大会参加記
ワールドカップ ポズナン2024 参戦記 |
日本パイプクラブ連盟副会長
岡山パイプクラブ会長 香山雅美
2024年10月27日にポーランドのポズナンで開催されたパイプスモーキングのワールドカップに参加しました。ワールドカップはクラブ対抗戦と個人戦で行います。大会には21カ国から54のパイプクラブ、291名が参加。日本からは日本パイプスモーカーズクラブ(JPSC)の3名と岡山パイプクラブ4名の計2クラブが参戦しました。
時間とお金に余裕がある先発隊のK教授ら4名(両クラブ混合)は早々と10月16日にチェコ・プラハ入りしてゆっくり観光を楽しみながら列車でベルリン経由でポズナンへ。仕事の関係で直前出発を余儀なくされた私とM氏の岡山PCの後発隊の二人は成田空港から航空機でアブダビ、イスタンブール、ワルシャワと乗り継いで24日にポズナンに到着。私たち後発組が現地入りした時には国際パイプクラブ委員会(CIPC)副会長の柘恭三郎氏と日本パイプクラブ連盟(PCJ)理事長兼事務局長の青羽芳裕氏は既に到着済でCIPC総会などの諸行事に精力的に出席しておられました。
時間に余裕がない我々後発組2名がなぜ乗り換えの手間と時間をかけて遠回りのこのルートで行ったのか。その理由は飛行機代が少し安かったのと、アブダビ空港とイスタンブール空港で、日本で売っていないパイプ煙草を免税価格で購入したかったからです。ただイスタンブール空港とワルシャワ空港で飛行機の出発が遅れたため、24日夕方到着の予定が3時間遅れの20時30分着になっていまいました。やはりワルシャワ直行便が良かったかと思います。
ポーランドの国名の語源は、「平原、農牧地」を意味する「ポーラン」だそうです。飛行機の窓から覗くと山がなくてずっと平地が続いており、本当に平原の国だと思いました。ポズナンは中世ポーランド王国の首都が置かれた古都で、人口は53万人。同国で5番目の規模の都市です。
到着翌日の25日はポズナンの煙草屋巡り。大会使用たばこを買って練習し慣れておくためですが、残念ながらどこにも売っていませんでした。売っていたパイプ煙草は日本で買える物ばかりで、値段は日本で買うより少し安い程度でした。元々物価の安い国ですが、このところの円安のせいでレストランの外食代は日本より高く感じました。
私は2013年に同地で開催された第15回ワールドカップに参加したのでポズナン訪問はこれで2回目です。カトリック教会のある広場を中心とした旧市街地は中世の佇まいが感じられる以前のままですが、新市街地と郊外は開発されて巨大なショッピングセンターが幾つも出来るなど、この11年間に大きく変貌していました。
大会前日の26日、本来なら大会会場の下見を兼ねて最終登録と参加証の受け取りに行くところです。しかし前夜祭(ガラ・ディナー)には参加しないことにしたため、参加手続きはPCJの青羽理事長にお願いし、先発組と後発組の6名が合流して旧市街地の美味しいトルコ料理店で夕食を一緒に楽しみました。
何故、前夜祭に参加しなかったのかと言うと、前回のポズナン大会の残念な思い出があったからです。通常はパイプスモーキングの国際大会の前夜祭は、内外のパイプスモーカー同士の親善と交流を目的に、大会参加者の大半が参加。楽団の演奏や余興も加わり、ダンスも交えて深夜まで盛大に催されます。ところが前回のポズナンの前夜祭は参加者が異様に少なかったのです。程々の広さの会場でしたが、円卓と席が少なくてどことなく寂しい雰囲気が漂っていて最初、怪訝に思いました。
前回の参加費は確か60ユーロだったと思います。宴席を催すには十分な金額だった筈です。ところが料理は貧弱で不味い上に量が少なくてすぐなくなり、一方で卓上にウオッカやワインなどの酒の瓶だけはたくさん並んでいました。私は料理をあまり食べられないまま、つい飲み過ぎてへべれけに酔ってしまいました。同じテーブルのイタリア人のパイプスモーカーたちが「こんな酷い赤ワインは初めてだ」と大声で毒付いていました。ノンアルコール飲み物のオレンジ色のジュース瓶の底には、溶けきらなかった粉末が残っていたことを鮮明に覚えています。昔懐かしい昭和30年代の日本の「オレンジジュースの粉末」と同じものでした。
ポーランド流のおもてなしがどんなものかを欧州各国の皆さんはよく知っているから参加者が少なかったのだなと、後で合点がいきました。そこで今回は参加費の80ユーロを払うより、仲間内で楽しんだ方が良いという判断になったわけです。マスコミや書籍等では決して公に語られることがないので日本人は全く知らないヨーロッパ人相互の相手に対する本音の評価、容赦ない品定めぶりを直に体験出来て勉強になったことを覚えています。
ヨーロッパのホテルは5つ星の超高級ホテルは室内喫煙自由が多いです。星4つ以下のホテルは原則として室内禁煙ですが、室外では喫煙自由です。そこでポズナンの宿泊先は自由に煙草が喫える大きなバルコニー付きのホテルにしました。バルコニーには灰皿が置いてあることが多いそうです。バルコニーは中庭に面しており風が弱いので、多少肌寒くとも宿泊客はバルコニーでプカプカ喫煙しながら酒を飲み、歓談していました。日本のホテルの中には、敷地内禁煙という奇怪なルールを客に強要するところがありますが、欧州のホテルを見習った方がさぞかし賢明でしょう。
さて、大会の会場は郊外のドーム競技場。ドームの大屋根の下でパイプスモーキングを競うのかと思ったら、屋内の広い選手の控えの間でした。ずらりと並んだパイプの出店を見て歩き、「これは」と思った作家もののパイプや大会使用パイプタバコを適宜購入。そして海外のパイプクラブの友人知人と久闊を叙しての交歓や、持参してきたお土産のプレゼント、クラブバッジの交換といつもながらの和気藹々の雰囲気でした。
大会予定表では13時着席、14時競技開始でした。ところが参加者ほぼ全員が13時に着席しても一向に始まる気配はなし。14時過ぎになってようやくポーランドパイプクラブ連盟の代表が壇上に登場してポーランド語と英語で司会を開始。冒頭のCIPC会長挨拶から、着席選手の確認、支給の物以外をテーブルの上に置かない、水は10分経ってから支給等の説明と時計計測員への指示と確認が長々と続きました。こうした競技開始前の挨拶や定例の確認事項は13時の全員着席後に始めて、競技開始の14時前に終わらせるのが国際常識だと思いますが‥‥。
無駄に時間を延々と浪費して一向平気な大会運営にイライラが募り始めた頃に、やっとパイプとマッチを支給。ちなみに支給パイプは見てくれはまあまあの出来ですが、年季の入ったスモーカーなら一目で分かる粗悪品。競技中にサンドブラストのボウルを塗装した底の部分が煙草の燃焼熱で剥げてしまった日本チームの方もいました。マッチも例によって擦り方に慣れていないとすぐポキっと折れてしまう細い軸木の安物でした。
ポズナンでのワールドカップ開催は今回で3回目。前回もダラダラとした大会運営に呆れた記憶がありますが、今回も例によって何とも手順が悪いこと。競技開始は14時50分頃だったと思います。
私の拙い経験では、予定表に沿って完璧に大会運営が進むのが我が日本とスロヴァキア。若干遅れたのがチェコ、ドイツ、ハンガリー。まあ許容範囲がロシア、トルコ、ルーマニア。1時間遅れでも平気なのがポーランド、スペイン。2時間以上遅れていつ始まるかわからないのがポルトガル。それぞれの国で時間に対する感覚と常識が異なるのだから、これは仕方がありません。欧州人同士はその辺の読みは慣れており、事前に予測して行動しますが、真面目な日本人は慣れるのがなかなか難しいです。
なお、過去の日本の東京大会とスロヴァキア・ニトラでのスピーディーで円滑な大会運営は、文字通り各国の参加者の絶賛を博しました。だったらぜひ参考にして下さいと思うのですが、そうも行かないようです。
岡山PCは前々回のイスタンブール大会での団体6位を上回る成績を期していましたが、同大会で個人戦21位に食い込んだポイントゲッターのK氏が火種を絞り過ぎて8分で消えてしまう不覚。ベテランのH氏は喫い切り完全燃焼したものの67分でリタイア。シガレット派からパイプ党に転じて進境著しい期待の若手M氏は48分。仲間が次々に消えたので、私は個人戦での表彰を狙いましたが、煙草をごっそり残して84分で消え、個人戦順位は39位でした。
その結果、クラブ対抗戦順位は54クラブ中、岡山PCが20位、JPSC50位と、ともに不本意な結果に終わりました。表彰式への参加は見送り、後はCIPC副会長の柘氏と、PCJ理事長青羽氏に任せ、会場を後にしました。
来年2025年の世界選手権大会はオランダで開催予定です。
【付記】 ワールドカップ開催地のポズナンで催された国際パイプクラブ委員会(CIPC)の総会に出席した日本パイプクラブ連盟(PCJ)の青羽理事長が、CIPCのパイプ競技規定変更の提案をしました。競技規定で競技パイプをブライヤー製に限定しているのを、ブライヤーに限定せずに広く木製に拡大しては如何かという提案です。 |