25日(日)、岡山県倉敷市内のホテル、倉敷アイビースクエア・フローラルコートで開催された。大会には北は青森、南は沖縄、全国の19のパイプクラブから会員139名(うち婦人11名)、フリー参加17名の計156名が選手として参加してロングスモーキングの技を競った。

会場となった倉敷アイビースクエアは観光名所の倉敷美観地区に隣接した赤煉瓦造りの由緒ある名門ホテル。嘗ての倉敷紡績の工場を建物ごとホテルに改装したもので、会場となったフローラルコートは嘗ての従業員食堂を改装したものだそうで、ホテル本館よりやや離れた場所にある。戦災にも遭わず、明治期の伝統建築の佇まいがそのまま残っており、パイプスモーキング競技には絶妙の場所と言える。

美観地区は大原美術館、江戸時代の白壁造りの町屋などが軒を連ねており、のんびり散策しながら秋の休日を十分楽しめるとあって、今回大会には夫人同伴で参加した選手が多かったようだ。


会場入り口付近には、パイプメーカー、喫煙具メーカー、パイプ個人作家、煙草店など10店舗程度が並んでパイプショウを開催しており、パイプ愛好家が詰め掛けていつもながらの賑わいだった。コート窓際のベランダでは岡山パイプクラブの計らいで、惜しくも短時間で消えてしまった左党の方々のために岡山の銘酒メーカーが出張して試飲即売コーナー、甘党向けにはトルコアイスクリームの店が並んで、至りつくせりであった。

大会で毎回行っている初心者向けのパイプ教室も午前と午後の部合わせて30名近くが受講。講師の話では「入門者の域を遥かに超えているパイプ知識を持った方々が目立った。こうした若い熱心な方々が軸になって地域の隠れた愛好家を束ねて新しいパイプクラブが次々に誕生していけば嬉しい」と話していた。


大会は定刻通り正午に開始。主催者を代表して大会会長の田中需日本パイプクラブ連盟会長が開催の挨拶、続いて大会実行委員長の砂山有生岡山パイプクラブ会長が歓迎の辞を述べ、後藤良祐大会審判長が競技ルールを確認した。

来賓のご挨拶では、地元岡山県の石井正弘知事が全国から集まった愛煙家を対象に岡山、倉敷のお国自慢を交えながらユーモアたっぷりに歓迎のスピーチで盛り上げて、盛んな拍手を浴びた。余談になるが、石井県知事はたばこは吸わないそうだが、競技が始まると、ご自身も競技パイプに支給たばこを詰めて着火して予定外の番外参加。火は惜しくも短時間で消えてしまったようだが、もてなしの心溢れるサービス精神の発露に、一礼して退出される際には試合中にもかかわらず場内から盛大な拍手が捲き起こった。

石井知事、ありがとうございました。

選手宣誓は、着物姿も艶やかな地元岡山パイプクラブの節句田選手。前日と当日午前中は連盟役員兼主管クラブ員としてジーパン姿で準備作業に奔走していたとあって、髪も結った美しい変身振りに、これまた盛大な拍手。

色々なセレモニーが無事終わり、いよいよ5分間のたばこ詰め開始。大会使用たばこは飛鳥。日本パイプクラブ連盟が一週間前の17日に3グラムずつ袋に分けて準備したが、程よい湿り気で不満の声は聞こえてこない。銅鑼の音と同時に1分間にマッチ2本で着火開始。

フローラルコート一杯に飛鳥の芳醇な香りが立ち込めた。着火失敗は2名。東京・銀座の名門クラブ日本パイプスモーカーズクラブのA女史とO教授。一礼して悔しそうに退席する。

飛鳥はラタキア葉たっぷりのとても美味しい高級たばこだが、火持ちが結構難しいという声をよく聞く。とは言え10分未満で消えたのが9名だから、例年の大会とたいして違いはない。

司会は、地元のフリーアナウンサーの藤井朱未さん。一流の音楽家を招いて定期開催している倉敷コンサートの常連司会者である。気品溢れる容姿と相俟って、深みのあるアルトの美声がマイクを通して映える。

藤井さんが「1時間経過しました」のアナウンスとともに、ただ一人壇上で頑張っていた田中需会長が消えたと合図した。残りは60人余り。ここからが日頃の技を競う本当の勝負が始まる。

70分経過したところで、連盟の前理事長の斎藤義嗣さんが消えたと合図。続いて連盟名誉会長の鈴木達也さんも吊られるように席を立つ。この段階でしぶとく残っているのは、パイプ歴数十年という猛者ばかりが目立つが、初参加でビギナーズラックに期待する選手の姿もちらほら。

85分を過ぎた時点で前年の大会レディース優勝のパシフィックパイプSCの矢野さんの姿が消えて、暫定のレディース優勝はすみだ川パイプクラブの高橋さんが決まった。90分を超えた時点で残りは15名に絞られた。毎年の全国大会で上位入賞の常連選手ばかりだ。

100分を超した時点で残りは8名。衆目が一致する優勝候補筆頭は、御歳86歳、過去9回全国優勝の徳島パイプクラブの木内名人だが、他の7人の実力も侮りがたい。すみだ川の高橋選手が104分18秒で消え、パイプ検査もOK。レディース優勝が決まって、場内から盛大な拍手。

大台の120分を越えたところで、残りは3名。木内名人、すみだ川PCの中田さん、岡山PCの西崎さん。木内名人はいつもの枯淡の境地という表情でパイプに没入。「今年もやっぱり木内さんから」という声がちらほら聞こえるうちに、西崎選手が126分余りで消えて3位確定。もう少しで130分というところで中田選手も消えて、木内選手が暫定で優勝が決まる。

木内選手は9月の中四国大会で、162分の日本歴代2位の大記録を出したばかり。好調そうだ。日本記録の185分に単騎挑戦かと一同が固唾を飲む中、右手を小さく上げて消えたという合図。思わず会場から溜め息が漏れた。記録は141分49秒の堂々たる記録だ。パイプ検査も合格し、昨年に続いての優勝が決まった。盛大な拍手に包まれた。


木内名人、おめでとうございます。全日本選手権大会10回優勝の偉業は容易なことでは破られることはないだろう。

木内名人は、来年ポルトガルのリスボン近郊で開催の世界選手権大会に連盟派遣の日本代表選手として行く資格を得た。ご高齢だが、体調が許せば、是非出場して頂き、世界の強豪選手を相手に優勝を競って欲しいものだ。


競技が無事に終了して、後は懇親会と余興、表彰式と続く。懇親会の食事メニューは、倉敷アイビースクエアが腕を振るった自慢の地元岡山の名産料理のフルコース。実に美味しく選手一同が舌鼓を打ち、話が弾む。ご馳走攻めでお腹一杯になったところで、余興が始まった。各テーブルで計測員をしていた地元の若いご婦人方がいつの間にやらお色気たっぷりの衣裳に着替えて壇上に並び、ベリーダンスを披露。昨年の浅草大会でサンバが大当たりだったので、岡山パイプクラブが負けじと知恵を絞ってベリーダンスにしたという。

お腹一杯で余興を楽しんでいるところで、成績表が配られた。いよいよ表彰式が始まった。例年は壇上横に豪華な賞品を並べて、たっぷりと時間をかけて表彰するが、今回は時間の関係で、予め賞品は袋に入れて、次々に渡していく。下位の選手にも漏れなく賞品が授与されたところで、そろそろお開きになり、選手一同は来年、水戸大会での再会を期して三々五々解散した。


大会準備作業に奔走した地元岡山パイプクラブの皆様、お疲れ様でした。

大会にご協力頂いた協賛・後援企業の皆様、誠にありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
日本パイプクラブ連盟事務局