大会記

大会参加記

パイプスモーキング2016年欧州選手権大会のご報告
岡山パイプクラブ会長  香山 雅美

2016年10月16日(日曜日)にスロヴァキアの閑静な田園都市ニトラで、ロングスモーキングの欧州選手権大会が開催されました。この大会は運営が素晴らしかったのが特長で、来年に東京で世界選手権大会を開催する日本パイプクラブ連盟(PCJ)にとっても学ぶべきところが多かったと思います。大会には日本からも3名がチームを編成してゲスト参加致しました。その模様を報告いたします。

私は過去何度も欧州各国で開催された世界選手権大会やワールドカップに参加しました。パイプスモーキングの大会は、開始時刻が遅れるのが通例で、中には何の告知も無いまま開始が3時間近くもだらだらと遅れたひどい世界選手権大会もありました。今回の欧州選手権大会は、前夜の歓迎晩餐会を含めて完璧にタイムスケジュール通りに開催された特筆すべき大会でした。時間に几帳面な日本人にとっては嬉しい大会だったことをまず報告いたします。

もう一つの特長は、事前の大会準備の段階から、ITを駆使して事務処理を合理化していたことです。以下、私の経験に基づいて箇条書きで具体的に説明します。

@参加申し込みは電子メールで一人一件ずつ、申し込みフォーム(姓名・名前・所属クラブ・国・連絡用メールアドレス)に記入して送信しました。ナショナル・クラブあるいは所属クラブごとの一括受付に比べて個々での申し込みはやや面倒です。しかし、本人か友人が打ち込んでいますので、名前等の転記ミスが防げると思いました。また、ヨーロッパでは同じアルファベットの表記でも国が違えは色々な読み方をしますので、日本で開催する時も名前をカタカナ表記でなくアルファベットで表記した方が良いと思いました。

A主催者のニトラ・パイプクラブから受付メールが送られて来ました。

B指定の銀行に送金。入金確認後、大会参加確認メールが送ってきました。これに添付されたファイルを印刷するか、スマートフォンもしくはタブレットで表示できるようにして大会受付に持参する様に指示されていました。これには氏名、所属パイプクラブ、所属国名の他にバーコードが印刷されていまいした。今後すべての作業をバーコードでスキャンする事ことで処理するためです。

C大会の参加者受付では最初の係が、バーコードをスキャンし番号を2人目の係に伝え、2人目は首に掛ける大会IDカードを探して、歓迎晩餐会(ガラディナー)参加申し込み者には合成紙製の参加者用腕輪も手渡しました。さらに3人目の係が大会参加記念品を渡してくれました。バーコードの活用で、わずか3人で受付事務が迅速に処理されていました。大会前日の午前10時の受付開始前に私の前に30人以上並んでいましたが、大変スムースに処理されて10時10分には私達日本の3名の受付が完了しました。これまで非効率な大会運営ばかりを経験してきた私は、このスピード感溢れる事務処理にビックリ致しました。なおこのIDカードには翌日の大会のテーブルの席名も記入されていました。

D参加記念品は写真でご紹介する様に色々ありました。大会使用パイプたばこ、大会エンブレムを編み込んだ記念マフラー、大会記念バッチ、クレーパイプと同じ材料で作られたニトラ大会のロゴのレリーフ等々です。 いささかがっかりしたのは協賛したマッチ会社からの提供品としてマッチが28個、ライターが4個あったこと。欧州の参加者は地続きですから自家用車やバス、鉄道で移動する人が多いので、持って帰れます。しかし、航空機で帰る私達は、機内には持ち込めません。結局、翌日の大会で、親しくなったイタリアのトリノのパイプクラブの素敵なご婦人に、日本人参加者3人分のライターとマッチをまとめて贈呈したところ、大層喜んで下さり、お礼のキスも賜りました。

◆ 大会参加賞
マッチ29個、ライター4個、大会記念マフラー、大会使用たばこ、IDカード、クレーパイプの材料の大会ロゴのオーナメント、ガラディナー入場ブレスレット、協賛スポンサーのカタログ、復刻ポスター大会記念バッチ、ボールペン、協賛スポンサーのカタログ、復刻ポスター

E大会前日の歓迎晩餐会(ガラディナーは)入り口で腕輪を見せて入場しました。腕輪が無い人はもちろん入れません。主賓席以外は自由でした。今回の大会は参加費が60ユーロ、ガラディナー参加費が60ユーロでした。来年の東京での世界選手権大会ではそれぞれ8000〜10000円の予定と聞いておりますが、物価の違いを考慮してその位の金額が妥当だと思います。欧州や米国からの日本への航空運賃、東京のホテルの費用を考えると、たいしたことはありません。多少参加費が高くても、来たい人は来ると思います。なお、晩餐会の食事はメインディッシュとパンなどは、ホテルのウエイトレスが運んでくれました。それ以外の料理はビュフェスタイルで会場後方にたくさん並べてあり、とても豪華で美味しかったです。合理的で感心したのはテーブルの真ん中にワインや地酒など様々な酒が予めたくさん並べてあり、飲みたい人は自由に選んで飲めるようになっていたことです。この方法は、手間がかからず豪華でなかなか良いと思いました。晩餐会の余興は、スロヴァキアの民族舞踊やコーラスの披露、さらに地元のアマチュア楽団の伴奏による社交ダンスなどで、心のこもった楽しい内容でした。

Fさて大会です。各テーブルの計時審判員はそれぞれ青色のファイルを持っていました。中にはテーブルの出席者名の一覧表、記録集計用紙、大会使用たばこそして大会記録証明書が入っていました。そうなのです、大会使用たばこは予め計時審判員の手元にあるのです。大会使用たばこの説明やテープカット配布のセレモニーを割愛したので大会は開会から競技開始までの時間が大幅に短縮されて、運営がスムースに進みました。また計時審判員が使用たばこを取りに席を離れたりせずに競技参加者をじっと見ていますので、不正行為が減るだろうと思いました。競技参加者の確認をして速やかに大会が開会。この時点で配布競技パイプと紙ケース、ほぐし紙、タンパー以外の物はテーブルの上に置かない様に計時審判員が指示しました。主催者、CIPC会長、来賓等々の挨拶があり、競技がスタートしました。参加者各自にたばこを配布、パイプに詰めて着火と、この辺の段取りは国際ルール通りです。私のテーブルの計時審判員は、参加者の一挙手一投足に目を光らせていて、パイプを箱から出して状態を確認した後たばこ詰めをする前に「皆さん、両手を広げて見せて下さい」と何も持っていない事を確認していました。紳士淑女の競技とはいえ、残念なことに違反が稀に起こることを考えると、両手の確認は東京大会でも採用しても良いと思いました。

G火が消えて、リタイヤした人にタイムを記入した記録集計用紙を渡し、確認のサインを求めるのは日本と同じでした。ここからが少し違い、記録集計用紙を審判員の前に置いてある木製の青いブロックの様な物に立てて置くと会場を巡回しているスタッフが速やかに回収していました。立て続けに火が消えた場合に計時審判員は対応に追われてミスをしやすいのですが、この方法ならミスが減ると思いました。勿論この記録集計用紙にもバーコードが印刷してありました。 

ここで東京大会でもぜひ見習いたい事がありました。計時審判員は予め名前を印刷してある大会記録証明書に自筆でタイムを記入してリタイヤした人に渡していました。所用や時間の都合で大会の表彰式終了前に帰る参加者もいますので、これは良い方法だと思いました。これまでの大会では、記録の集計や記録証明書の発行に手間取り、大会当日に受け取る事ができず、後日、郵送で送ってきたこともありましたが、リタイアした時点で直ちに貰えたのは嬉しかったです。

この記録集計用紙をコンピュータに入力する時もスキャンの読み取りで処理していました。

H大会会場から外に出ると、読み取りスキャナーを固定したディスプレーがありました。このスキャナーに大会IDカードをかざすと自分のタイムと順位が表示されます。これもITの活用による新しい方法です。 

I表彰式での表彰はレディース3名、団体3組、個人は20位まで、当日賞、ファーストリタイア、ヨーロッパ以外賞と、日本の国内大会に比べ少なかったです。またメダルやトロフィーも日本のそれに比べるとやや控えめな感じがありました。逆に言うと、日本ほど豪華なメダル、トロフィーを贈呈する国は無いということです。今回、私は個人12位でヨーロッパ以外のゲスト参加者1位の成績でした。

J表彰式が山場を越えた頃に「各国別にファイルが用意されているので、代表者が受け取りに来てください」とのアナウンスが流れ、受け取りに行くと順位表と参加者全員の順位が活字で印刷された記録証明書が用意されていました。ニトラ・パイプクラブの大会役員にその迅速さを褒めると、「大会の協賛スポンサーが高速レーザープリンターを貸与してくれたので早く印刷出来た」との由でした。

以上が、概要報告ですが、感想を述べると私は、これまで外国での様々な大会に参加しましたが、すべて予定通りに終了した大会は今回が初めてでした。大会を主催したニトラ・パイプクラブは、発足してわずか5年の大変若いクラブだそうです。会長が先頭に立って、少ないメンバーで効率よく、時代の流れに即した迅速で円滑な大会運営は見事でした。

余談ですが、会場は館内禁煙のホテル。しかし、杓子定規で融通の利かない小役人根性ばかりがはびこる我が日本と違って、消防車や消防士を会場前に待機させることで大会中は館内喫煙にしていました。ニトラ・パイプクラブの会長はニトラ市長の親友だとの由。会長の実行力には深く敬意を表します。

もう一つ余談。この大会はニトラ市では、久々の国際行事だったようです。私はスロヴァキア語は読めませんが、地元紙に大きく大会の模様が報じられ、また市役所と商工会議所の計らいでしょうか、各国からの大会参加者を温かく歓迎する垂れ幕などが容易されていました。

スロヴァキアはあまり日本人には知られていませんが、ニトラ・パイプクラブの面々の心尽くしの大会運営と、市民の温かい歓迎を受けて、スロヴァキアが心から好きになりました。生きている内にまた訪問するつもりです。


事務局より

パイプスモーキング2016年欧州選手権大会の様子はこちらに掲載されています。なお大会専用ページのため、予期なく削除されることがあります。
http://www.pipenitra2016.sk/?page_id=1253&lang=en