大会参加記
パイプスモーキング世界選手権大会(2023年、ブカレスト)参加・旅日記 |
日本パイプクラブ連盟副会長
岡山パイプクラブ会長 香山雅美
10月3日昼、ブカレスト到着 黄色一面の大地にドーハ経由のカタール航空機が降下して行き、麦畑の中の空港に着陸した。私にとって初めての国、ルーマニアだ。 空港では日本円との交換レートが悪いとは知っていたが、市内に入るのにバス代等が必要なので1万円両替したら250レウ。1レウが40円か、まあコーラでも飲もうかと売店に行くと10レウ。
パイプたばこは売っていなかったので、今回は地元のたばこを沢山買えないなと少しがっかりして、一階のブカレスト市内行きのバス乗り場に降りて行く途中で多くの人が一斉にたばこに火を点け、喫いだした。バス乗り場では皆がぷかぷかと紫煙を吐き出している。
東欧の小国とは言え国際空港でたばこが喫えるとは、嫌煙ファシズムに冒されていない自由で良い国だと気分が良くなり、私もパイプで一服しているうちに市内行きバスが到着。周りの人が切符も買わずに乗り込んだので、中で買えるのかと乗ってみたら切符販売員はいない。乗客が磁気対応のクレジットカードでピッと鉄柱に設置の器具にかざしていたので、私も真似てピッ。3レウの表示だ。隣に座ったルーマニア人に聞いたら、1区間でも終点まで行っても同額とのこと、これは安い!
バスの車窓から凱旋門等を見ながらしばらくバスに揺られている内にホテルの前に停車した。ホテルの手配は、海外旅行通の岡山パイプクラブの宮川さんにお願いした。 私が頼んだホテル選びの条件は、 旅慣れた宮川さんだけあって空港からも、会場へも直行バスで乗り換え無しで行ける、私の身の丈に合った程々のホテルを予約してくれた。岡山パイプクラブは仕事が出来る有能な人材ばかりなので会長として色々と助かるし、誇らしい。
ホテルの隣に両替所があったので覗いてみると1レウ=35円。これからは1レウ35円で計算だ。ちなみに、バス、トラム、地下鉄の全てに乗れる1日切符が14レウ、24時間切符が20レウ、72時間切符が40レウ。旧共産圏諸国はどこも公共交通機関は安いので旅行者にとってもありがたい。携帯電話のSIMカードを購入、21日間有効で最大10ギガで31レウ、これも安い。
今回の大会参加の日本チームは5名。いずれも初めてのルーマニアだ。私は後から来る方々に有効に時間を使って貰いたいと思い、一足早く到着して事前に色々と現地調査した。
10月4日、ブカレストの市内観光と喫煙事情を観察。 ヨーロッパは我々愛煙家にとってはなかなか良いところだ。ルーマニアも建物内は禁煙だが、一歩外に出ると50mから100m毎に灰皿付きゴミ箱が設置されていて自由にたばこが喫える。日本のような極端な禁煙ファシズム、禁煙全体主義が横行していないからだろう。
日本は、屋外でも理不尽な禁煙ルールが罷り通っている。研究補助金狙いの一部の利権医者が、呼吸困難レベルのたばこの濃煙を吹き込んだ狭いガラスケースに長期間、実験動物を閉じ込めた結果に基づいて「副流煙の危険性」という研究結果をでっち上げた。科学的にも常識からしても馬鹿げたものだが、これと嫌煙者の我儘が結託して禁煙、禁煙のがんじがらめ。屋外でも自由にたばこを喫えない。無理が通れば道理が引っ込むとはよく言ったものだ。生真面目な日本の国民性が災いして、常識と健全なバランス感覚を失った息苦しい社会制度を自ら作り上げてしまっている異様さに気付いていない。
ブカレストの美しい旧市街の街並みの中で、ご婦人方や若者も咥えたばこで生き生きと歩いている姿を見ると心が落ち着く。私ももちろん愛用のパイプを咥えて紫煙を盛大に立ち上らせながら、街中を歩いて見物して回った。ただブカレストでは日本よりもパイプたばこを嗜む人は少ないようで、大会参加者以外では見かけなかった。市販の紙巻たばこが日本円換算で700円からと、とても高価なので、自分で手巻きたばこを作って楽しむ人が多いようだ。
宮川さんが日本で調べてくれたルーマニア料理の名店カルクベレ(Caru’cu bere)を探して一人で晩御飯。カルクベレは旧市街にある1879年創業の最高級レストラン。歴史を感じさせる豪華絢爛な店内は見る価値がある。たばこが喫えるテラス席に陣取ってコースで注文し、美味しいルーマニア料理を満喫できた。ルーマニア料理は肉が中心だが、日本人の口に合うと思う。支払いはクレジットカード。料理本体価格130レイにチップを加えて143レイ、150レイ、160レイの中から選べと言われたので150レイ(日本円換算5250円)にした。高級料理のコースでこの価格だから、まことに財布に優しい国だ。ただブカレストは、この名店に限らず他の飲食店も料理の量が多過ぎる。食べ切れなかったら残せば良いのだろうが、私は貧乏性で注文した料理は残さずきれいに平らげることにしているから、超満腹で胃が苦しくなった。日本のご婦人方は、半分の量で十分だと思う。
この店で食事をしていると、中国人、韓国人、タイ人のツアーに遭遇した。なぜか彼らは食事をせず、店内の写真を撮るだけ。ツアー参加には日本人もいて話かけられた。私が「ブカレストだけで6泊」と言うと「もったいない」そうだ。ルーマニア、トルコ、ハンガリー観光で8日間の旅とのことで。実質6日間で3ヶ国訪問のハードスケジュール。今もこんな過密日程のツアー旅行があることに驚いた。
10月5日、引き続き市内観光と街歩き 昨夜の晩御飯が素晴らしかったので、名店カルクベレを再訪して昼食。平日は11時から17時までランチメニューで、コースが34.90レイ(日本円換算1225円)。スープor前菜+メインディッシュ+副菜+サラダかスープの代わりにデザートを選べる。しかも選べる種類が多い。ランチサービスとはいえ前日のディナーと同じ量が出て来て驚いた。 給仕に尋ねたら、「ランチだからと量を減らして質を落としては店の評判を落とすことになるので、ディナーと同じ内容にしている」とか。昨夜のディナーで、チップ込みで150レイを払ったのはなんだったのかと感じた。この名店はランチで訪れれば、世界最高レベルのコストパフォーマンスと言えよう。一番高いチップ込みの代金40レイを支払った。
午後、JPSCの田崎さんが到着。 田崎さんは海外大会には昨年のイスタンブール大会が初参加で今回は2度目。ブカレスト滞在中の日本パイプクラブ連盟事務局長の青羽氏に一緒に会いに行き、世界で一番綺麗な書店(Carturesti Carusel)を覗いた。旧市街にある本+雑貨+美術品の店で明るく綺麗な店内は一見の価値が有る。じっくり見ていると欲しい物がたくさんあって困る。日本コーナーがアニメや漫画ばかりだったのは些か残念だった。
10月6日、引き続き市内観光。ホテルを予約してくれた宮川さんとなごやかパイプクラブの小森さんが到着。 海外大会初参加の小森さんは近くのホテルにチェックインした後、私の部屋+バルコニーで開催した夜の喫煙飲み会に参加して4人で楽しく盛り上がった。以後田崎さん、宮川さん、小森さんと私の4名で一緒に行動することにした。
10月7日、ガラディナー会場で受付、パイプショー、軍事博物館見学。 昨年のイスタンブール大会の時、パイプたばこ葉を購入したトルコのたばこメーカーが出店していた。たばこの塊を色々並べて「買わないか?」と声を掛けられた。一番大きな塊が5kgで1000ユーロ、缶入りの製品なら50gで20ユーロだから2000ユーロの半分の価格だとアピールしていた。1kgなら買っても良いと思ったがクレジットカードは使えず、ユーロ払いの現金オンリーだったのと、日本で柘製作所さんが輸入している20番の方だったのでやめた。
パイプは山ほど持っているので、今回はもう何も買わないと心の中で決めていたにも拘らず、新人作家のパイプを4本、タンパーを3本、おまけに革製品2個と帽子を買ってしまった。
この後、4人で観光名所の一つ、国立軍事博物館を見学した。館内はルーマニアの石器時代から歴史と戦争の資料と武器を数多く展示。屋外には多くの戦車や装甲車、大砲等の軍事車両が並べてあった。触っても自由とあって楽しい時間を過ごせた。航空関係は別棟の屋内に様々な飛行機やジェット機を始め、初期のミグ戦闘機のカットモデルやソユーズ宇宙船の焼け焦げた着陸カプセルを展示。ルーマニア人初の宇宙飛行士の紹介パネルの横に、日本人として初めて宇宙旅行した秋山氏も紹介されていた。
ホテルに帰って服を着替え、夕方、ガラディナーの会場へ。
写真の青羽氏と私の間の緑の服を着たご婦人は、イタリアパイプクラブ連盟会長のGenny Magrinさん。国際パイプクラブ委員会(CIPC)加盟50ヶ国中、ナショナルクラブの代表にご婦人が就任したのは初めてだと伺った。 夜遅くまで各国のパイプ仲間と交歓し、楽しい時を過ごせたが、バスや地下鉄が無く困っていると、宮川さんがUberでタクシーを手配してくれ、無事ホテルまで帰れた。宮川さんに感謝。
10月8日、いよいよ大会開催 開始直前までパイプショーを見ていて、お土産購入にカードが使えるか聞いたが帽子屋と地元のたばこ屋以外どこもユーロの現金オンリー、日本円も地元のレウもダメ、まあ余分なお金を使わないで済んだ。 時間が来てアナウンスに従い着席、席はバラバラ。日本チーム4名の席を廻り、とにかく最後まで喫い切ることを目標に頑張ろうと声を掛けた。
私の席の近くには顔見知りのポーランドのパイプ製作会社のカイゼル髭社長。彼の際立った美貌のご令室とは4年前にウクライナのリヴィヴ大会でのガラディナーの舞踏会で踊らせて頂いた。鄭重に挨拶すると、彼も「貴殿は、我輩が席を外していた時に、女房にダンスを申し込み、踊ってくれた日本人だな」と良く覚えていた。「今回、ポーランドチームの代表として来ている。来年はポーランドで世界大会をするから是非とも来てくれ」との由、「勿論、行かせて頂く」と返事した。
私の正面に座っていた御仁は、「自分はドイツケルンの世界選手権大会で10位だった、今日はこのテーブルで最も長時間喫うから覚悟してくれと」計測員に自信の程をアピールしていた。そんなやり取りをしている内に競技開始。 パイプとマッチの配布、点検してOK。たばこが配布され、5分間でたばこ詰め等いつもの光景だ。そして大会役員の合図とともにスタート。
70分を過ぎた頃、CIPC副会長を務めている柘植製作所の柘会長が見に来て、「おっ、残っているね、頑張れ」と激励。その時点で半分以上たばこ葉が残っていた。だんだん人数が減ってきて残りは40数名となった。イタリアが7名、ルーマニア2名、オーストリア2名、スイス2名、チェコ2名、オランダ1名、スペイン連盟のトニー会長と、顔見知りの強豪が多く残っている。我が日本チームも田崎さんと青羽氏と私の3名残っている。
まもなくして青羽氏が消えたが、私はたばこの葉がまだ多く残っていたので、これなら団体3位を狙えると少し火種を絞ったのが災いしてか、記録114分6秒で個人戦は12位に終わった。 日本チームの面々には最後まで喫い切れと言っていたのに自分が果たせず、悔しい。今年9月に開催した東京・浅草での全日本選手権大会の時は完全に喫い切ったので悔いは無いが、今回は結構多く残っていたのが心残りである。もう1分ほど喫っていれば10位入賞だったからだ。
私の戦いが終わってパイプショーを見ていると、トルコのたばこ会社の人が声を掛けて来た。どうやらかなり売れ残ったようで安くするから買わないかとのこと。5kgの塊を日本円で13万円でどうかと提示されたが断った。日本に持って帰った時の税金が高過ぎるからだ。
まず購入金額に29.8%の関税、これにたばこ特別税が1 kgに付き11,000円。さらに10%の消費税。日本の財務省とその下僕の与野党国会議員らは愛煙家をまさに搾取し、虐めている。三重課税とは阿漕極まれりだ。いずれ天罰が下ると思う。
今回のルーマニア大会は運営と表彰式までの時間が予定通りに進行した。
記 開催日:2023年10月8日 |