CIPC情報

国際パイプクラブ委員会(CIPC)

国際パイプ・アカデミー(学会)の年次総会、初めて日本で開催される

January 14, 2017

国際パイプ・アカデミーAcadémie Internationale de la Pipe(AIP)はローマにあったパイプ・アカデミーを引き継ぎ、1985年10月にパリに創立された。パイプ、喫煙、タバコなどに関わる研究者の学会で、国際パイプクラブ委員会(CIPC)の創立会長であったA. P. バスティアンが初代会長に就任した。クレイ・パイプの発掘調査を行う考古学者、喫煙史・パイプ史の研究者を多く擁し、特に英国とオランダのクレイ・パイプの研究者が多く名を連ねている。パイプやタバコに関する書籍の著者も多い。日本からも3名の会員が参加している。現在、国際パイプ・アカデミーの本部は英国リヴァプール大学の考古学教室に置かれている。

1994年から会誌Pipe Year Bookを発行し、英国へ移った後はJournal of The Academie Internationale de la Pipe(JAIP)として継続され、2008年からリヴァプール大の研究者が編集に携わることで学会誌としての体裁も整えられ、またJAIP掲載の論文からの引用件数も多く、学会誌として高く評価されている。世界唯一のパイプおよび喫煙に関わる研究者の学会として、近年高い評価を得るようになった。

英国、オランダ、フランス、ドイツ、スイス、ノールウェイ、スウェーデン、ハンガリー、セルビア、ポーランド、スペイン、ポルトガル、米国、メキシコ、シンガポール、日本など約30ヶ国からの会員を擁する。年次総会での発表論文がJAIPに掲載されるばかりでなく、会員以外の寄稿論文も多く掲載される。

わが国の会員は、ヴィクトリア朝後期の英国のブライアー・パイプ史に特化するJPSCの青羽芳裕氏、わが国の喫煙風俗を取り上げる日本博物館協会専務理事の半田昌之氏(前たばこと塩の博物館学芸部長)そして喫煙伝来史・喫煙伝播史が専門の鈴木達也(AIP理事)の3人であるが、わが国での総会開催により日本人の参加希望者が増えている。

1985年より開催されている年次総会は、これまでパリ(仏)、ベルジュラク(仏)、リヴァプール(英)、コペンハーゲン(デンマーク)、バルセローナ(西)ブダペスト(ハンガリー)、ウィーン(オーストリー)などヨーロッパ各地で開催されていたが、2016年11月には初めてヨーロッパを離れて東京で開催された。

渋谷から墨田区へ移り、新しく大きくなった「たばこと塩の博物館」の施設を使用させて頂き、日本たばこ産業の資金援助を受けて11月18,19,20の3日間、年次総会および研究発表が行われた。欧州から離れた日本での開催は航空運賃や滞在費など、会員の負担が多く参加者が半減したものの、発表された論文はレベルの高いものが多く、会員以外の聴講者もみられた。

今回の発表論文は、

  • *B. ファン・デア・リンゲン(オランダ)
    「18世紀の長崎出島・東インド会社の使用人の遺品記録に残るパイプおよびその関連品」
  • *Dr. D. ヒギンズ(英国)
    「引き揚げられた難破船(ロンドン、1665年)のクレイ・パイプとタンパー」
  • *Dr. S. ホワイト(英国)
    「広告にみる女性のパイプ・スモーカー、その真偽」
  • *Drs. R. スタム(オランダ)
    「クレイ・パイプの技術移転 〜オランダ・ルート〜」
  • *青羽芳裕(日本)
    「英国の初期ブライアー・パイプ、ADPパイプ」
  • *鈴木達也(日本)
    「日蘭の記録にみる17・18世紀のキセル輸出とその対象国」

など、12本の論文発表に先だって、AIP総会初日にオープンした「伊達男のこだわり〜キセル・たばこ盆・たばこ入れに見る職人の技」の展示意図とその構成の解説を西田学芸員から受けた。

総会終了後は、柘製作所のブライアー・パイプ製造工程の見学を含む都内見学会、翌日は新潟県燕市の飯塚昇氏(キセルの手作り職人)の工房でキセル製作工程の見学に続いて、燕市産業史料館で丸山コレクションのキセルとその製造治工具の見学をした。ヨーロッパの学会員は、クレイ(素焼き)パイプとの比較研究の対象として、キセルに非常に高い関心を示した。

国際パイプ・アカデミー
理事 鈴木達也